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第54話 紹介された職人①

新しい登場人物は背景を設定して出してます。


冒険者ギルドを出てから、ドンに渡された地図通りに少し歩くと目的の場所に近くなったところで、エレーナが何かに気が付いた。


「地図を渡された時からもしやとは思っていたが、まさかこの通りにある服飾店とはな。」


どこか神妙な雰囲気のエレーナに僕は首を傾げる。この通りに何があるのか分からないからだ。

訳知り顔の彼女に僕の疑問をぶつけると、丁寧に教えてくれる。


「ああ、ゴリ松は初めてだもんな。ここは王都の中でも5本の指に入るくらいに広い通りなんだ。広いってことはそれだけ地価も高く、半端な店は店舗を構える事すらできない。これはどこの都市でも同じなんだが、王都は特に高いんだ。」


「ウホウホ(へぇ、それじゃ、今から行くお店は随分高級店ってことかな?お金は足りるかい?)」


僕が心配になって尋ねると、エレーナは何てことがないように笑い飛ばす。


「ハハハ。安心しろ。これでも辺境伯爵家の娘だ、金には困っていない。ここで消費してもあとでギルドで売却金で補填できる。

自分の従魔の服くらい作ってやれないなんて情けないことはしないよ。それにな。」


「ウホ?(それに?)」


「冒険者ギルドが紹介した職人ってことは、冒険者が装備を頼むこともあるってはずだ。まぁ、ギルド長が気を利かせて貴族向けの店を紹介してなきゃだけどな。」


なるほど。ドンは僕の服を作るための職人探しをしているわけだし、素材も知っているのだから、職人もそれを扱える人を紹介してくれただろうってことだね。

まぁ、貴族相手にするわけだし、まさかまさかのってこともあるかもしれないけれど、ギルドでのエレーナの態度からしても何を求めているかは理解しているでしょ。


僕が勝手に納得していると、エレーナが足を止める。ここは先ほどエレーナが言った通りに広い通りなので、止まったことで人がぶつかるなんてことは無いけど、それなりに人はいるから、スリとかには気を付けなくてはならない。

僕は警戒をしながら、どうして止まったのか聞く。


「ウホウホ(どうしたの?)」


「ああ、地図によるとココみたいだ。」


「ウホ?(ここ?え?ほんと?)」


僕は思わず聞き返してしまう。だって、今、僕らの目の前にあるお店は、どう考えても服飾をやっている店だとは思えなかったからだ。

このお店の見た目は、どちらかと言えば、服飾店というよりは金属加工などを行う鍛冶屋さんって感じだ。きっとエレーナも同じ様に考えたんだろう。少し顔が曇っている。


「ウ、ウホウホ(で、でも!冒険者ギルドのギルド長が騙し討ちなんてするわけないし、一応は言ってみようよ!)」


「そう、だな。立場ある人間が紹介状を書いてくれたんだ。きっと大丈夫だ。まずは入ってみよう。」


エレーナも少しだけ無理に納得してその店の中に入ろうとした矢先、店のドアが開いて僕らの目の前に、冒険者風の男が転がるように出てきた。


「うわぁあああああ。くそが!客をなんだと思ってやがる!もう二度とこの店には来ねぇからな!クランの仲間にも話すからな!」


「うるせぇ!てめぇらなんぞ客でも何でもないわ!二度とうちの敷居をまたぐんじゃねぇ!悔しかったらドラゴンの一匹でも狩ってくるんだな!」


後に続いて出てきたのは、ごついが身長の低い男性で、髭もじゃの所謂ドワーフって感じの人だった。服装からして店主だろう。

そんな二人のようなやりとりはこの通りではよくあることなのか、往来を歩く人々は特に気にしていない。驚いているのは僕らとその他数人ってところだ。


追い出されたのであろう客の男性は這う這うの体で退散していった。それを見届けてスッキリしたのか店主は伸びをして店内に戻っていく。


僕とエレーナは慌てて店主を追いかけて店内へと入る。すると、店主はさっきの男性が戻ってきたのかと勘違いして、振り向き様に近くに在ったハンマーを手に取り、勢いよく振り下ろした。


「戻ってきやがったか!てめぇに売る武器なんぞねぇって言っとるだろうがぁ!」


あまりにとっさのことだったけれど、僕の反射神経はかなり良いので、後だしでも何となしに追い抜ける。エレーナに被害が出ないようにそのハンマーを白刃取りのイメージで受け止めると、店主から取り上げる。抵抗されると面倒だからね。


