第19話 技能
今年もあと一か月ですか。
諸事情で、明日の更新は休みになります。まあ、書き終わったあとに矛盾を見つけてしまったってだけなんですがね。
精進します。修正間に合えば更新しますけどね。
追記:なんか、間に合いました。
2人が固まっているのを尻目に僕は自分のギルドカードをひっくり返して魔力を流す。この機能は本人以外に見せないほうが良い情報を隠すために施された魔法陣を一時的に無効化するための物なんだって。
そうして表示されるのは、僕のできることだ。そこには次の様に表示されていた。
『ゴリ松
[金毛大猩猩 身体強化 土魔法]』
随分簡易的ではあるけど、こちらにあるのは僕ができる事らしい。技能、スキル、アビリティ、前世のファンタジー小説じゃ、色々と表現されていたけど、この世界でもそういうのは一応あるらしい。
ただ、これで全部ということでいいのだろうか?
そう思っていると、先程の衝撃から回復したエレーナが説明をしてくれるみたいだ。御父上はいまだに固まっているので使い物にはならないだろう。
「ゴリ松。さすがに驚いたが、説明は私がしよう。ギルドカードの裏面には、その人物ができることが上から3つ表示される。3つあるということの方が珍しいがな。」
「ウホ?ウホイウホウホ(そうなん?それなら僕もこれで全部かもね。)」
そういうとエレーナは首を振った。しかし、それはすべてを否定したというわけではなくて、それ以外の可能性を示す者だった。
「そうとは限らないぞ。中には4つ以上という者もいるし、魔物だとそもそもが違うんだ。」
「そもそも?」
「ああ、魔物の場合はゴリ松の金毛大猩猩のようにその者を示す技能がある場合が多い。その技能は効果が様々で一つじゃないことが多いんだ。例えば、ゴリ松でいえば、咆哮や衝撃派くらいはありそうだな。
そんな感じで、複数の効果を持つ技能を魔物だと種族技能、人間だと職業技能とかいうぞ。」
ふぅん。じゃあ、あのクマもそうなのかな。
「ウホウホ?(あの時の熊も?)」
「ん?あー、そうだな。あれも少し特殊なんだが...同じようなものだ。私も詳しくはないが少しだけ知っているぞ。ただ、どこまで本当かはわからない。アレを従魔にした者がいたというが真実かは分からないからな。
マーダーグリズリーは殺人熊という技能を持っているらしい。殺すことだけに特化した技能みたいだが、どうして人に限定されているんだろうな?
それで、あの時の熊はマーダーグリズリーではなくフレアグリズリーだから、少しだけ違うところがある。
フレアグリズリーはマーダーグリズリーの変異種なんだ。進化と混同されがちだが、変異種というのは元の技能を持ち合わせたまま別の特性が変わることを言う。あのクマには火魔法が発生したんだろうさ。
進化したのであれば、殺人熊が変化したはずだからな。」
なるほど。でもそうなると、僕の技能欄に土魔法があるのは変異したってことなのかな?
「その顔はどういうことか分かるぞ?これだな?」
エレーナは僕のギルドカードの土魔法の部分を指してこちらを見る。僕は頷いて、その説明を乞う。
「ゴリ松の場合はたぶんこれ以上の進化は無いということじゃないか?人間と同様に進化をしない場合は変異しないんだろう。学園でも習わないからな。今度調べてみようか。」
「ウホ。ウホ。ウホウホ。(いや。それには及ばないよ。特に困らないからね。)」
エレーナの提案はありがたいけれど、必要になるとは思えないので辞退する。どうせ知ったところで、だから何って感じだし。それなら別のことに時間を使ってもらうべきだろう。
さてと、これで僕の能力の確認はできたわけだけど、やっぱり従魔としては戦うだけって感じだな。
僕にそれ以外にあることは、種族柄なのか分からないけど賢いらしいことと土魔法だけだ。身体強化っていうのは僕が魔力強化と名付けたアレだと思うから、別の使い道なんてない。殴るのが強くなるだけだ。
そんなときに今度は御父上が気を取り直して復活する。そんな彼の興味は僕の階位にあるみたいだ。
「ゴリ松くん!君って相当に強いんだな!僕ですらランク4なのに、ゴールドバックが賢く強いっていう言い伝えは本当だったんだ。一歳の魔物でランク6なんてドラゴンくらいだよ!」
興奮気味な御父上は僕を掲げるように持ち上げると、早口でそう言った。どうやらランク6っていうのはかなり貴重みたいだ。ドラゴンなんてそうそういる魔物ではないはずだし。
御父上がランク4っていうのは辺境を守る防衛の要としての立場故だと思うけど、そうなると僕はずいぶん異質な従魔になるのだろう。
御父上の話を聞いていたエレーナが少し顔色を悪くして僕を見ている。
「それでは、父上。ゴリ松を連れ回すことはあまりよくないんじゃないですか?ドラゴンなどの従魔は王都では手続きや規制があったはずですし。」
「ああ、そうだね。でもゴリ松くんは平気だろう。小さい状態ならただの猿にしか見えないし。王都でもそういうのは結構知っているよ。まあ、賢い魔物でないと無理だけどね。」
「それなら安心ですね。」
「ああ、でも、王都、というか学園にはしっかり連絡を入れておくよ。たぶん対外的にはアームコングかブラックモンキー当たりの発表になると思うよ。」
どうやら僕は学園の中では別の魔物として生活することが必要になるかもしれない。まあ、危険ではないことを簡単に信じさせるには有効だとは思うけど。あんまり弱い魔物だと困るな。
それでエレーナにつっかるやつがいたらどうしようか。エレーナは僕のご主人様だ。そんな彼女を馬鹿にする奴は...うん、その時考えよう。
僕は小さくても力は強いし、シタビーもある。いくらでも制裁は加えられるだろう。
さて、これで僕の能力も分かったし、学園というところでの立ち回りも少し理解した。王都でだって下手を打たないでいられるだろう。
馬やスライムの様な技能は無いけれど、強いというだけで従魔の役割はこなせると考えて納得しよう。
うん、今度は何をするのかな?
「ようし、ゴリ松のギルドカードも作れたし、王都へ向けて出発しようじゃないか。」
「うっほ(そうだったね。)」
そう言えば、エレーナは学園に戻らなければならないんだったね。学校かぁ。僕が通っていたのはずいぶん昔だから、楽しみだなぁ。
まあ、僕が授業を受ける訳ではないけどね。
さ、準備しよう。
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