第63話 魔物学の課外授業③
ゴールデンウィークが明日までとかの人もいるのかな?なんだかんだでブクマ100件感謝しました。
「それじゃ、しゅっぱ~つ!」
王都の外に出てからすぐ、なんだか間の抜けたモンストル先生の号令で僕たちの課外授業はスタートした。ただ、魔の抜けたように思えたのは最初の一瞬だけで、次の瞬間にはこの授業の過酷さを思い知らされる。
なぜなら、その光景が助手であるはずの僕たちを含めた全員の前で広がったからだ。
ダダダダッという足音を響かせてモンストル先生が疾走する。その速さは尋常ではなく、先ほどエリックが言っていたことが誇張でもなんでもなかったことを意味していた。
僕とエレーナはそれを見送ってしまった後にまずいと思って声を張り上げる。エレーナは学生たちに、僕は従魔たちに向けてだ。きっと助手の仕事はモンストル先生が放棄した引率がメインになるのだろうと悟る。
そうならそうと最初に教えてくれって話だよね。ただ、さすがに完全において行ったとは思えないし、急げば追いつくとは思う。
「みんな!気を引き締めるんだ!この課外授業は今までのとは違うぞ!魔物牧場の位置は授業でもらった紙に書いてあるが、行き方までは書いていない。先生の言い方からして離されるとまずいかもしれない!急いで先生を追うぞ!」
「ウホウホ(従魔も自分の主人を目的地までなんとしても送らなくちゃいけないよ!僕らは主人を助けることこそ仕事なんだから!さぁ!呆けてないで走るよ!)」
「「「「「「!...おぉー!!」」」」」」
学生たちはエレーナの言葉を聞いて声を張り上げ走り出す。従魔も様々に鳴き声を上げて主人と共に走り出した。
とりあえずこれで僕らの最初の関門は終了かな?エレーナもホッとしたように息を吐いているので、同じ気持ちだろう。
じゃあ、僕らも向かおうか、と言おうとしたところで、まだ走り出していない学生を見つける。というか、僕らの隣にいた。
そう、ジャック=クラウドくんとその従魔フレイだ。
彼らは特に急ぐでもなく何やら鞍のようなものをフレイに乗せていた。その行動からフレイに騎乗して魔物牧場まで行くつもりのようだ。
僕は気になって二人に話しかける。言葉を発しつつも筆記も行うことで二人に同時に話しかけられる。
「ウホウホ〔ねぇ、二人は悠長に準備していて大丈夫なの?〕」
「!文字が書けるのか?!驚いたな。まぁ、質問には答えましょう。僕とフレイならそんなに急がずとも先生に追いつけるでしょうし、急ぐ必要はないんですよ。
それに、魔物牧場には家の用事で何度も行っていますからね。迷うこともないですし、ここらの魔物であれば敵にはなりません。それはそちらも同じでしょう?」
「ガルルル(あたしが走れば、牧場までの魔物は蹴散らせるもの!あんたは大丈夫なの?ご主人様を守れる?)」
二人は魔物牧場までの道も知っているし、道中出るであろう魔物も敵にはならないらしい。ジャックくんは僕がアームコングだと思っているはずだけどな?道中の魔物には負けないことを確信しているみたい。ま、エレーナが魔導士ということもあるのかな。
ただ、フレイは僕が小さめの猿だと思っている節がある。今もこうして心配されているし。でもフレイは意外と心配性なんだと感じたね。近所のお節介おねえちゃんみたいだ。
「ウホウホ(大丈夫だよ。ボクはこれでも強いんだ。)」
「そうだな。ゴリ松は強いし、私もいる。さぁ、早く先生に追いつこう!」
エレーナと二人で自画自賛していると、ジャック君とフレイは呆れたようにため息をついてから一言だけを言って走り去る。
「そうですか。では、僕たちは先に行かせてもらいます。グラディスバルト嬢、現地でお会いしましょう。フレイ、よろしくね。」
「ガルルル(それならいいけど、くれぐれも気を付けるのよ?それじゃーね!)」
フレイに騎乗したジャック君はすぐに森の見える位置にはいなくなる。おそらくだが、近くに見えている森の中を突っ切っていくつもりなのだろう。
他の学生や先生は森を迂回して街道を走って行ったので距離で言えばフレイたちの方が速く到着することになるね。
さて、ボクらはどうするのかな?一応、助手なんだから勝手に突き進むわけにはいかないはずだ。エレーナに確認するとやっぱりボクらは森を突っ切って行くことはせず、みんなの後ろを追いかけて脱落しそうな人を助けたり、道中の魔物を倒したりするつもりみたい。
「ゴリ松。学校の方針で元の大きさに戻れないけど、大丈夫か?小さな体で走り続けるのは大変だろう?」
「ウホウホ(うーん、大丈夫でしょ。小さくなっても身体能力は元のままだしさ。エレーナを担いでも大丈夫だと思うよ?どうする?)」
「フッ、いや、私は自分で走るさ。魔導士たるもの体力がなくてはな。魔力が切れて何もできないなどありえん。」
「ウホ(そっか。)」
こうしてボクらも出発した。遅れること数分だけど、そう時間はかからずに追いつけるだろう、学生たちの足の進み具合を逆算して考えればね。
あ、先生が本当に何も考えずにおいて行ったとしたら少し状況は変わるけど、さすがにないよね?
拙作を読んでいただきありがとうございます.
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