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第36話 先生

登場人物が人間以外ですいません:)


「ぎゅい?(なんじゃ。何を驚いているんじゃ?)」


彼は何に驚いているか分かってないみたいなんだけど、普通に種族当てられたら驚くよね?


「ウホウホ(なんで僕の種族分かったの?)」


僕が質問すると彼は何事も無いように教えてくれる。


「ぎゅい(それはな、まあ、得られた情報から推測してじゃな。グラディスバルトの倅、いや、今は領主じゃったか。アレがここへ通っていた頃にな、行ったことがあるんじゃよ。儂の相棒は学園の長であると同時に魔物学者でもあっての。グラディスバルト領の賢者の森の調査に行ったのじゃ。)」


なんと、驚くべき情報が出てきたじゃないか。僕の種族を当てたこともそうだけど、それより彼は学園の長、つまりこの学園のトップの従魔ってことみたいだ。

学園長って、従魔に乗ってきたってことか。


「ぎゅい(あの森にはコング系統の魔物はおらんかったし、当時はゴールドバックには会えなかったんでな。忘れておったが、金毛の気配は相当な強者の気配だ。儂ほどじゃないがな。それで、確信を持ったのじゃ。)」


なるほど。エレーナの御父上の領地のことを調べたってことはアームコングが存在していないと知っていた訳か。

でも、強者の気配、なんて出してるつもりはないんだけどな。見た目はただの猿だし、最初は騙せてたはずだけど。

ていうか、僕のことを金毛って呼ぶのはなんでだろ。


「ウホウホ(なんだかわかんないけど、すごいや。なんでそんなに賢いの?やっぱり長生きだから?)」


僕がそう聞くと、彼は朗らかに笑って自ら名乗りを上げてくれる。


「ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅ、ぎゅい(ハッハッハッハ、そりゃの。儂は長きにわたって君臨し続ける空の王、スカイドラゴンのベルーガじゃ。人の短き生くらいは良いかと相棒と契約したが、面白い者に会えたものじゃ。)」


そう自己紹介した彼は、間違いなくドラゴンだった。その巨体や空を飛来して来たことからも予想できていたけど、いかんせん目しか見えていない今は予想の段階だった。

つまり僕は異世界生物との邂逅を果たしたわけだ。ドラゴンなんて正しくファンタジーじゃないか。


「ウホウホ(やっぱりドラゴンってみんな賢いの?)」


「ぎゅい(いんや、ドラゴンによるの。儂らスカイドラゴンは基本的に集団で生活するし、その生活の過程で賢くなったんじゃろうな。走竜などは人と関わるでな。賢い者もおる。)」


