第38話 今日の報告
寝落ちって翌日、体に違和感を感じますね。寝違えたのかな。
あ、いいねという機能を開放しました。よくわかりませんがよろしくお願いします。
今度は、僕が今日あったことを話す番だ。エレーナが授業を受けていた間に僕の世界は少しだけ広がった。森から外に出たことでずいぶんと広がった世界だったけれど、まだまだ僕が知る世界は、広がる余地があるようで、これからも楽しみだ。
「ウホウホ(僕もね、いろいろあったんだよ。)」
「いろいろ?」
僕がそういうとエレーナは興味深そうに聞き返す。
「ウホウホ(そう。いろいろと。一個ずつ話すよ。)」
「それは楽しみだ。ただ、先に夕飯にしよう。そろそろ食堂が開いているだろうし、昼食は食べたか?」
エレーナの様子を見るに本当に疲れているようだったし、それならいっそ寝るばっかになってからにしようと思い直し、提案通りに夕飯を食べに食堂に向かうことにする。
エレーナに言われて気が付いたけど、僕は昼食は食べずに過ごしてしまったようだ。まあ、エレーナに僕の鞄の中にご飯を入れておいてもらったのを忘れていたってだけなのだけど。
***
「さて、今日、ゴリ松が何をしていたのかを教えてもらおうか。」
夕飯を食べた後、部屋に戻ったエレーナはすでにお風呂や着替えをすましており、すでに寝るだけの状態になっている。
夕飯は取ってもおいしかったし、ちゃんとバナナも用意してもらった。エレーナが厨房に頼んでくれたみたいだ。辺境伯って爵位の中でも上の方みたいだし、通らない要求じゃないみたいでよかったよ。
エレーナが催促してくれたので、僕も気持ちよく話し始める。1つずつ話すと言ったからには、最初から話すべきだろう。
まずは、この部屋の中で文字の勉強をしていたところからかな。
「ウホウホ(今日は僕が参加できる授業が無かったから、最初は部屋で文字の勉強をしていたんだ。僕がこれまで使っていた文字は貴族のご令嬢が使うような物だってエレーナが教えてくれたでしょ?だから、御父上に貰った紳士用の本で勉強してたんだよ。)」
「そう言えば、父上がそんな本をくれたのだったな。まあ、現代において文字は基本的に男女共用であるからな。女性側が男性の文字に吸収されたようなものだが。」
ふぅん、そうなんだ。やっぱり森に捨てられていた本はずいぶん古い本だったってことなんだろうね。状態が良かったから、不要になった本を処分したってところなのかもね。
「ウホウホ(そっか。まあ、僕もまだ全部覚えているわけじゃないから、少しずつ覚えることにするよ。それでね、文字を覚えている途中にもいろいろあったんだ。)」
「途中に?」
「ウホ(うん。途中に。)」
エレーナは不思議そうにしているが僕は話を続ける。次に話すのはなんだろう。エリックが来たことかな。
「ウホウホ(それでね。文字を覚えていたら窓の外から何かの視線を感じて出会ったんだ。)」
「出会った?何に?」
「ウホ(エリックだよ。)」
僕はエリックのことを告げる。エレーナはその名前を聞いてピンとは来なかったようだ。詳しく説明しよう。
「ウホウホ(エリックは誰かの従魔で、この学園にいる従魔のまとめ役みたいなことをしている猿の魔物だよ。)」
僕がそう説明すると、エレーナも思い当たる節があるようで、それに答えてくれる。
「ああ、エリックというのは聞いたことがあるぞ。確か魔物学の先生の従魔だったはずだ。」
「ウホ(先生?)」
エレーナが教えてくれたことによると、エリックの(本人曰く)下僕はこの学園で、魔物学を教える教諭の一人だそうだ。しかも、それはちょうど明日授業があるそうで、今からとても楽しみになる。
あれ?でも、最上級生って言ってなかったっけ?
