第4話 教本?
お読みいただきありがとうございます。
僕は今日も森をうろつく。すでにこの森に来てからどれほどの時間が経ったか分からないが、相当な時間が経っているはずだ。
だって、初めの頃は度々襲って来ていたオークを見かけなくなってかなり経っているからだ。
僕の知っているオークと同一モンスターであれば、あいつらは結構なスピードで増える設定が多かった。ここのオークもそうか分からないが、ゴブリンと思われる小人は少なくともイメージ通りということが分かったので遠くない予想だろう。
今日まででまた新しくわかったことがある。それは僕がでかいということだ。何でそれがわかったかというと、それは僕があいつと出会ったからだ。
あいつというのは僕のライバル。この森に棲む、一頭の熊だ。種類までは分からないが赤毛で魔力の呼吸も僕と同レベルで大量だ。
そのクマは僕と取っ組み合いができる大きさで、初め僕は熊が小さいのだと考えていたが、実際は僕が大きいのだと思いつくまでにそう時間はかからなかった。
その熊とは今のところ0勝0敗32分けで、決着はつかないままだ。どちらも肉弾戦しかなく。ちょっと飛び道具っぽいドラミングも熊の咆哮で相殺されるので意味がない。
実は今日も一戦交えてきたんだけど、どちらからともなく決着が付かないことを悟って引き上げてきたところだ。
さて、今日は何かいいものがあるかね。とりあえずはいくつかのポイントを回って何かないかと確かめに行こう。
僕がここを探索している中で、今のところ人は見たことが無い。だが、確実に存在しているというのは分かった。なぜかと言えば、僕が良く行くポイントに明らかに文字と見える何かを発見したからだ。
これがオークやゴブリンなどの蛮族の文字であれば、諦めるが、それは明らかに加工された紙にインクで書いた文字だった。
蛮族共はそんなものは使わないし、証拠としては十分だろう。
ということで、僕は人に会うことも期待して、そう言ったものを見つけた場所を記憶しておき、巡ることを日課としている。
さあ、今日は何が落ちているかなと、ポイントを探る。ここは二つ目のポイントなのだが、一つ目が僕の寝床でもある森の深いところの洞窟の一番近くなので、少しだけ外に出たところのポイントになる。
今日も新しい何かが捨てられているが、これは...本か?
随分小さい本だけど、僕の指はそれすら器用に扱えるようで、丁寧にページをめくって中身を確認する。
どうやら中身は子供用の本のようだ。もっと言えば、子供が単語を覚えるための本。何かしらの文字の横に絵が描いてあるのでそうやって覚えるのだろう。
やはり人間が存在すると見て間違いないだろう。
僕はその本を読みながら地面に自分でも書いて見る。図体がでかいので書く文字も大きくなるのだが、森の王者と行っても過言ではない僕は地面を広く上手に使って練習できるのだ。
***
文字の練習をし始めてから、今度は2週間が経った。僕はすでにこの本の半分の文字を書けるようになっていた。
最近の僕の一日のスケジュールはあまり変化が無く、朝は熊と戦い、ポイントを見回りし、洞窟周辺を整備して文字の練習をする。
夜が更ければ寝るし、日が昇れば起きる生活は存外飽きない物で、毎日が新鮮な気分だ。
ただ、ここまで文字が書けるようになって気づいたことがあるのだが、この本があれば、覚える必要はなかったのではないか?
本を指させば、何を言いたいかは容易に表現できることに気が付いたのだ。まあ、覚えておけば損はないと思いはするが、今ここで時間を浪費すると考えれば損になる気もするのだ。
ウホウホと果物を食べながら気が付いた時は、勿体無いが口の中の物を吹きだしてしまったんだ。
はぁ、ここまでして人に会わないのだから、意味があったのだろうか。
さて、明日に備えて、おやすみなさい。
***
今日も今日とていつもの日課だ。
熊とは今日も引き分けで、ポイントを回っている時に見つけたのは、何か魔力の込められた鞄だった。
こうして生活している中で、この魔力という物の使い方が少しずつわかってきた。魔力は体を巡らせることができる。元々はそこまで動くものではなかったが、根気よく動かそうとしていたら少しずつ動くようになって、今ではグルグルと体中を巡らせることができるようになっている。
なんとなくだが、これをしている時は力が1割から2割ほど増している気がする。元々が強いのではっきりとはわからないのはゴリラである僕の欠点か。
空気中の魔素も同様に使えるかと思ったら、これは体内の魔力とは違って容易に動かせず、今でも数mm動かすので精いっぱいくらいだ。
さて、なんでこんな話をしたのかというと。このかばんの様に魔力がこもった物は魔力を外から視認することができ、それをするには魔力を巡らせるのが必要らしい。
最初に魔素を視認したのは、ゴリラの本能というか、無意識的に巡らせるのをやっていたのではないかと思う。
こうして手に入れた鞄は、指を突っ込んでみたところ、驚いたことに中が意外と広かった。これはと思い物をいくつもいれてみると、どうやらこれはラノベとかでよく見る魔法鞄ってやつだと判明した。
僕の体のサイズ的には頼りない大きさでしかないが、それでも食糧を貯め込めると思えば良い物を手に入れた。
これは僕の寝床に作った入れ物に大事に仕舞っておこう。
これだから、ポイント巡りはやめられない。
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