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第25話 先輩後輩

クリスマスですが、特に何もなく更新します。


正門を潜って学園の中に入ると、そこには広い庭が広がっていて、何人もの生徒が雑談をしたり、設置されているベンチに座って読書をしていたりと様々な人物がいた。

エレーナに聞いた話では、今日、学園は休みのはずなのだけどな。


一年は365日で30日で一か月、それが12カ月と年末年始に5日だけ別にある。ということは以前話したと思うけど、もう少し詳しく言うとしよう。

といってもあと話していないことは、週の感覚くらいだね。


週は、6日で構成される。1週間は光で始まって、火、水、風、土と来て、闇で終わる。これは魔法の属性に依っているのだが、古くからの習わしとなっているため、実際の由来は判明していないみたいだ。


エレーナが通うパールベルナ王国のベルナ王立学園では、週の内、火、水、風、土の4日学園に通い、光、闇の2日間を休息日として扱うらしい。

中にはその休息日を1日使って課外授業を行うなど変則的な授業スタイルの場合もあるらしいのだけど、そんなことは滅多にないってさ。

また、休息日であっても外泊は特別な用事が無い限りでは認められておらず、その数にも限界点が設定されているんだとか。


エレーナが実家のグラディスバルト辺境伯領に帰ることができるのは、この休息日しかなかったので、闇の日にグランディスに帰って、光の日に学園に戻るというのをこの数週間続けていた。

いくら進級のための課題をクリアするためとは言え、すでに外泊できる限界は近く、もう数日も猶予はないと笑っていた。


さて、こうして語ったことで分かると思うが、最初に話した通り、今日は光の日のはずなので学園は休息日のはずだ。それなのにここにこれだけの数の学生がいるというのはどういうことだろうか。


僕が疑問に思いつつもエレーナの後ろをついて行くと、庭にいた学生たちの内、女生徒たちがエレーナに気が付いてこちらへとやってくる。


「先輩!帰ってらしたんですのね。」

「グラディスバルト先輩!勉強教えてください!」

「ちょっと!先輩には魔法を教えてもらいたいの!」


女生徒たちはエレーナに近づくと、各々の要望をエレーナに伝え出した。その要望はひどく利己的で、相手の都合を考えていないものだったが、エレーナはそれを微笑みつつも受け流して、自分の主張を通す。


「ハハハ、皆すまないね。私はこれから学園の事務局に行かねばならないのだ。だから、勉強も魔法も今は教えてあげることはできないんだよ。」


「そうなんですのね。」

「残念です。」

「で、では!また時間合うときに教えてくださいますか?」


「うん。また時間があるときであれば喜んで付き合おうじゃないか。それじゃあね。行こうか、ゴリ松」


「ウホ。(うん)」


華麗に女生徒たちのアタックを交わしたエレーナが僕に声を掛けて颯爽とその場を去る。どうやら彼女たちに自分が従魔を得たことを知らせることも目的のようで、僕にそのようにアイコンタクトをすると歩き出す。


僕はその後を歩きながらも、女生徒以外にもエレーナに注目していた人たちからの視線を浴びることになった。

エレーナは彼女自身が高位貴族の令嬢で、その見た目の美しさもあってか、人気があるみたいだね。その従魔ということで、僕のことを気にする人もいるみたいだ。


そんな彼らはこそこそと何かを話しているのだが、僕のゴリラ耳は地獄耳なのでその会話も全部筒抜けだ。


***


「おい!グラディスバルト先輩だ。今日もキレイだな。」

「ああ、いつ見ても美しい。」


「グラディスバルト嬢、見ないと思ったら学園の外にいたのか。」


「グラディスバルト嬢は美しいが、あの後ろの猿はなんだ?もしや従魔なのだろうか。」

「ああ、そう言えば今年の課題も従魔を得る事だったな。俺らの時はみんなすでに持ってたから忘れていたわ。」

「にしても、あの猿は無いだろう?何ができるんだか。」


***


後輩、同学年、先輩ってところだと思うけど、どの世代にもエレーナは人気がある様だ。今聞いたのは男だけだけど、女生徒にも人気があるのは先ほどのやりとりで分かると思ったからだ。


しかし、最後のやつだけは顔を覚えておいたからな。猿は無いってどういうつもりだ。猿は器用だし賢いぞ。


僕はエレーナを追いかけて横に並ぶと、その手を掴んで歩く。手をつないだ後に先ほどの男子生徒を見て、意識的に口角を挙げてやる。

すると僕の顔を見て何かを察したその先輩は、すぐに視線を逸らして別の場所へと歩いて行った。

まあ、僕が内容を聞き取れたとまでは思わなかっただろうけど、警戒はしていると思わせることはできたかな。


「ウホウホウホ(エレーナは後輩に慕われているんだねぇ。)」


「ん?そうだな。ありがたいことに頼ってもらえているよ。まあ、辺境伯という横のつながりを重視する貴族ということもあるだろうな。」


エレーナは自分の立場をしっかりと理解しているので、そういう感想になるのだろうけど、彼女たちの反応からしてもそれだけではないと思う。

エレーナの人柄が彼女たちを惹きつけていると考えても良いと思うんだ。


僕がそういうと、エレーナは少し恥ずかしそうに「そうか。」とだけ言ってそれを隠すように進める足が早くなった。

いやぁ、慕われるって指摘されると恥ずかしいよね。僕もそう言う経験あるよ。遠い昔の話だけどさ。


***


エレーナと向かった先での用事は滞りなく完了した。用事といっても、「従魔を得る」という課題の提出は学年全員が集まって行うことであるため、ここでは行わず、ここで行うのは学園に提出する従魔の登録だ。

課題とは別に登録も必要って面倒だとは思うけど、それがルールなのだとしたら従うしかないよね。この学園は王が主導した場所なのだから、場合に寄っちゃ最悪反逆を疑われてもおかしくないのだもの。


登録をする際にはやっぱり王都にいる間はゴールドバックではなく、アームコングという魔物であるとするように先生に注意された。

アームコングも従魔として契約することは珍しいけど、ゴールドバックほどじゃないので採用されたようだ。

本当はゴールドバックって言っても真偽が分からなければ、言うだけなら良いって話だったらしい。それなのにクラウド公爵子息がやらかしたせいでこんなことになって申し訳ないって言われちゃったよ。

でも、それに関しては先生は一つも悪いことは無いのに、先生という立場が頭を下げさせるのだろう。登録完了後に退出した後、エレーナがそう言っていて、確かにと納得したよ。


とりあえず、これで今日やることは終わったみたいなので、僕達はエレーナの学生寮の部屋へと戻ることになった。どうやら僕みたいな従魔は主人の部屋で一緒に暮らしても良いんだって。

もっと大きくて首輪をつけることも嫌な場合は、専用の厩舎があるらしい。


「ゴリ松は何がしたいとかあるか?」


「ウホゥ。ウホウホ(そうだねぇ。おなかがすいたかな。)」


王都邸で荷物の整理をしたり、学園に来たりとしていて食事を取っていなかったので、そろそろおなかがすいた。

本当は僕の魔法鞄の中にある、素材や熊の処理をしたかったんだけど、さすがに時間が足りないということで来週の休息日に持ち越しになった。


「それじゃあ、とりあえず、食堂で食事にしようか。」


「ウホ!(うん!)」


僕らは食堂に歩き出す。そう言えばまだ手をつないだままだったよ。その場で威嚇するために手をつないだわけだけど、案外良い物だね。


さて、何を食べれるかな。あ、もちろん、バナナは必須で。











拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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