そう言われて、そう言えばと思い直す。すでにドラゴンと会っていたんだなぁ。フレイはなんとなくいじけた女の子って感じで、ドラゴンにあったって感動する暇もなかった。

そっか、まあ、ベルーガさんは見るからにドラゴンって言うほどに巨体だし、感動するっていうならこっちの方が良いか。


「ウホウホ(ふぅん。そうなんだ。次に会うのが好戦的じゃないといいなぁ。)」


「ぎゅい(安心せい。ドラゴンなんぞ、滅多に出会わん。好戦的であれば即座に討伐されてしまうしの。儂らだって無敵ではない。)」


そう言った彼は少し寂しそうだったが、まあ、何かあったのかもね。でも僕には関係ないや。


「ウホウホ(まあいいや。それじゃあ、続きを教えてもらっていいかな。)」


「ぎゅい(おぬし、自分に関係ないとスルーするタイプか。まあ、良いか。さて、次はなんじゃ?)」


彼も僕と似たような性格のような気がしてきた。それに強そうだし、階位とか知りたいけど、マナー違反だろうから話を切り上げた。

僕は本を開いて次の文字を教えてもらう。


「ウホ(これはなんて読む?)」


「ぎゅい(うむ、これはじゃな――――)」


こうして僕とドラゴンの個人レッスンが始まった。



***



「―――――ぎゅい(して、これが小競り合いで、こちらが戦争となるわけじゃな。どうじゃ、分かったか?)」


「ウホ(うん。理解したよ。そう言う法則があったんだね。これなら後は一人で覚えられそうだよ。ありがとね。)」


ベルーガは長寿なだけあって教えるのが非常に上手くて、僕は40分ほどで一冊を読み切ってしまった。先生がいるってやっぱりいいね。


「ぎゅい(他に何か教えてほしいことは無いか?もう少し時間があるようじゃし、教えてやるぞ。)」


「ウホ(そう?じゃあ、先生は魔法って使える?)」


僕は思い切って先生と呼ぶことにして、魔法のことを尋ねる。


「ぎゅい?ぎゅい(先生とな?うむ気分が良いぞ。金毛の。魔法は儂らドラゴンには必須の技術じゃ。儂は風魔法が得意じゃ。)」


先生は気分よく魔法について教えてくれる。


「ぎゅい(儂らドラゴンは見ての通り図体がでかいが、羽は大きいわけではない。それを補うのが魔法じゃ。ドラゴンとしての特性で、様々な属性の魔法が使えるが、儂は風魔法が得意なのじゃ。)」


先生の説明では、空を飛ぶときに風魔法で浮力を補ったり推進力を補って飛行するんだって。確かに、窓の外を見て確認した翼だとどうしても飛べないくらいには大きさが足りない。


先生は水色の鱗の西洋のドラゴンって感じなんだけど、とにかくでっかいので空を飛べるというのに懐疑的だったんだけど、魔法って便利なんだなぁ。


「ウホウホ?(僕は土魔法が使えるみたいなんだけど、どう使えばいいか分からなくてね。教えてくれないかなぁ?)」


僕がそういうと先生は興味深そうに聞き返してきた。


「ぎゅい?(なんじゃって?魔法が使えるのか。ゴールドバックは物理的な種族じゃったはずじゃが、面白い。ふむ、土魔法か。まあ、まずは魔力をどの程度扱えるかじゃな。)」


先生がそう言ったので、僕は自分ができることをやってみる。


まずは身体強化して、魔力を纏って腕に足に頭にと動かしていく。以前よりもスイスイと動かせるようになってきた気がするんだよね。


それを見た先生は感心した声を上げる。


「ぎゅい(なかなか良い動きじゃ。しかし、魔力しか使うておらんの。もったいない。魔素は操れんか?)」


魔素って空気中のやつだよね。こっちはいまだにほとんど動かすことができていない部分だ。むしろ動かせるなら動かしたい。


「ウホウホ(そっちはまだできないんだよね。どうすればいいかな?)」


「ぎゅい(ふむ、まずはそこからじゃな。魔素が使えねば魔法は使えん。人間であればそうでもないんじゃが、魔物はな。)」


先生が言うには人間は自らの魔力だけで魔法を使えるみたいだ。確かにエレーナはそうだった。僕達とは違うってことかな。


「ぎゅい(魔素は自分の魔力を外に放出して操る。放出する際につながりを切ってはいかんぞ。つながりを維持したまま、その魔力で魔素を摂りこむことができなくては、魔法は使えん。)」


なるほど。僕は先生が言うように魔力を放出して見るが、放出した瞬間に魔力は僕の手を離れて魔素へと還る。むずかしい。


「ぎゅい(まあ、そう焦るな。すぐにはできなくとも練習あるのみじゃ。)」


「おーい、待たせたの。必要な物資を手に入れた。そろそろ行くぞい!ん?何をしておるんじゃ?」


先生が僕にアドバイスをくれたところで、寮の上の方から人の声がする。んー、きっと学園長先生かな。


「ぎゅい(おお、待っておったぞ。少し待ってくれ。金毛の、とりあえずは今の練習をするんじゃ。また機会があるじゃろうて。次はもちぃと難しいことを教えてやる。)」


「ウホウホ(うん。ありがとう。次までにできるように練習しておくよ。)」


「ぎゅい(うむ、ではな。)」


先生はそう言って頭を持ち上げる。そしてまた何かを学園長先生と話すとそのまま上空へと飛んで行った。

気配が遠ざかるが、さすがにドラゴンだけあってまだ感じ取ることができる。きた時は気配を消していたみたいだね。


文字の勉強はほとんど終了してしまったけど、魔法のことを思いがけず練習できるようになったので、エレーナが授業の時は暇ってことにはならなそうだ。


今日のところは少し疲れたし、休憩してエレーナが帰ってくるのを待とうかな。














拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」

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