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第57話 再びの冒険者ギルド①

暑かったり寒かったり、服が決まらないですね。


昼ご飯を通りに乱立する屋台で済ませた後、僕らは冒険者ギルドに向かっていた。屋台をいくつも回ったけど、バナナを売っている所は見つからなかった。残念だけど、屋台で売っていた串焼きも美味しかった。

そこで売っていたのは、オークの肉を串に刺して焼いたもので、その味は豚に似ていたんだけど、こっちの方が味に深みがある気がして、とてもおいしかった。

何が違うのかを考えたんだけど、はっきりとした答えは分からない。でも、きっと魔力が含まれた肉か否かってことじゃないかと思うんだ。

僕は魔物について知っている訳ではないけれど、味の違いから考えて、そうじゃないかと思ったんだよ。深みの理由は魔力って考えると、前世と違う味でも納得できる。前世には魔力なんてなかったからね。


と、まぁ、不明確な話は置いておいて、僕としてはバナナが欲しかったんだけど、屋台みたいに日中ずっと日に晒されている場所にいる商売では、果物なんかは売らないんだってさ。

でもね、そこでエレーナが機転を利かせてくれて、ちょうどその通りにあった八百屋を見つけてくれたんだ。僕は屋台しか見ていなかったから、盲点だったんだよね。

その八百屋は少し高級店みたいで、並んでいる品物も僕が知っている値段より1.5倍くらいしたんだけど、エレーナは気にせずに購入してくれた。おかげで今日のおやつにバナナを食べることができて、僕は幸せだよ。


幸せな気分で冒険者ギルドに向かいつつバナナを食べていると、一つ思い出したことがあった。


「ウホウホ(ねぇ、エレーナは冒険者ギルドで登録はしないのかい?)」


「え?私が冒険者に?うーん、どうだろうな。」


僕は以前から気になっていた冒険者という職業にエレーナは興味が無いのかを聞いてみた。僕としては世界中を回ることができるらしい冒険者という職業は魅力的なんだけど、エレーナはそうじゃないみたい?


「私はグラディスバルト辺境伯の嫡子だ。国を離れることはあまり良いこととは言えないし、妹がいるとはいえ、危険に身を置くことは褒められたことではないからな。」


そっか。エレーナは貴族的な考え方をすれば、替えの利かない嫡子だ。ミーシャはスペアに成り得るかもしれないけど、できればしたくないんだろう。まぁ、僕としては文献でも何でも漁って僕がこうなった理由、転生ってものを調べられればいいかな。


「ゴリ松は冒険者になりたいか?」


僕が勝手に納得していると、エレーナが一大決心したかのように聞いてきた。僕としてはそこまで深刻な質問をしたわけではないから、なんてことがないように答える。


「ウホウホ(そうだね。なれるものならなった方が面白そうだと思うけど、絶対必要だとは思わないね。エレーナといるだけで面白いし。)」


「そうか。それなら良かったよ。」


僕の答えに満足したのかエレーナは笑顔で答えてくれる。エレーナは僕が離れてしまうことを心配したのかもしれないね。そんなことあるわけもないんだから、無用な心配だ。

これはエリックに教えてもらったんだけど、僕のような魔物の中でも高位の存在は寿命も長く、強靭らしいから、ヒトの一生くらいは余裕で何周もできるらしい。

つまり僕はエレーナを見送るまでできるってことだし、それから好きなことをするのも悪くないだろう?


っと、そんな話をしていたら冒険者ギルドに到着したよ。僕は最初に来た時と同様に木製の扉をギギィと押して開き中へと入る。やはり聞こえてくるのは酒場で飲む冒険者たちの喧騒。うるさい事この上ないが、まぁ、許容範囲だね。

僕達が受付へと歩いて行くと、一人の男がエレーナの方へと歩いて近寄ってくる。冒険者っていうのは学ばないのかな?


「おいおい、姉ちゃん。こんなところに何の用だぁ?暇ならこっち来、ぶへらぁ!?!」


とりあえず親切なおじさんである可能性も考えて少し待ってみたけど、案の定だったので、今度は容赦なく殴り飛ばす。下からのアッパーは非常にきれいに決まり、天井に突き刺さる。

そんな冒険者の様子を見て、僕は少しやりすぎたかと思ったけど、意外に周りの冒険者からは良い反応が帰ってくる。


「ブハハハハ。馬鹿なやつだぜ!」

「やっぱりあ~なったか!おっしゃ、毎度アリ!」


「くっそ、もう少し粘れよ!2発まで粘るのに賭けてたのによぉ」


「俺もだちくしょー。今日は飲むのやめてもうひと仕事行くかぁ。」


どうやら、冒険者たちはもう一度来る僕達を賭けの対象にしていたみたいだ。まぁ、いい気分じゃないけど、好意的に受け入れられているならいいか。エレーナの様子を見る限り、この流れも分かっていたみたいだしさ。


僕はエレーナを伴って受付まで向かう。そこには先ほどの受付のお姉さんではなく、眼鏡をかけたおじさんが座っていた。

おじさんはエレーナと僕に気が付くと手元の紙から視線を外して、こちらをチラッと見た。そして口を開くと謝罪と案内をする。


「ようこそ、君たちがグラディスバルト嬢とゴリ松くんかね?私はこの冒険者ギルドの副マスター、クイク・イグラスだ。ドンから話を聞いている。彼は少し用事が出来て外出しているため私が用件を引き受けた次第だ。買取代金の清算でいいかな?」


「副マスター直々に対応いただけるとは光栄だ。おっしゃる通り清算で間違いない。ここで受け取れるか?」


「ああ、すでに用意してある。ただ、フレアグリズリーの件はどうなった?」


どうやらドンはそのことまで副マスターに言っておいてくれたようだ。エレーナはそれについては後日にすると理由を交えて告げる。冒険者ギルドが何を言ってもアレの権利は僕らにあるんだし、相談など不要なのだ。


「そうか。まぁ、書類を作っても良いが、不要だな?グラディスバルト嬢。」


「もちろんだ。私は約束を守る。」


副マスターは結構切れるヒトみたいだ。だって、エレーナが書類を作らず約束を反故にしても貴族だから仕方がない、とならないように、家名を知っているという事実を告げて逃げ道を塞いだんだ。

エレーナは約束を反故にしたりしないけど、念には念をって感じみたい。これで気を悪くする貴族もいそうだけど、そこはドンから聞いたエレーナの人となりを信頼したのかもね。

とりあえず、副マスターが出した硬貨袋を僕の魔法鞄に収納して、お金の話は終了だ。僕らが帰ろうとする前に今度は副マスターから引き留められる。


「少し聞きたいことがあるので、私の執務室までよろしいかな?」


その表情は感情が読めないので、良いことか悪いことか分からないけど、その視線が僕に向いていることから、僕に用があるみたいだ。


あれ?僕はこの人に何かしたかな?
































拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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