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第52話 冒険者ギルド王都支部③

いつもお読み下さりありがとうございます。

ブクマ、評価、感想、励みになってます。前話の受付嬢の行動を「勝手に見つける」から「許可されて取り出す」に修正しました。


疑問に思っている僕を放置して受付のお姉さんは魔法鞄から何かを取り出す。エレーナはもはや止められないと諦めたみたいだ。

 

「はぁ、もう仕方がない。」

 

「出しちゃまずかったですかね?」


「いや、うん。もういい。出しても売るつもりが無かったからな。それは理解してくれ。」

 

そんなこんなでお姉さんが引っ張って取り出したのは、大きな毛皮の塊だった。売るつもりがないもの?そこで僕は思い出した。

 

「ウホウホ(熊のこと忘れていたね。)」

 

「オークの時点でこれだけの騒ぎだからな。先に止めるべきだった。」

 

エレーナが言う様に今は解体作業員が僕らの周りに集まってきていた。僕の種族はバレていないけれど、オークの山を見て目をキラキラさせている。

 

「こいつぁ、マーダーグリズリーじゃねぇか!こんなのどこで?!」

 

「キャー!」

 

責任者のおっちゃんは驚いて出所を確認する。悲鳴は取り出した本人のお姉さんだ。さすがに凶悪な見た目の熊は女性には怖いか。

 

「それも賢者の森だ。ただ、それはゴリ松の服にするので、先ほど言ったように今は売ることはない。」


「こんなのがいるのか。しかも、それを服とは、剛毅なお嬢さんだ。しかし、残念だなぁ。」


おっちゃんはどうやらこれも売ってほしいみたいだけど、残念ながらこれは譲れない。そう思ったらエレーナから提案があった。


「なぁ、ゴリ松?服を作った余りをギルドに売ったらどうだ?肉なんかは使わないだろう?」


「ウホウホ(確かにそうだね!僕は何を使うかわからないけど、あまりものならいいと思う。)」


余るなら、それを持っていてもしょうがないので、希少部位を除いて売るのは良いと思う。まぁ、肉もありすぎても困るしね。王都のお屋敷の人たちや寮、従魔連合におすそ分けするくらいしか使い道がないもん。


「余った素材はここのギルドに売るということでどうだ?ゴリ松も納得してくれた。」


「おお!それは願ったり叶ったりだ!もちろんそれでいい!ゴリ松だっけ?彼の服ならそんなに素材は使わないだろう?」


おっちゃんとその周りに集まった解体屋さんたちは嬉しそうにしているが、解体屋さんはともかく、おっちゃんは僕がゴールドバックだと知っているはずなのに勘違いしていないかな。ま、それでいいなら、いいや。


「では、そういうことで。ただ、一つだけ条件がある。それを飲んでくれれば、こちらとしても気分よく都合できる。」


エレーナは指を一つ立てて言った。相手に餌をちらつかせてからのこちらの要求。さすが貴族って感じだ。交渉を有利に進めている。


責任者のおっちゃんはごくりと生唾を飲んで、その条件とは何か尋ねる。僕もなんだろうと聞いて、なるほどと思った。確かにそういうのはその道の人に聞くべきだろう。


「その条件というのは、腕利きの服飾職人を紹介してほしい、というものだ。最低でもこのマーダー、いや、フレアグリズリーを加工できる職人を希望する。」


「なるほどな。そりゃ、これほどの魔物の素材じゃ、扱える職人にも限りがある。それを冒険者ギルドに紹介してほしいってことか。

確かに俺たちは、冒険者相手に紹介することがあるから、そういった人脈は多い。よし!了解した!冒険者ギルドはその条件でフレアグリズリーを卸して貰いたい。」


「ああ、これで契約成立だ。よろしく頼む。」


エレーナとおっちゃんは、固く握手する。僕の服を作った後にはなるけれど、売買契約がなった。もうおっちゃんじゃなくて、ドンって呼んだ方がいいかな。


「それじゃ、オークやゴブリンの素材の査定はさっき言った通りだから、先に職人の紹介をしよう。紹介状を書くからギルド長室に来てくれるか?」


「わかった。」


「よし、他は通常業務に戻れ。ついてきてくれ。」


ドンが作業員たちに指示を出す。そしてエレーナと僕に向かってついて来いという。僕はそこでアレ?と疑問に思った。

紹介状を書きに行くんだよね?なんで冒険者ギルド長の部屋へと行くことになっているんだろうか。


「ウホウホ(なんでギルド長なんだい?)」


「ん?確かにそうだな。

なぜ、ギルド長の部屋へと行くんだ?」


エレーナが僕の代わりに質問する。


「ああ、言ってなかったか?俺はこの冒険者ギルド、パールベルナ王国王都支部のギルド長を任されている。ドン・デンガンっつー者だ。よろしくな。」


なんと!このちっさいおっさんはこの冒険者ギルド支部のギルド長だった!いや、責任者とは言っていたけど、それは部門の話だし、まさか兼任で担っているとは思わないでしょ。


