第32話 自己紹介2
工作ってセンスが大事だと実感しました。
後書きにお知らせがあります。詳しくは活動報告にでも。
僕がエリックにその生い立ちってやつを詳しく聞くと、エリックがムサシの方を向いたので、僕もつられてそちらを向く。確かに本人に聞くべきだよね。
「キーキー(ムサシ、お主から話すか?)」
「グルル(そうですね。そうしましょう。それでいいですか?ゴリ松どの。)」
ムサシがなぜか僕に許可を求めてきたためそれに頷くと話し始める。
「グルル(それでは拙者から。拙者の主人の家は古くからある武術の名門です。そんなザイム家では、5歳になると従魔を得る試練が課されるのです。)」
「ウホ(うん。)」
「グルルル(その時に主は拙者が住んでいた山に一人で放り込まれ、泣きながら魔物と戦っていました。拙者もその時は主をただの食糧と思い戦いを挑んだのです。)」
ムサシは懐かしむように目を閉じ、再度開くと続きを話す。
「グルル(結果は引き分け。拙者がまだ生まれて間もないとはいえ、主はオーガと引き分けたのです。今思えば、拙者は主を見張っていた家の者に殺されてもおかしくはなく、自分でも馬鹿であったと、幼かったと思います。)」
「ウホウホ(うん、でもそこからどうして従魔になったんだい?どう考えても殺されそうだけど。)」
「グルル(引き分けて倒れている時にその山の当時のヌシが乱入してきたのです。拙者は必死に抗いました。もちろん主もです。その時、拙者たちの間に何かつながりができて気づけば掌にこれが。)」
ムサシはそう言って掌を僕に見えるように差し出してくれる。要は従魔の証が現れたって言うことなんだろうけど、ムサシとその主人の契約は僕とエレーナの関係と近いのかもしれない。
「グルル(そうしてそのつながりから力が湧き出し、何とかヌシを倒すことが来たということです。主にはその後、正式に契約を交わして以来10年仕えさせていただいています。)」
「ウホ(なるほどね。僕達と似ているね。)」
二人の関係はきっと、主従という以上に共闘したということで相棒みたいなんだろう。そう言うところも僕達に似ている。
何をするにしても一緒に育っていったのが感じられるので、もしかしたらムサシと主は似ているのかもね。
あれ?
「ウホウホ?(それだと、主が学校に行っている10歳からの5年間はどこにいたの?)」
「グルルル(ああ、それはですね。拙者もこの王都の屋敷で訓練していたのですよ。ザイム家は武術の名門。道場を営んでいるのでそこで修行を。)」
「ウホウホ(なるほど。週末、主が会いに来るって感じかな。まあ、とにかく、君が賢く強く育ったのは、そうやって訓練や生活を主人と共に育ってきたからだったんだね。)」
「グル(ええ。その通りです。)」
子供の頃に従魔として拾われたから、人間の子供と同じように教育を施されたのかもしれない。飽くまでブラストのついでなのだろうけど、これは従魔教育の革命じゃない?
僕がそう思っているとエリックにその考えを否定される。
「キーキー(それなら賢い魔物は作れる、とか考えているな?それは無理なことよ。そうでなければ、我がここで教育したものは軒並み賢くなるであろう。素質があればムサシのようになるだろうが、そうでなければ、不可能だと我自信が証明したのだよ。)」
なんとなく自嘲気味に話すエリックだが、それでも呼びかけて近寄ってくるくらいには話が通じる相手になっているのはすごいことではないかと思う。
森で見たゴブリンやオーク、その他の魔物は話が通じない物しかいなかったよ。
素直に思ったことを言うとエリックは嬉しそうだが表面上は仏頂面だった。素直じゃないね。
「キーキー(さて、これで自己紹介は終了だが、もう一体、賢い魔物が居る。そいつはどうしようか。)」
「ウホウホ?(ん?それはどうして呼ばないんだい?)」
僕が不思議に思って聞くとエリックは首を振って理由を教えてくれる。
「キーキー(それがな。以前、何やら主人に迷惑を掛けたとかで落ち込んでふさぎ込んでいるのだ。我が呼びかけても自分のねぐらから出てこんのだ。どうしたものかとな。)」
「グルル(彼女は主人が大好きでしたからね。迷惑を掛けることになったのは主人が悪いとはいえ、ショックだったんでしょう。)」
「キーキー(馬鹿を言うな。アレは彼女の主人のせいですらないわ。取り巻きの暴走が招いた不幸な事故だと認識しておけ。不幸なのはヒトであっても頭の足らん者にすり寄られた主人よ。)」
どうやらここにきていないのは不幸な従魔のようだ。詳しく何があったとは理解できなかったけど、主人が不幸だとエリックは思っているみたいだね。
あ!そう言うことか。さっき、四天王がどうとか、葉っぱがどうとか言ってたのは、『彼女』のための言葉だったんだね。
というと、ここでの会話が耳に届くような種族なのかもしれない。聞こえなければ葉っぱも掛けようは無いからね。
そう思っていたら、僕達を囲んでいる従魔たちのさらに奥からのっしのっしと歩いて何かが出てきた。
「ガルルルル(あたしに聞こえるようにそんな話をしてもあたしはもうここから出ないわ。エリック。あなたもあたしが馬鹿だと思っているんでしょ!?)」
その言い方はずいぶん自嘲的で、自分を責めているようでもあったが、僕はその従魔が本当に主人を大好きなのだというのが伝わってきて、嬉しくなった。
従魔と主人の関係にもいろいろあると分かったからね。
とりあえず、その『彼女』から話を聞いて見ようか。
拙作を読んでいただきありがとうございます.
つい先日、執筆に使っているノートPCの電源が突如落ち、修理、もしくは買い替えで執筆できなくなりました。
どちらにせよ、更新を停止せざるを得ません。こちらの作品のストックも取り出せない状況です。
できるだけ早く再開できるようにしたいと思っています。
「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」
 




