第53話 冒険者ギルド王都支部④
少し短めです。どうぞ。
ギルド長の部屋へと移動した僕達は、先程の約束通りにギルド長であるドンが紹介状を用意してくれるのを待つ。
待っている間に僕はエレーナと相談をしておく。相談と言っても、どんな服にするとか、肉を配るところ何かの話だ。そういえば何も相談していなかったので、ちょうどできた時間で話し合うことにしたんだ。
「で、ゴリ松はどこかにフレアグリズリーの素材や肉を持って行きたいところはあるのか?」
「ウホウホ(うーん、僕が持っていきたいところは、従魔連合の皆のところかな。まだ知り合ったばかりだけど、これから付き合いもあるだろうしね。)」
まだ王都で知り合いの少ない僕は、何かをおすそ分けする相手も少ない。だけど、従魔連合のメンバーはそれなりの数になる。まぁ、知性ある魔物が少ないから、それ以外には良いかとは思う。
エリックが言うには、彼らは知能が低いが故に、良い肉と普段の食事の違いは分からないっぽいんだよね。まぁ、そんなわけで、僕が分け与えるべきは、数体の魔物ってところだろう。
僕がそんなことを考えたところで、パッと頭に浮かんだ相手がいた。彼には熊程度では満足してもらえないかもしれないけれど、感謝の気持ちと今後もよろしくという意味を込めて、肉を送るのも良いだろう。
「ウホウホ(ねぇ、もう一人だけ肉を贈りたいんだけど、大丈夫かい?)」
「ん?ああ、あれだけの巨体だ。採れる肉も相当な量になるはず。分けるのは良いんだが、誰に分けるんだ?従魔連合というわけではないということだろう?」
エレーナに聞かれたので、隠すことなく伝える。
「ウホウホ(うん。渡したいのは僕の魔法の先生なんだ。ベルーガっていうスカイドラゴン。話したよね?)」
僕が先生に魔法を教わるという話はエレーナにしてあったはずだ。その授業料というわけではないけれど、そう言うつもりで渡したいと思う。
「ああ、学園長先生の従魔のスカイドラゴンか。そうだな。教えを授かるわけだし、礼をするのは大事だな。分かった。それも準備しておこうか。」
エレーナは僕の提案を快諾してくれて、僕は安心した。それじゃ、次は僕の服の話だね。
「じゃあ、今度は、ゴリ松の服の話だな。どんな服が良いとかあるか?私は従魔の服を作るのは初めてだから、ある程度は職人に任せても良いと思うが。」
「ウホウホ(そうだね。僕も服は門外漢だし、専門家に任せることが一番安全で確実かも。)」
僕もエレーナの意見には賛成だ。紹介してくれる職人がどんな人か分からないけれど、冒険者ギルドのギルド長が紹介してくれるのだから、下手な人だとは思えないので最善主な気がする。
「それじゃ、そういう方向でいいか。まぁ、ただの服ならどこかの商店で見繕うことはできるから、服がほしいだけならそっちで良い。今回は丈夫な服というテーマでいい?」
「ウホ」
僕は基本的に前世でも服に頓着したことは無いので、今世でもそこは変わらない。むしろゴリラになってそこら辺の感覚もより適当になった気がする。
まぁ、元人間としては全裸で過ごす気恥ずかしさはあるけれど、羞恥心で身動きが取れないほどじゃないのさ。
僕らが話を終えたあたりで、ドンがペンを置いた。どうやら紹介状が書き終わったみたいだ。誰に当てたのかはわからないけど、封筒に入れてそれをエレーナに差し出す。
「お茶も出さんですまんな。
これがギルドからの紹介状だ。店主に渡してくれ。店の場所はこっちだ。細かく場所を記しておいた。まぁ、迷うような場所じゃねぇし、大丈夫だろ。
あ、紹介状には扱ってもらいたい素材と余った素材の話も書いてあるから、職人のところに行ってお互いに確認してくれ。
職人は、服飾に強いやつを指定したから、安心してくれ。きっと満足する服が作れるはずだ。
ああっと、一応口が堅い職人を選んだからな。ゴリ松の種族は言いふらされるわけにはいかねぇからよ。」
「気にしないでくれ。色々とありがとう。早速その職人の元へと向かってみるよ。そもそも今日の予定はそちらがメインだからな。」
「うし、んじゃ、フレアグリズリーが入った魔法鞄は受付で受け取ってくれ。そろそろ準備も終わっているだろ。」
「ああ、感謝する。」
「ウホ(ありがとね。)」
僕とエレーナは礼を言って立ちあがる。これで、一先ずは冒険者ギルドで行うことは終了だ。想定外に時間は取られたけれど、結果が良いので文句はない。
ギルド長室を出ると階段を下りて受付まで向かう。受付には先ほどのお姉さんが忙しそうに仕事をしていた。
なんやかんやあって時間が経って、ギルドも忙しい時間に差し掛かっているようだ。そんなときに仕事を増やすのは申し訳ないが、こちらもアレが無ければ困るのだ。
「失礼。ギルド長からカバンがこちらへと渡っているはずだと聞いてきたんだが。」
「え?ああ!お嬢様!確かにこちらで預かっております。中ももしっかりと詰め直しました。はい、こちらをどうぞ。」
「ありがとう。......うむ、確かに。」
「それではこちらにサインを。」
受付のお姉さんの指示通りに差し出された書類にサインをする。これで僕の魔法鞄が返ってきた。さ、今度は紹介された服飾職人のところへと行こう。
冒険者ギルドはまた夕方ごろに来ることになるけれど、できればいつか依頼を受けてみたりしてみたいものだ。
学園の授業で、そう言うのは無いのかな?武術や魔法学、魔物学で授業には参加しているけれど、実戦から遠ざかりすぎると、勘が鈍りそうだからね。これでも森にいた頃は毎日熊と戦っていたしさ。
ま、なんにしてもいつかの話だ。
うしろ髪退かれる思いの僕はエレーナに手を引かれて冒険者ギルドを後にした。
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