これにはエレーナも驚いたみたいだ。目を見開いている。


「それは失礼した。ギルド長殿とは知らず、申し訳ない。しかし、どうして買取の責任者を?」


「そう畏まらないでくれ。俺はただの平民だから、むしろこちらが畏まるべきか?」


「いや、私も今はただの学生だ。気にしないでいい。」


「そうか。じゃ、遠慮なく。んで、質問の答えだが、単純に暇だからだ。ギルド長なんてのは有事以外は大した仕事がない。求められるのは指揮能力であって、事務作業じゃないからな。

だから、通常時はこうして買取担当のおっちゃんをしてるってわけだ。あ、俺がギルド長なのは広めないでくれよ?ベテラン連中にゃ知られているが、一応隠しているからな。」


「了解した。」

「ウホ(はーい。)」


なんていうか、目から鱗だ。一番偉い人だから、一番忙しいと思っていたけど、そうじゃないんだね。通常時でもそういう事務作業は担当者がいるのかも。そうじゃなきゃ冒険者ギルドほどの大きい組織は回らないよね。


「ドンさん、そんなこと言っていると副ギルド長に怒られますよ。」


お姉さんがそんなことを言う。それで僕は察した。事務作業はきっとその人が請け負っているんだね。


「悪い悪い。んじゃ、今度こそついてきてくれ。」


「ああ。」

「ウホ。」

「私は業務に戻ります。」


歩き出したドンについていく。お姉さんは受付業務に戻っていった。なんだかんだで世話になったね。


僕たちはギルド長室へと行くために裏の倉庫から、まずは表の冒険者ギルドへと向かい、その後に階段で二階に上がるらしい。


ギルドに戻ると、そこには意外な人物がいた。その人物は僕たちを見つけると手を振りながら駆け寄って話しかけてきた。


「おぉーい。こんなところで会うとは偶然だな。依頼でも受けに来たのか?」


話しかけてきたのは、ぼさぼさの赤髪に鉄が錆びた様な色の瞳をした冒険者にしては軽装の男性だった。僕はその人を見て、一瞬だれかわからなかったけど、よぉく見ると、すぐに誰かわかった。

駆け寄ってきたその冒険者に対応したのは、ドンだった。どうも知り合いらしい。まぁ、ギルド長なら知らないわけもないよね。


「おぉ!ウッド!お前こそ今日はどうしたんだ?小遣い稼ぎか?」


「まぁ、そんなところだ。今報酬をもらって帰ろうと思ったところでさ。そこに俺の生徒がいたからつい声をかけちまった。」


そう話しかけてきた冒険者は、学園で学生に武術を教える先生のウッド・ノースだった。今日は無手ではなく、肘から手にかけて魔物か何かの皮でできたベルトを巻いている。俗にいうセスタスってやつだと思う。彼にはぴったりの武器だな。


「素材の買取をお願いしに来ただけですよ。先生は副業になるんでしょうか?」


エレーナは先生が学園以外で仕事をしていることが気になるみたいだ。僕も気になるよ。学園が副業できるかどうか。


「ああ、俺は特別だな。先生になるって時に学園長の爺さんに条件を出したんだ。冒険者も続けさせろってさ。」


「なるほど。」


「あー、もういいか?さっさと上に行こう。」


僕とエレーナが先生の話を聞いて納得しているとドンが申し訳なさそうに言った。まぁ、目的としてはそちらの方が優先だね。


「あー悪いな。んじゃ、俺は行くわ。」


先生はシュタッと手を挙げて去っていく。僕たちをそれを見送ると、ギルド長室へと移動を再開した。


「ウッドの生徒だったんだな。あいつはしっかり先生を出来てるのか?」


「ええ、いい先生だと思います。」


エレーナがそういうとドンはあからさまにホッと息を吐く。


「専業冒険者をやめる時にいろいろあったからな。ちょっと心配だったんだ。ま、やれてるなら安心だ。」


僕とエレーナはそのいろいろというのが気になったのだけど、これ以上は話すつもりはなさそうなので、口を噤む。

そこからは、特に話すこともなく、部屋に到着するまでは全員無言だった。




















拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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