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第37話 水の日の授業

後書きは定型文を張り付けていたんですが、いつからか文章が切れていたので、今日から直しました。


その日はエレーナが寮の部屋へと戻ってくるまで、先生の言っていた魔力で魔素に干渉するための訓練を行って過ごした。

とは言うもののその結果、得られたものは無く、手ごたえも皆無だった。


僕が諦めかけたその時にドアがガチャリと音がしてエレーナが返ってきたことに気づいたんだ。

エレーナはひどく疲れていて今にもベッドに横になって寝てしまいそうだった。


「ウホ?(エレーナ、おかえり。どうしたんだい?ひどく疲れているようだけど。)」


僕が問いかけるとエレーナはただいまと言って、そのままベッドに倒れるようにしてうつ伏せに寝そべる。どうやら立っているのも難しいほどに披露しているみたいだね。


「ああ、疲れた。もうこのまま寝てしまいたい。」


エレーナはそう言うけれど、そのまま寝ては制服がしわになるし、できれば今すぐに着替えてほしい。

昨日、初めて自分で生活するエレーナを見た僕だけど、彼女が生活能力がひどく低いことはすぐに理解できた。

まあ、馬車の荷物なんかを見ても一目瞭然なんだけどね。


「ウホ。(ほら、着替えてからにしてね。話は聞いてあげるから。)」


僕は自慢の腕力でエレーナを持ち上げて立たせると着替えを促す。こういった寮の部屋での世話をグラディスバルト辺境伯、要は御父上に頼まれたっていうのは、エレーナには内緒の話だ。


「うぅ、だって疲れたんだもん。」


エレーナは『もん』とか言っているが、普段とは違う口調に可愛らしく感じる。この感情は親戚の子供を微笑ましく感じるようなそんな感覚だ。

ヒトであったころにはまた違う反応をしていたかもしれない。


「ウホウホ(それでも最低限の支度はしないといけないよ。ほら、何があったんだい?)」


「分かったよ。ゴリ松。はい。」


エレーナは渋々と言った感じで自分で立つと、僕に向けて手を差し出す。その手はなんだと言いたいけれど、まあ、何をしてほしいか分かってしまうのは従魔だからなのか。


ベッドに乗っかってエレーナの服を掴み、それを引き上げる。疲れすぎて幼児退行しているのか、服ぐらい自分で着替えてほしいね。


「ありがと。よいしょっと。それじゃ話を聞いてくれ。」


こうして着替えたエレーナは今日あったことを僕に話してくれる。楽しかったこと、初めて知ったこと、悔しかったこと、などなど色々と話してくれるが、一番熱をもって話していたのは、今日の最後の授業、音楽の授業だ。


聞いた話では、今日は実戦系の授業は無くて、ずっと勉強ばかりだったみたいなんだけど、最後の最後に音楽の授業があってとても疲れたそうだ。


今日の授業は次の通りに実施されたらしい。


1:経営学《選択制》2:国学3:地理4:算術5:音楽


どれも大事な授業なんだけど、一つずつ説明しよう。僕もエレーナに聞いただけだし、そこまで詳しくはないけれどね。あ、エリックにも少しだけ聞いたかな。


まず、経営学っていうのは、エレーナが選択してとった授業で、これと礼儀・作法を学ぶ授業の二分一だ。これは領主を目指す貴族とそうではない者の違いなんだって。

エレーナは辺境伯領を継ぐことはほぼ決まっているらしいし、こちらを選んだんだってさ。


礼儀・作法は領主にならない貴族の二男三男や娘がとったり、平民が貴族に仕えるために履修したりするんだって。この学校には優秀な平民が入学するらしいし、そう言った進路がポピュラーだからなんだね。


その授業はエレーナにとっても大事だし、必要に駆られるわけだから苦にはならないんだそう。どこの領の特産がこうだからあそことは仲が良いとか、あそことあそこは小競り合いが予想されるため取引は慎重にとか、領の自給率をあげるには、なんて、僕にはさっぱりわからない分野だ。


次は国学だね。これはそのまま「国のことを勉強しよう」ってことだ。経営学と何が違うのかって僕は思ったけど、こちらの方がスケールが大きいし、過去のことを学ぶ授業でもあるみたい。歴史と経営学の中間って感じなんだって。

このパールベルナ王国では、過去には帝国を名乗っていた時代もあるし、それこそ最初は共和制の国だったらしい。建国当初は議会が国を動かしていた過去があり、どういう訳か帝国になって最終的に今の王国に成ったんだって。


帝国と王国の違いは、トップの権力の強さなんだって。帝国であったころは皇帝の意見のみが採用されて、逆らえば罪、ってくらいの社会だったらしい。でもさ、それってトップが優れていたら良いけれど、愚かなトップだったら全員共倒れってことだよね。

実際、愚かな皇帝のせいで国が傾いたらしいんだけど、そこでパールベルナ王国の初代国王、今では賢王と呼ばれる人物が立て直したんだって。

それ以来、パールベルナ王国は堅実な道を歩んでいて、他国との関係も良好だし、国内も豊かなんだそうだ。


国学ではそう言った良くない過去や良くなった現在などを学び、これからも繁栄を続けるための知識を身に付けましょうって授業を受けるらしい。


次の3時限目、4時限目は特に説明することは無いね。地理はこの国及び周辺諸国の地理的な関係や、他国の特産や強みなど、前世の地理と内容に差は無いみたい。算術も程度の差はあるけれど、前世と変わらない。難易度で言えば高校3年レベルってところじゃないかな。僕が高校に行っていた頃から比べると今はどうか分からないけれど。微分積分とかってやったっけ?


そして、エレーナがこれだけ疲労している理由は最後の授業にある。水の日の5時限目の授業は「音楽」。これは前世の授業とは少々違くて、歌を歌ったり、音楽を聞いたり、楽器を弾いたりといった授業ではない。

もちろん、そう言ったこともするのだが、メインはダンスだ。社交ダンスって言う奴だと思う。まあ、出席する人たちがほとんど、貴族やそれに関係することになるだろう人たちだから、夜会とかに出席するときに必要になるだろう。


エレーナもそれは分かっているんだろうけど、本人はこの授業が嫌いみたいだ。なんでか聞いたところ、エレーナはこう言った。


「だって、私は女だぞ?なのに、いつもパートナーを頼まれるのは令嬢ばかりなんだよ。気付けば男性パートを覚えてしまったのに、女性パートは明らかな練習不足だ。それに気を使ったり普段使わない筋肉を使うから、武術の授業よりも肉体的にも精神的にも疲労が蓄積されるんだよ。」


エレーナはため息をついているが、まあ、学校での他の生徒の反応をみるとそれもしょうがないかもしれない。

女子生徒はみんな、エレーナを慕っているみたいだし、かなり話しかけられている。それに対して男子生徒は所謂、高嶺の花といった感じだろう。

結果として、エレーナに話しかけるのが令嬢ばかりになり、ダンスパートナーも令嬢ばかりになるのだろう。先生もそれで良いと思ってるんだろうね。普通は注意するだろうし。


音楽の授業では、同学年に婚約者がいる生徒はパートナーも婚約者が務めることになっているみたいだけど、エレーナには同学年の婚約者はいない。そうなると必然的にそうなることは決まった未来だったんだろうね。


「ウホホ(まあ、ボッチよりはいいんじゃないの?)」


僕は慰めにならない様な言葉を掛けて、今度は僕の話を開始する。僕だって聞いてもらいたいことがいくつもできたんだもんね。


















拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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