受け止められた店主は驚いたのか声も出さずに僕を見る。きっと思っていたよりも小さかったもんで、意味が分からないんだろうね。


「なんでぇ、あの野郎じゃなかったか。まさか猿に儂のハンマーを受け止められるたぁ思いもしなかったわい。いやぁ、すまんかったのぅ。」


「ウホウホ(ううん、気にしないで。)」


「ゴリ松がいれば私は安全だからな。それにしても、何かあったのか?」


エレーナの僕への信頼はすごい嬉しいんだけど、ちょっと心配になるね。僕がいない場面はそうそうないだろうけど、もしかしたらそう言う時こそ良くないことが起こるかもしれないから。


とりあえず、エレーナが質問したように僕も何があったのか気になるので、店主の話に耳を傾ける。

特に重要そうな話ではないと思うけど、気になることは聞いたほうが、後になって木になってしょうがないなんてことも無いからね。


「ああ、さっきの野郎が、儂の装備を定価の3割で卸せとぬかしてきおってな。ちょっと人数がいるクランだからとふざけたことを言いおって。二度とあそこの仕事はやらん。」


「ふむ、参考までになんというクランか聞いても?」


「ああ、たしか、[ 栄光の天馬 ]とかいうクランじゃ。王都にあるクランの中でも上の方じゃが、質は良くない。」


店主の主観が混じるので、質はどうか分からないけど、さっきの人を見た感じでは、クランの威光を笠にきてる感じはしたね。冒険者ギルドに立ち寄ることもある訳だし、気を付けておこうかな。


エレーナもそう思ったみたいで、店主にお礼を言う。


「そうか。ありがとう、情報に感謝する。」


「ああ、そりゃいいんじゃがな。それで?お嬢さんたちはどんな用件だ?」


店主にそう言われて自分たちの用件を思い出す。そう言えば、目的があってここに来たんだったね。忘れてた。


「ああ、そうだった。これを。冒険者ギルドからの紹介状だ。服の製作を依頼したいんだよ。」


「うん?服飾だぁ?そいつぁ...。ふむ、見せてもらうぞ。」


店主は受け取った紹介状を呼んで、僕を見る。きっと種族のところを見たんだろう。嘘だろう?!と言わんばかりに何度も手紙と僕とを言ったり来たりしている。

あまりに信じられなかったのか、エレーナに尋ねた。


「ここに書いてあるのは本当か?」


「ああ、ゴリ松の種族に関してなら間違いない。ギルドカードもあるしな。」


「ちょっと見せてくれるか?」


店主は僕のギルドカードをエレーナから受け取ってじっくりと見る。嘘は書いていないので、信じてくれるだろう。てか、寸法を測るんだから、首輪外した方が早くない?

僕は思ったことをそのままエレーナに提案したけど、それは却下された。ここで大きくなると店を突き破っちゃうからって。そりゃそうだ。


たっぷり数分ギルドカードを見続けた店主は、現実を受け入れたのかカードを返して僕を見つめる。髭もじゃに見つめられてもうれしくない。


「ふむ、事情は分かった。しかし、生きてる内に会えるとは思わんかったわい。よし!お主の服はこの儂が請け負った!飛び切りのを作ってやるでな!」


「ウホウホ(おお!よろしく!)」


「店主殿、感謝する。しかし、失礼ながら服飾もやっておられるのか?」


今更ながらにエレーナが確認する。まぁ、気にはなるけど、請け負った後に聞くのはどうなんだろう。


「もちろんじゃ。むしろそっちが本業じゃな。鍛治は得意じゃが、昔辺境で最後の仕事をやり切ってそれ以降は弟子の仕事じゃ。」


「ふぅむ。まぁ、やってくれるならこちらとしても文句はない。素材や採寸はどうする?」


「それはこの後、裏で出してもらいたい。弟子がいるでな。」


弟子と一緒に僕の採寸をするみたいだ。


「んじゃ、改めて、儂は、この工房の主、エルダードワーフのドガルじゃ。エルダーじゃ言うても本質は職人じゃ。気にせんでくれ。ほいじゃ、よろしくな。」


「ああ、わかった。私はエレーナ、こっちはゴリ松だ。今日はゴリ松の服を依頼する。よろしく。」


「ウホウホ(よろしくね。)」


どうやらただのドワーフというわけではなかったみたいだ。エルダーってどういう意味だったっけ?古代とかそんな感じ?ま、ドワーフより高位の種族と思えば良いのかもね。


「お嬢さんは貴族じゃろ?家名は?」


「グラディスバルトだ。」


「ほう?グラディスバルト辺境伯か。」


エレーナが家名を告げるとドガルの表情が変わる。悪い方向ではなく良い方向にだが。


「何かあるのか?」


「儂が昔、鍛治仕事をやったのもグラディスバルトじゃっただけじゃ。気にするな。本じゃ、採寸するでな。ついてこい。」


そういうとドガルは店の裏へと歩いて行った。僕とエレーナは先ほどの話が気になりつつも置いてかれないように、慌ててついて行く。


さて、どんな服になるのか。楽しみだ。

























拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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