第67話 魔物学の課外授業⑦
目の前の大岩の中心を探して、ちょうどいい位置に立つ。道を塞いでしまうほどの大きさの岩を壊すのにあたっては、一撃で完全に破壊しなくては距離を取ったと言えど近くにいる学生たちに被害が出るかもしれない。
ボクは万全を期して「身体強化」をしてから両腕に力を入れる。やるのはシタビーだ。ボクの全力をたたきつけるのはそれが一番だと思うんだよね。
ドラミングの衝撃波でもいいかもしれないけれど、音を伴う攻撃だけあって広範囲に無差別だから、学生たちが危険になるからね。
その点、シタビーは一点集中で攻撃することも可能だし、あるとしても少し地面が揺れるだけだ。
「ウホウホ(さ、時間もないことだし、全力で行くよ!)」
両腕を振り上げて岩の中心に振り下ろす。シタビーと言っても下に向けて撃つわけじゃないし、違う名前の方が良いかな?まぁ、口に出すわけじゃないし、いっか。
振り下ろされたボクの両拳は大岩の中心を見事にとらえて容赦なくめり込む。ボクみたいなゴリラの拳がめり込めばその威力は異次元だ。大岩は一瞬にして亀裂が入り、はじけ飛ぶように自壊した。
ドゴンという音を聞いた学生たちの間から悲鳴が上がるが、一部始終を見ていたモンストル先生が落ち着かせる。
「みんな!これで大岩は無くなったから安心して!それじゃ、ゴリ松君が元に戻ったら先を急ぐよ。あ、魔法が解けてからか。まぁ、予定より20分早いし大丈夫!」
先生が促している間にボクはササッと大岩の破片を横に避けて道を作る。このままじゃゴロゴロとした岩を乗り越えて進まないといけないからね。
「キーキー(よくやってくれたな。我からも感謝するぞ。しかし、これは誰が置いたのであろうな。)」
エリックが近づいてきてボクに感謝の言葉をくれる。そしてその後に気になっているだろうことを呟いた。
実際、それはボクも思ったんだよね。こんな街道にあんな大岩を置ける存在がいるってことだもん。ここは森と崖に挟まれてはいるけど上から岩を落とすにしても相当な力が必要だし、そんなことができそうなのはいたかな?
「キーキー(我の知る限りでこの近辺のこれができる者は一人しかおらぬ。どういうつもりかは知らぬが、問うべきかもしれぬな。)」
「ウホ?(え?知ってるんだ?)」
「キーキー(ああ、おそらくだがな。)」
ふーん、誰だろ?ボクも知っている人かな。ま、いっか。いるなら思い出すでしょ。
ボクは記憶の彼方にそれを放り込むと次の話題に移る。既に体は小さくなっているし、あとは魔法が解けるのを待つだけだ。
「ウホウホ(魔法はどれくらいで解けるの?)」
「キーキー(ああ、あと二分くらいだな。我が魔力の供給をやめてから3分である。)」
じゃあ、割とすぐに移動を再開できるんだね。エレーナのもとに向かっていき、それをエレーナにも教える。エリックはモンストル先生の方へと戻って行った。
「ウホウホ(エレーナ。魔法はあと2分くらいで解けるって。大岩はボクが完全に破壊したから。)」
「むっ?ゴリ松か。分かった。みんなにも伝えるな。お疲れ様。」
エレーナにもねぎらってもらったので、働いた甲斐があったね。それより、さっきの誰が落としたのかを聞いてみた方が良いのかな?
あんな大岩、だれが何のために置いたのかわからないけど、少なくとも僕らに関係があるとは思う。だって、それ以外でメリットはないもんね。
「ウホウホ(エレーナはあの大岩をあそこに置いた犯人は誰か分かるかい?)」
「みんな、少しだけ我慢してくれ!魔法はすぐ解けるそうだ!...で、ゴリ松。さすがの私もそれは分からないぞ。」
やっぱりそうか。じゃ、この話はこれで終わりだね。ボクもエレーナも見当つかないのなら考えても仕方がない。
「よし、そろそろみんな魔法が解けたよね!それじゃ魔物牧場に向かって急ぐよ!」
「「「「「はい!」」」」」
みんながモンストル先生の掛け声で街道を歩くのを再開し始める。いや、歩くよりも走っているのかな。
この世界、魔物なんてのがいるからか人間の身体能力も高い。階位が高い人ほど身体能力が高いし、エレーナほどじゃなくてもみんなそれなりの階位だから行進速度も速いんだよね。
進み始めた一行は先ほどのアクシデントをものともせずに魔物牧場まで猛進する。
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