第33話 走竜のフレイ
何とか別のPCで書き直して投稿できました。どうにか更新ペースを変えずにやれそうです。
自嘲的なことを言いながら僕の前へと出てきたのは、僕の5倍ほどもある大きさのトカゲだった。
いや、この世界があまりにもファンタジーであることから考えれば、「竜」という奴かもしれない。
僕がこれまで見た大きな魔物や魔獣の中で、賢者の森で喧嘩した中である、あのクマを覗けば一番の大きさだ。
「ウホウホ(君は誰だい?)」
僕が尋ねると彼女は、ハンッと鼻を鳴らして僕の方に視線をよこす。もしかしたらあまりにも小さくて目に入ってなかったかもしれないね。
そもそもここにいる魔物はオーガのムサシやエリックを除けば、皆あまり大きくない魔物ばかりだ。
ここが大きな従魔用の厩舎であることから考えて、そもそもは彼女一人だけのねぐらだったのかもしれない。
僕達がお邪魔しているんだったら、こちらが名乗らずに名前を聞いたのは失礼だったかな?
僕がそう悩んでいると、彼女の方から話しかけてくれる。
「ガルルル(あんたがゴリ松ね。ここはあたしのご主人様が用意してくれた厩舎だけど、皆の憩いの場になるのは別に気にしていないわ。一人でいても暇なのはわかっているもん。)」
「ウホウホ(そうなんだ。わかったよ。)」
意外にも怒られることはなく、この場を提供してくれるらしい。しかも、この竜は意外に寂しがり屋なのかもしれないぞ。一人でいるのが嫌なのだろうね。
「キーキー(フレイよ。突然出てきてどうしたのだ。我が声を掛けても反応すらせんかったではないか。)」
エリックが少し揶揄うように言うと、フレイと呼ばれた竜は少し悔しそうに反論した。
「ガルルル(うるさいわね!新人がいるのに挨拶しないわけにもいかないでしょ!あたしだってこの連合では古い方なんだから。)」
彼女は決して四天王とは言わないが、それでも自分が連合で上の立場に入ることは分かっているようだ。賢い魔物とエリックは言っていたが、ムサシと同レベルで意思の疎通ができるのは想定外だった。
「グルルル(まあ、フレイ殿もようやっと出てくれたのですし、どうして籠られたか聞いてはいかがかな?)」
そこでムサシから結構な鋭い角度のパスがフレイへと回される。そもそも話したくなくて籠っていたのに、それを追求するとはね。ムサシも気になっていたのかもしれない。内容は知っていてもフレイ自身がどうしたかったのか、とかね。
「キーキー(そうだな。ここを借りている身としては相談を受けるくらいは吝かではなかったのだが、いかんせん姿を現さずだんまりであったからな。この際だ。吐きだしてスッキリするがいい。)」
エリックは尊大な態度ではあるが優しい言葉を掛ける。まあ、場所を借りているというのも事実なので、打算もゼロではないだろうけど。
僕も流れからして聞いて行く感じなので、大人しく待つ。ムサシやバイト、ボルフも静かに待っている。
その空気に耐えきれなくなったのか、フレイがポツリポツリと話し始めた。
「ガルルル(えっとね、あたしはフレイって言うんだ。一応、走竜って種族。知ってる?リザードランナーって結構町にもいるから珍しくないんだけど、あたしみたいに羽があるのは珍しいみたい。)」
フレイがそう言ってしゃがんで見せてくれたのは、体のわりに小ぶりだが、しっかりと機能しそうな羽だった。翼といっても良いかもしれない。
その羽をピコピコと動かすさまはどこかコミカルだが、走竜とは地上を走る竜だったはずだから、珍しいというのも頷ける。
「ガルルル(それでね。あたしのご主人はジャック様って言うの。あたしが生まれたときからずぅっと一緒で、育ってきたわ。そんなご主人にあたし、迷惑を掛けてしまったの。)」
しょんぼりと話すフレイは、とても大きなトカゲとは思えないほどにシュンとしていて、見ているこっちが落ち込んできそうなほどの気落ちのし様だった。
「ウホウホ(それは何をしてしまったんだい?僕はまだここへきて間もなくてね。知らないんだ。)」
「ガルルルル(そうなんだ。あたしはね。従魔として登録する前に違う種族で登録された後にそれがバレて怒られちゃったんだ。もちろん、怒られたのはあたしじゃなくてご主人のジャック様だけど、そんなことになっちゃったから、申し訳なくて...。)」
なんだかどこかで聞いたような話だなぁ、なんて思っていると、エリックがその話に補足を加える。彼も聞いていて我慢できなくなったみたいだ。さっきもちょっと怒っていたしね。
「キーキー(それはお主もお主の主人も悪くはないであろうが!アレはどう考えても周囲が悪いのであろう!?)」
「グルル(そうです。拙者も主に聞きましたが、学校としてはフレイ殿の主人に責は無いに等しいが体裁として停学にしたとのことではないですか。)」
「グギャギャ(フレイ、ゲンキダス。オデ、ワルクナイ、オモウ)」
「ウォン!(ボルフモ!)」
口々にエリックの援護をする従魔たち。さらに後ろでは話の内容を理解していなくてもエリックに従って「ワルクナイ」と言っている他の従魔がいる。
だんだんと騒がしくなってきたけど、僕としては詳しい話が分からないから、少し聞いてみる。
「ウホウホ(違う種族ってなんだい?)」
「ガルルル(えっとね。古代竜)」
フレイがそう言ったところで僕は耳を疑うと同時にそういえばと思い出す。
僕が役所に登録に言った際にややこしくなったのはお前のせいか!
拙作を読んでいただきありがとうございます.
「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」
 




