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第35話 身バレ

環境が変わると書くのも楽しくなりますね。


急いで部屋へと戻ると、まだエレーナは戻っておらず、僕はホッとするとともに少しだけ残念に思った。


学園に来てから初めての他の従魔との交流をしたことを話したかったんだけどな。友達が出来たってわけではないけれど、知り合い程度にはなったと思うし。


とりあえず、エレーナが帰って来るまでは暇だから、すこしだけ文字の練習の続きをしよう。


僕は開きっぱなしの本で文字を読むのを再開する。これまで覚えていたところもついでだし、復習も兼ねて再読しよう。

さっき覚えたわけだから、忘れなければ時間もかからない。


今度の文字はこれは先ほどの「冒険者」と似ているけれど、装備をつけていると言った絵ではなく、そのまま男性だ。さらにその横にはドレスを着た女性の絵がかかれている。その横の文字が何を現しているのか。


うーん。これは性別を現しているわけじゃないだろうな。この世界には男性と女性を現す文字は別にある。僕が知っているのは、グラディスバルト領の領都グランディスで公共の場所にあるトイレには絵が書いてある。

それが表すのはもちろん「男性」と「女性」で、各トイレの入口に提示されていた。


この絵に関しては、文字を読めない平民の子供でも分かるほどの広まりで、これを見て見当はずれなことを思う人はいないくらいだろう。


じゃあ、この絵が表しているのは何かな。普通の子供はこう言う絵と文字を見比べつつも先生などに教えてもらって覚えていくんだろうな。

そんなどうでもいいことを考えながらも意味を考える。


じーっと絵を見ていると、ドレスを着ている女性を見て少し引っかかりを覚える。見たことがあるような気がするんだけど、どこだっけ?


悩みつつも思い出せないので先に次の文字だ。次の文字の絵は剣だな。ていうか次からは武器シリーズみたいだ。

次は「剣」だし、その次は「杖」、次が「槍」、「斧」、「弓」。ここら辺は楽勝だね。やっぱり男性だと、女性版の本よりはこういう武器とかが多いのかもしれない。

そこからいくらか武器や防具が続いた後にジャンルが変わった。やっぱり武器や防具は見た目がシンプルなものが例に出ているから分かりやすくてすぐに覚えれた。


あ、今度は食べものかな。いや、動物かな?「牛」、「豚」、「馬」、「鳥」。どれも食肉動物だから判断付かないけれど、その次に来たのが「蛙」だから、きっと動物だろう。そうに違いない。


僕が納得させてふと窓を見ると、少しずつ窓の外が暗くなっていったのに気が付いて何だろうと外を覗く。

窓の外を確認すると、やっぱり暗くなっていたけど、それは時間の経過じゃなかったみたい。どうやら何かの影みたいだね。


「うほぅ」


特に意味もなく声を出す。ため息にも近いかもしれないけれど、それには理由がある。だって、ここに影がかかるってことは上に何かがいるってことだもん。


そして僕は今、上にいるだろう何かと目が合っているんだよね。


「ぎゅい?(なんじゃ、この猿は。ふむ、不思議じゃ。)」


それは独り言のようにそうつぶやくと、僕から視線を外す。どうも、何かを感じてこちらを覗いたみたいだけど、こっちとしては照明の無い部屋で暗くされるのは勘弁してほしい。


その陰の原因は、僕に興味があるようなことを言っている。迷惑な話だ。


「ウホウホ(ちょっと、暗いんだけど。)」


「ぎゅい(ん?この猿か?ずいぶん賢いのじゃな。エリックのやつにはこんな奴がいるなどと聞いておらんが。)」


エリックの名前が出てきた。知り合いなのかもしれないが、エリックが伝えてないのも無理はない。だって、僕がここへと来たのは最近だから仕方がないね。


まあ、それを素直に教えるのも癪なので、無視してこちらの要求を再度告げる。


「ウホウホ(早く退いてよ。僕は今、勉強しているんだ。)」


「ぎゅい(なんと!それはすまなんだ。ただ、儂も相棒にここで待っていろと言われてしもうたじゃて。少しだけ我慢してくれんか。)」


成るほど、この目の前の「影の理由」も誰かの従魔なんだね。それで待機を命じられているなら仕方がないか。


うーん、それなら、僕も有効利用させてもらおうかな。


「ウホウホ(ねぇ、あなたは文字は読める?)」


僕の質問に彼はすぐさま答える。


「ぎゅい(うむ。儂はこれでも学園に存在する誰よりも長く生きておるし、当然読めるぞ。)」


「ウホウホ(そうなんだ。じゃあ、ここにいるときだけ、僕に文字を教えてくれるかい?)」


僕の提案は僕よりも賢そうな彼に文字を教えてもらうということだ。エレーナが帰ってくるまでに時間はあるだろうしね。


彼は僕の提案に調子よく快諾してくれる。


「ぎゅい!(いいじゃろう!儂もこの年で誰かに教えることになるとは思わなんだが、エリックが従魔をやっとる様なびっくりした出来事もあったしの。)」


その二つに関連性があるか僕には判断できなかったけど、エリックが従魔って言う件の話は気になるけど今は良いか。古い知り合いって感じだね。


「ウホウホ(それじゃあ、最初はこれを聞いていい?なんか男性と女性なんだけど、性別ではないみたいだし、分かるかな?)」


僕は本をかざしながら、尋ねる。彼は巨体を動かして窓に目を近づけ、その絵をみると、なるほどと言ってから意味を教えてくれた。


「ぎゅい(これは『貴族』じゃな。ほれ、女性の方はドレスを着用しておるし、男性はどことなく軍服じゃろう?儂の相棒が若かりし頃の名残じゃな。今じゃ、そのような格好をした貴族も少ないぞ。)」


「ウホゥ(そうなんだ。エレーナの御父上が使ってた本だから少し古いのかな。他にもそういうのあるかも。ありがとうね。)」


僕がお礼を言うと、彼はなんの、と言って今度は彼から質問される。


「ぎゅい?(なんじゃ、おぬし、グラディスバルトの娘と契約しておるのか。なるほどのう。)」


彼はエレーナのことを知っているようで、言い当てられてしまった。やっぱりエレーナは有名人なんだね。

冷静にそう考えていると、次にかけられた言葉には驚いてしまうことになったよ。


「ぎゅい?(して、何故、森の賢者と称されるゴールドバックがグラディスバルトの小娘の従魔をしておるのじゃ?)」


「ホ?(え?)」


どうしてか彼には僕がゴールドバックであるとばれてしまった。


なんでだろう。














拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」

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