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第47話 魔物学③

歯医者ってどれくらいの頻度で行くのが正解なんでしょうね。


「それじゃあ、次は彼の運動能力を観察していこうと思う。さ、みんな教室の後ろへと移動して。主、バナナ一本でお願いします。」


「キーキー(うむ、いいだろう。)」


僕に質問する時間が終わったのか、今度はモンストル先生は学生を教室の後ろの方へと移動させて、何かをエリックに頼んだ。こそっと言うものだから、最後の部分は僕とエリックくらいしか聞こえていなかったみたいだ。傍から見たらおかしい関係だし、隠しているんだろうね。


それにしてもエリックもバナナが好物なんだね。それで素直に実行する辺り、意外にも扱いやすい主だ。先生も付き合い方を心得ているんだろう。


エリックは大事そうに持っていた杖を振るう。すると、教室に存在した学生が座っていたいすや机が、一瞬のうちにどこかへと消え、教室ががらんと何もなくなってしまった。


これに驚いたのはどうやら僕だけで、それ以外の生徒はその現象をすでによくあることだと認識しているみたい。

きっと、これまでの授業でも時折披露することがあったってことなんだと思う。そうじゃなきゃこの反応は納得できないな。


「キーキー(これでいいか?バナナだぞ。)」


「ありがとうございます。もちろんわかってますよ。それじゃ、みんなできるだけ場所を空けてね。

グラディスバルト嬢はあちらでこれからやることをゴリ松君に説明してくれると助かる。僕は準備しているからさ。内容はいつもと同じだよ。」


「ハイ。ゴリ松。説明するがいいか?」


エリックがやったことも気になるけど、それよりも僕がこれからやることを説明されるみたいなので、思考を切り替えてエレーナの話に耳を傾ける。


「ウホウホ(いいよ。僕は何をすることになるのかな?)」


「ゴリ松には身体能力を計測させてもらうんだ。領で作ったギルドカードなどで階位やら技能やらは調べることができるが、それ以外に具体的な運動能力や知能というのは詳細に調べることができない。

なので、モンストル殿は、測定の結果から判定する仕組みを考えたんだ。これは一応、国にも採用されている測定方法で、国軍や領主軍の従魔の測定に用いられているんだぞ。」


「ウホウホ(ふぅん。言われてみれば、具体的な情報はギルドカードではわからなかったね。)」


僕は測定をすることの意味について考える。

この世界には多くの魔物がおり、そのどれもが特徴が異なり、得手不得手がある。得手不得手に関しては人間であろうと同じなわけだが、魔物はそれがとても顕著な差になるはずだ。せっかく集めた魔物も戦力として数えるには種類が多く独特過ぎる、となれば軍隊に編成するにはリスクが伴うのだろう。

例えば、騎馬隊の中に足の遅い魔物がいたり、魔法部隊の中に魔法が使えず近接特化の魔物がいたり。そんな風に、契約した者にもよるだろうが得意を生かせないようでは困る。それを解消するのがこれから行う測定なんだね。

エレーナに確認してもそんな説明を追加でされたので、僕も納得する。


まぁ、言い換えてしまえば、体力テストみたいなものだということだろう。問題は僕は小型化した状態でそれを受けるのかということだ。

もちろん、小さくなっているのだから、もろもろの数値が変化するのは間違いない。大きい状態であれば、同じ距離を走るのでも歩数が変わるし、体重も増える。

どちらにもメリットはあるから、特にどちらがいいとは言うつもりはないけど、そこはどう判断するんだろうか。

僕は本当の大きさで、全力で移動しようとすれば、障害物はものともしないし、走るだけでもそれなりの被害が出せると思う。もはや歩く災害と言ってもいい。質量ある存在が高速で移動するというのはそういうことだと思う。

逆に小さいままだったら、もちろん周囲に被害はない。ただ、小回りも聞くので、障害物をものともしないのは同じかもね。


と、まぁ、こんな風に僕はどちらでもいいのだけど、今ここではアームコングとしてのデータを求められているので、それに応えなきゃいけない空気がある。

エレーナも「小さいままで。」というので、頷く。先生は大きくなった僕の運動能力が知りたかったみたいだけど、それはエリックが止めて説教していた。


エレーナに僕がやる運動について説明を聞いてから、先生のところへと言って準備ができたことを伝える。


「さて、それじゃ、ゴリ松君。準備もいいみたいだし、やっていこうか。

まずは移動速度からだね。あちらからこちらまでの時間を測定するから、君にはできるだけ早く移動してほしい。あ、わかっていると思うけど、そのままの姿でお願いするよ。魔道具を外した状態の測定はまた日を改めて、ね?」


先生がそういうので、僕は小さいまま測定をするようだ。指示された種目は前世の感覚から言って、大体100m走ってところかな。

僕は前世、対角にも恵まれていたので、陸上競技では相当優秀だったと思う。高校や大学ではそれなりに成績を残したこともあるし、腕力を使うような競技では負けなしだったと言っていい。


「それじゃ、位置についたかな?よーい、ドン!」


先生の合図に合わせて指定されたスタート地点から一気に走り出す。走り出すといっても今世の僕はゴリラなので、両拳を地につけた、ナックルウォーキングでのっしのっしと進む。

前世だと、通常どれくらいが100mの記録かもはや覚えていないけど、僕は大体10秒後半くらいだったかな。

とりあえずはそれを狙うけど、この魔法があったり身体強化があったりする世界ではそれも難しい目標とは言えないだろうね。


僕の走ったタイムはどれくらいになるだろう、なんて考えたら、その時にはすでにゴールである先生の前を過ぎてしまっていた。ビュンと一瞬で走り抜けてしまったみたい?

これには先生も学生たちも、さらにはエレーナも驚いたみたいで、顎が外れたかのように口を開いて固まっている。


雁首揃えて愕然としているのを見ると、ちょっと面白いのだけど、そんな中で一人冷静なエリックが、僕に向かってこう言った。


「キーキー(自分の身体能力を理解しておらんのか。やれやれだ。)」


あれ?やりすぎちゃったかな?


















拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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