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第18話 ぼくのぎるどかーど

寒くなってきましたね。


家までの道のりは特にこれと言った出来事も無く、エレーナに領都の中をあれやこれやと説明してもらっているだけであっという間だった。

僕は自分で思っている以上に異世界の町というものに興味が深々の様だ。ただ領都の説明をしてもらっているだけだったのだけれど、胸の高鳴りが収まらなかったよ。まあ、別の意味でも心臓は早鐘をついたけどね。


これから家に帰ってやることをいくつかまとめておこうか。


まず一つ目は、言わずもがな、僕のできることなどを調べることだ。これは僕自身のことを把握するという意味では重要なことだけど、それ以上にエレーナの従魔としてどういうことができるのか、何だったら可能なのかということを理解するためでもある。

僕は元々は森で生活をしていた大きなゴリラだけど、今は立場ある従魔になったのだ。ご主人様の役に立てるような分野を少しは見つけなくてはならない。


え?お前そこそこ強そうじゃないかって?

そうだね。僕はこの世界の基準で考えても、ゴールドバックという稀少な魔物のようだし、稀少な分だけ強いと思う。あのクマと戦った後にエレーナも言っていたんだけど、少なくとも領都で僕と真正面から戦える人はいないってさ。

でもね、従魔ってそんな強さだけじゃだめみたいなんだよ。


僕が馬車の中から領都の街並みを見ている時に外を見ていたら、エレーナに言われたことと少しばかり違うと思ったことに気が付いたんだ。


それはね、従魔が意外に多いということだ。

領都には従魔は少ないとエレーナに聞いていたのだけれど、窓の外にはかなりの数の従魔がいた。

というのも、商人さんたちが引く馬車や別の生き物が引いている獣車はどれも従魔の様だったからだ。

馬ですら魔力を持ち、階位は低そうだけれど、飼い主との間に薄いつながりがあるみたいなんだよね。アレは正しく従魔のつながりだと思う。


そこで僕は考えたんだ。きっと、馬などは人との生活に密接過ぎて従魔にカウントされていないだけなんじゃないかって。そう思ってエレーナに聞いて見たら、他にもそう言う魔物が居た。

それはファンタジーの定番モンスター、スライムだった。


スライムは、それこそ一家に一匹というレベルで飼育されており、ゴミや排泄物を分解したり、中には洗濯物の汚れを食べたりするスライムもいて、非常に人々の役に立っているということが分かった。


つまり、ここまでで知ったすべての従魔は、人に知られてはおらずとも何かしらの役に立っているということだ。


さて、それを踏まえて僕に何ができるかということを考えるのは必要なことなのだろう。まあ、スライムにも役割があるくらいだから。僕にも何かできるだろうと思う。

それは家についてから御父上などと話して考えるとしよう。


次にすべきなのは、僕の階位の確認だと思う。これは一つ目の何ができるかっていうのにも関係するけど、ギルドカードで確認できるそれには、階位の他にも知ることができる内容があるみたいだからね。これは後で説明されるだろうさ。


そんなことを考えていると再び馬車が止まり、御者を務めていたものによって扉が開かれる。エレーナはそれに反応して僕を抱えたまま馬車を下りた。辺境伯爵家に到着したね。


***


僕とエレーナは二人で辺境伯の執務室まで直進して向かう。エレーナとは先程話したんだけど、僕がエレーナの従魔となった上でその保護者である御父上には把握してもらったほうが良いだろうってさ。