「テス=モンストルという先生なのだが、なかなか個性的でな。まだ学生でありながら魔物学で博士号を取って教員としても働いているんだ。個人的には武術のウッド・ノース先生よりも授業がハチャメチャだぞ。」
エレーナが楽しそうに言うが、僕はそれを聞いて関心もしたが、恐ろしくもなる。明日僕も参加することになりそうなのに、そんな恐ろしいことを言わないでほしい。学生でありながら、先生でもあるんだ。ずいぶん優秀なんだね。
武術の先生は流れで闘うことになったけど、同じように何か起こるかもしれないと想像してしまった。
「ウホウホ(やだなぁ。それでね、エリックって従魔連合のボスだったんだ。従魔連合って知ってる?)」
「従魔連合?なんだそれは。」
エレーナは従魔連合を知らなかったようだ。僕は意外に思いながらもその組織について説明する。
「ウホウホ(従魔連合っていうのは、この学園に通っている学生の従魔が集まっている組織で、その目的は従魔の暇の解消ってところかな。)」
詳しいことは覚えるつもりもなかったので、僕なりの解釈なのだけど、概ね間違っていないはずだ。
「ウホ(それにエリックに誘われたから僕も加入したんだよね。)」
「参加したのか。暇の解消って、要は私たちが授業を受けている間の暇ってことだな?」
「ウホ(うん。エリックはそう言ってたと思う。)」
従魔が主人の授業中に暇を持て余すことはエレーナも知っていたのか、それ以上は何も言わない。まあ、止められるような組織でもないと思うけどね。
「ウホウホ(それで、今日は初めて会合に参加したんだ。そこではいろいろな人の従魔が集まっていて、中にはかなり賢い魔物も見たんだよ。あ、そうだ。ブラスト=ザイムって知ってるかな?)」
「ああ。ザイム伯爵子息だろう?彼がどうした?」
「ウホウホ(その彼の従魔のオーガが従魔連合に入るんだよ。話を聞いたら、僕とエレーナの関係に近くてね。目的を同じとして契約が成ったみたいなんだよ。)」
エレーナはムサシの主人を知っているようで、僕が名前を出したことに驚いたみたいだった。僕はムサシから聞いた話をする。
「なるほどな。ザイム伯爵家は武の一族だが、その陰で従魔術に長けていると聞いてはいたが、オーガとは驚いたな。」
オーガが従魔というのはそんなに驚くことなんだろうか。ムサシは賢いし、強さも申し分ないから、冒険のパートナーにちょうどいいと思うんだけど。
「ウホ?(オーガが従魔って珍しいの?)」
「ああ、オーガと契約する方法は分かっていないんだ。戦って負かせてもこちらに首を垂れることは無いという。しかし、ゴリ松の情報から推測すると共闘することが鍵なのかもな。」
うーん、一般的な契約方法ではないことは間違いないだろうけど、僕らも同じなんだよね。
エレーナは僕がのんきに考えていることを見透かして一つくぎを刺してきた。
「ゴリ松、このことは他言してはいけないぞ。きっとザイム伯爵家の秘伝か何かかもしれないからな。その内、ブラスト殿からも声がかかるだろう。」
「ウホ(わかった。)」
それほどのこと?!と驚いたけど、ここでは頷くだけにした。まあ、その内相手から来るんだったら、待っていればいいだろう。僕は聞かせてもらっただけだし。
そこからは他の従魔連合の魔物について一人ずつ話していく。ゴブリンエリートのバイト、ブラックドッグのボルフ、走竜のフレイなどのことを話していく。
そして、フレイの主人がいつだか聞いたクラウド公爵の子供だって話をしようとした辺りで、エレーナの方からスーッという声が聞こえてきた。
「スー、スー」
「ウホ(あら、もう寝ちゃったか。まあ疲れていたみたいだもんね。僕も寝ようかな。)」
まだ、他にも先生とのこととか話したいことはあったけど、寝ちゃったならしょうがない。僕も自分に準備された寝床で寝るとしようか。
エレーナの実家であるグラディスバルト辺境伯領の領主館の僕のベッドも快適だけど、ここでもエレーナが気を利かせてくれていい寝床を用意してくれたから、良い気持ちで寝れるんだよね。
今日のことはまたその内話せばいいか。特に話してなくて困ることは無いもんね。
それじゃあ、おやすみなさい。
拙作を読んでいただきありがとうございます.
「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」
と思っていただけたら、ブックマーク,評価、感想をいただけると励みになります.誤字報告もありがたいです。
 




