第39話 風の日の授業
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今日は風の日、今日は僕が参加できる授業が複数ある日だ。エレーナにはそれを朝言われたので、いつでも行けるように準備はしておく。
今日の時間割は、一時間目に国学があり、2時間目に魔法学が二つ続けて行われる。三時間目までの魔法学は、前半が座学、そして後半が実技のようで、魔法学が好きなエレーナは朝からウキウキだった。
エレーナが好きな魔法学が気になっていた僕としてはやっと参加できることに少しだけワクワクしていたので、エレーナのことを言えないかな。
4時間目は魔物学で、こちらも僕としては気になる授業である。なぜなら、その教鞭をとるのが、エリックの下僕ということなので、どんな授業なのか。エリックはどうしているのか。どうめちゃくちゃなのか。いろいろと知りたいと思う。
エリック曰く、この学園の授業は学生の将来性を考えた構成になっているみたいなんだけど、学生でありながら先生も担う人に興味がわかないわけもないよね。
魔物が一般的なこの世界に学問として成り立っている魔物学というのも興味がないわけではない。
僕は魔物としては未熟者なのだから、今後、戦うことになるかもしれない魔物について知ることができるというのもプラスポイントだ。
そして最後の授業は、今週の初めにも受けて、僕がやらかしてしまった武術の授業だ。先生はもちろん同じ、ウッド・ノース氏だ。あれから会うのは初めてなので、個人的には緊張する。
エレーナはすでに一時間目の国学の授業を受けに教室へと向かったので、僕は現在、寮の部屋でただ一人、勉強中だ。御父上にもらった本はもう少しで完全に理解できそうだ。
「ウホウホ(それにしても、学生寮は静かだし、勉強がはかどるなぁ。)」
僕は学生寮があまりにも静かなことを不思議に思う。だって、今の時間は生徒がみんな授業に出ているかって言ったら、そうではないからだ。
エレーナの学年は授業がびっしりと組まれているのだが、それより上となると少々話が違う。
6回生までは授業を受けてその見識を深めることが第一に考えられている。しかし、7回生からは卒業に向けてより深く学ぶようになったり、自分で研究をしたりとなるようだ。
つまり、領主を目指すのであれば経営学や魔物学などの関係ある授業を集中的に学んだり、騎士などを目指すのであれば武術を中心に学んだり、魔導士であれは魔法学、研究者であれば自身の研究、などとそれまでのようにこれをやれとは言われなくなるらしい。
実質的には6回生が、授業を受けなくてはならない最終学年だということになる。エレーナは7回生以降もある程度は受けるようだが、それでも来年以降は授業を受ける時間は減るだろうとのことだ。
話を戻すと、そんな感じで受けなくてもいい授業がある学生もいるここで、何の物音もせずに静かというのは不思議だよ。
研究をしていれば何らかの音は出るだろうし、武術や魔法でも音は出るのだから、静かなのは何か理由があるのかもね。
これも今度、先生に会った時に聞いてみようかな。それかエリックでもいいかもしれない。彼もこの学園で組織のトップをやっているくらいだし、知っているだろう。
僕はそんなことを考えて中断されてしまった勉強を再開して、エレーナが迎えに来てくれるのを待つ。
あ、途中から目が疲れてきたので、魔法の練習に切り替えたよ。まあ、まだまだ魔素を操ることが全然できないけれど。
***
僕が魔素の操作に四苦八苦していると、誰かが部屋へと近づいてきたことに気が付く。その足跡は僕のいるエレーナの寮室にまっすぐ向かっているので、エレーナかな?
ガチャリとドアが開いて現れたのはやっぱりエレーナだった。
「ウホウホ(おかえりなさい。少し早かったね。)」
時間は部屋に取り付けられた時計で確認できるんだけど、授業が終わるには少しばかり早い。そのことをエレーナに尋ねると、エレーナはなんてことがないように言う。少し興奮気味だ。
「ああ!国学は最後に小テストのようなものを行ってその日の復習を行うんだが、全力で終わらせたのだ!早くゴリ松と魔法学を受けたくてな!」
どうしてエレーナはそんなに僕と魔法学を受けたいのかわからないけれど、たぶん、自分が好きなものを他者と共有したいってところかな。
エレーナはどうもほかの学生から高嶺の花みたいな扱いをされているから、自分が好きなものを共有できる人が少ないんじゃないだろうか。
そういった意味でも僕みたいに従魔って存在は都合がよい存在なんだろう。御父上やミーシャくらいしかいなかったのかもしれないね。
「ウホウホ(それじゃ、もう移動するのかい?)」
「うむ、それがいいと思ってな。すでに教室は空いているはずだから、行っても問題ないはずだ。準備は出来ているか?」
「ウホウホ(うん。勉強道具は僕は要らないしね。今も魔法の練習していただけだし。)」
僕がそういうと魔法大好きなエレーナがそれに食いついた。
「なんだって?!魔法の練習って何をしてたんだ?」
「ウホウホ(うん。魔法を使ってたわけじゃないんだけど、その前段階をね。)」
僕は少しだけ詳しく、魔素の操作について説明する。先生から指示されただけなので、詳しくもないか。
それを聞いたエレーナは感心したように呟く。どうやら知らない内容だったみたいだ。
「魔物が魔法を使うときは、魔素とやらを操作できなければならないのか。初めて知ったぞ。ところで、その先生というのは誰だ?」
先生については説明しようとしたらエレーナが寝てしまったので、説明できなかった。時間もあることだから、先生についても説明する。
「先生っていうのはね。この前ここに来た学園長先生の従魔だよ。ベルーガっていうスカイドラゴン。御父上のことも知っているみたいだったよ。」
「なんと。ベルーガ様のことか!学園長先生とベルーガ様はこの国の魔導士の頂点に君臨する方々だ。そんな方から教えをもらうとは...ゴリ松、すごいな!」
エレーナが突然、僕を抱きかかえて振り回す。どうやら相当うれしいようだけど、そんなにすごいことなのかな。
でも、振り回すのはやめてぇ。目が回るよ。この体になってこんなに振り回されるのは初めてだし!
「おっと、すまんすまん。名誉なこと過ぎて興奮が押さえられなかった。」
「ウホウホ(うん、大丈夫。そろそろ、移動しようか。)」
「そうだな。」
僕はエレーナの謝罪を受け入れて、移動を提案する。余計な話をしたので、余裕をもって出てきたのに、もはや猶予がなくなった。
僕たちは二人で魔法学の教室へと移動を開始する。
あ、どうやら僕はエレーナに抱えられたまま移動することになったみたい。
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