第5話 邂逅
お読みいただきありがとうございます。
ブクマありがとうございます。やる気が出ます!
今日もいつものスケジュール通り過ごすつもりで熊と戦い、引き分けを一つ増やして、ポイント巡りに移る。
ちょっと前に、ポイント巡りはやめられないと言ったが、その後、本当の目的を思い出して自嘲した。やめられないじゃなくて、やめてはいけない、だったな。
ポイント巡りをする僕の目的は、僕がこうなってしまった理由を探すという大事なことが目的だ。忘れちゃいけない。
ただ、それでも変なものを見つけるのは楽しみになっているので、それも踏まえてポイント巡りはしたいところだ。
まずは一つ目、はずれ。捨てられているのは腐り始めた木材やさび付いて使い物にならない何かの金属。あとこれはつるはしだろうか。木の棒の先に金属が付いている道具のようだ。
なんだかわからないけど、これは持って帰ろう。
次は二つ目、ここもはずれ。ここには主に衣類が捨てられていることが多く、ボロボロの服が捨てられているが、誰が捨てたのか。おそらく近くに村などは無い。なぜかと言えば、ここに衣服が追加で捨てられたところはいまだ見たことが無いので、長期的にたまったごみを誰かが捨てているのだろうからだ。
3か所目は森の中でも中間地点に近い場所で、オーク共の生活区域のポイントだ。ほぼ殲滅した様なものなので、そこにはオークの姿は無いが、それでも考える頭のあるモンスターが物を捨てるので、そこのチェックをしているのだ。
がさがさと漁っていくと、何かが光ったのに気が付いて、そちらを重点的に漁る。
これまで生活をしてきて光るものは結構高い確率で自然界に無い物であることばかりだった。
そうして漁ると出てきたのは、何かの指輪?で少し古い感じがするが、それなりにお高い物ではないかと予想する。大方オークがどこかで拾ったか、ゴブリンなどの弱いモンスターから奪ったんだろう。
うん、これは僕が持っておこう。キラキラしてキレイだし。
他には何かないかとゴミ漁りを続けるが、目ぼしいものはなく、僕は切り上げて帰るとした。これ以上粘ってもしょうがない。それにポイントはここだけじゃない。
一度帰って収穫を仕舞った後、別のポイントに行ってまた漁る。そう何回も来ても新しい物が増えていることはまれなので期待はしていない。
でも、そろそろ、他の本でも欲しいなぁ。別のポイントの開拓でもしようか。あ、あっちは行ったことなかったよな。
そう思って僕が振り返ったところ
「キャー」
という悲鳴が聞こえてきた。
どう考えても人の悲鳴だったな。モンスターどもも僕を襲撃しては返り討ちにするたびに、悲鳴を上げて逃げていくが、オスだろうがメスだろうが野太い「グギャー」とか「ブヒィー」なんて悲鳴で、「キャー」なんて聞いたことはない。
うーん、これは行ってみるべきだろうか。人の存在を確認したのは初めてだが、どうなるかな。
僕はゴリラで、ナックルウォーキング状態で体高はおそらく2.5m、立ちあがればさらに1.25倍ほどある。怖がられるかもな。
とはいえ、貴重な機会だ。逃してなるものか。
***
僕はウホウホと声のした方へと進む。この森の中では熊以外はすでに敵なしなので、悠々と進めるが、思っていたのか距離があったので、途中からはいつもの枝雲梯だ。
ビュンビュン進めば、ほら、もう着いた。
到着したそこでは、二人の女がゴブリンと戦っていた。女は少女と女性で、一人の少女が一人の女性に守られるようにしてゴブリンを退けている。
年齢の差からして、姉妹だと思うが、親子と言う説もあるな。
僕が観察していると、何とか踏ん張っていた姉(仮)がゴブリンの物量に押されてついに引き倒されてしまった。
「お姉ちゃん!」
妹(仮)の叫びは僕に二つの気付きを与えた。一つは本当に姉妹だったということ。
もう一つは、なぜか言葉が分かるということ。
一瞬困惑したが、「これが転生特典か。」なんて楽観的に考えて切り替える。今は彼女たちのピンチだ。
僕は少しでもゴブリンの動きを止めるために、雄たけびをあげ、姿を現す。
「グカァアアアア」
僕の咆哮はゴブリンを振るいあがらせるには十分な威圧感を彼らの心に刻み、その動きを止める。
姉妹たちも動きを止めてしまったのは誤算だった。
「ウホォウ」
僕は動きを止めたゴブリンたちに飛びかかり握りしめた拳を二つ地面へとたたきつける。実はこの技を僕はシタビーと名付けたのだが、まさしくそれ並の威力だろう。
僕の腕から地面へと衝撃が伝わりゴブリンどもに襲い掛かる。気持ち程度でも筋力が上がる魔力を巡らせる技(魔力強化と名付けた)もして全力だ。
グギャー
グギー
と、ゴブリンどもはぶっ飛び、絶命する。別に殺してしまうつもりはなかったが、まあ、仲間を連れて来られても面倒なのでいいか。
残るは姉を掴むゴブリンだけだ。
僕がそちらを振り返ると、そこに見えたのは、硬直から覚めた姉がゴブリンを杖で殴り飛ばしている場面だった。
「ハァアアア」
「ギギィー」
ゴブリンは殴られて気絶したのか、ピクリとも動かなくなった。もしや今ので死んだのか?
とりあえず僕は脅威が無くなったと姉妹に近づこうとするとそこで妹の方から悲鳴が上がる。
「キャッ!」
「クッ、近づくな!それ以上来たら...や、焼き殺すぞ!」
僕は慌てて歩く足、いや、手を止めて、立ち止まる。そう言えば僕はゴリラだったな。そりゃ警戒されるか。
僕が止まったので何を思ったのか、姉妹は少し拍子抜けしたように目を丸くしている。
「こ、言葉が分かるのか!?」
「ゴリラさんすごーい」
姉妹の反応はそれぞれだったが、僕もつい最近知ったことなので、これが特殊なことだと確定されたのに少し驚いた。
まあ、肯定するのはデキるので、僕は首を縦に振り肯定する。
「ふむ、言葉が分かるのなら、危険ではない可能性もあるか。ハッもしや最近、この森に出ると噂の森の王者とはこいつじゃないのか!?」
「きっとそうだよ、お姉ちゃん!」
姉妹が勝手に納得して僕を危険じゃないと思ってくれているようだが、ありがたい。
しかし、うーん、どうすれば、意思疎通が取れるかな。質問に答えるだけじゃなくて、こちらから伝えるには...。
あっ!そうか、アレがあったな。
とりあえず木の棒を用意するか。
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