ということで目的の御父上にも僕のギルドカードを見て貰うんだ。


「父上、失礼します。」


「ああ、入ってくれ。待っていたよ。」


エレーナがドアをノックすると御父上が渋い声で入室の許可を出した。どうやら、彼も僕らを待ってくれて居たみたいだ。

執務室の中に入ると御父上が手に持っていた紙を片づけて、僕らを応接用のソファーへと案内してくれる。御父上もこちらへとやってきて座ると静かにエレーナを見る。


エレーナもその視線の意味が分かったのか、先程受け取った僕の従魔証をテーブルに取りだして全員が見えるように置いた。


「父上。これがゴリ松の従魔証です。登録の際にひと悶着在りましたが、結果としてはこうして登録を完了させることができました。」


「うん?ひと悶着って、どういうことだい?今日エレーナが従魔の登録に向かうことは伝えてあったんだけど拒否でもされたのか?」


「いえ、そういうことではなく、ゴリ松の種族を疑われたというだけのことです。」


それからエレーナが役所でのやりとりを下手な脚色など一切なく、あったままのすべてを簡潔に伝えた。

御父上としては、従魔の登録が珍しいことから面倒があってはならないと通達はしていたみたいだけど、従魔の種族を疑われたのは予想外だったんだって。


でも、どうして疑われる事態になったかの顛末を伝えたところで、その理由にも納得がいったみたいだよ。


「ふむ、そう言えば、そんな報告を王都の部下から聞いているな。どこかの公爵家の坊主が従魔として古代竜エンシェントドラゴンを従えたと一時話題になったらしい。」


「古代竜ですか。魔物といっても対話が可能な古代竜が従魔になるとは思えないですね。それが虚偽であったということでしょうか?」


「ああ、その後の展開としては実にありきたりなものだったよ。その坊主が自慢しているのを誰かが王の耳に入れた様で、それならば見てみたいとなったことで、最終的に嘘であるとバレたそうだ。」


古代竜というのは王様が興味を抱くような魔物だということみたいだけど、どうしてそんなものを従魔にしたんだと、正式に提出してしまっていたんだろう。


「ウホウホ?(どうしてそんな危ない橋を渡るようなことをしたんだろう?)」


「ん?ゴリ松くんはなんと言っているのかな?僕にはわからないからね。」


そう言えば御父上は僕の言葉が分からないんだった。


「ああ、ゴリ松はなぜそんな馬鹿な真似をしたんだと聞いているんですよ。」


「なるほどね。そりゃ、貴族としての見栄もあるだろうけど、それ以上に取り巻きに恵まれなかったみたいだ。」


御父上はさらにその裏事情を知っているみたいで、簡単に教えてくれた。


「どうも、最初は普通にただの子供の走竜リザードランナーを従魔にしたのだけど、それが少しばかり賢かったらしくて、取り巻きがその坊主に気に入られるためにうまいこと取り入ったんだって。

それでその気になって、それまでは登録すらしてなかったのに、虚偽登録してしまったんだってさ。これが飛竜程度であればこんな大ごとにはならなかったのにね。」


都合のいいことばかり言われていい気分になっちゃったんだろうか。それは、取り巻きも悪いけど、本人も十分に悪いね。


「一応その坊主はエレーナの同級生だったはずだね。名前はわかんないが。たしか、クラウド公爵家だったかな?」


「ええ、そうですね。まあ、関わりはほとんどないですが。」


エレーナは特に驚いた様子も無いので、元からそういう傾向のある人物なのかもね。クラウドって、雲って意味だけど、今その彼には暗雲が漂っているとは皮肉なもんだ。


「さあ、そんな話は良いでしょう。とりあえずゴリ松の従魔証を見ましょうか。」


「そうだね!」


「うっほ♪(そうだね♪)」


エレーナの言葉を皮切りに僕らの視線がテーブルの上の僕の従魔証に移る。さあ、見てみよう。


「では、こちらを見てくれ。」


エレーナが見せてくれると、僕達は驚いてしまう。


『ゴリ松〔1〕男

ゴールドバックRank:6 【森の賢者・辺境伯令嬢の従魔】』


Oh...すごい、ぼくのぎるどかーど


いや、種族とかは分かってたけど、やっぱりエレーナより階位は高いし、年齢は低い。というより僕って一歳だったんだね。うーん、時間が経って記憶が戻ったのかな?


まあ、いいや。ギルドカードにはもう少し機能があるらしいから、ここからにも期待だね。


うん、階位を見て御父上やエレーナが固まっているけど、僕は見ていいよね。










拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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