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第16話 爆誕!

お読みいただきありがとうございます。


広い場所を男爵が準備してくれたことで、僕達の書類に不備がないことを確かめることが可能になった。

そもそも、僕は良くわからないのだけど、従魔の種族の登録に関してはそこまでうるさくはなかったらしい。

冒険者や商人であればギルドに登録をする時に必要な手続きの都合上そうはいかないらしいけど、貴族が役所に届けるときは良くない慣習ではあっても見栄を張ることができる仕様だったらしい。

それがついに問題が起こったらしく、こうして僕達にも面倒ごとが振りかかったみたいだ。


エレーナは特に気にしていないみたいだけど、男爵は今も僕がゴールドバックという魔物だとは思っていないみたいだ。見た目が小さい猿みたいなのだからしょうがないかもしれないけれど、一応上位貴族の娘が申告したものを最初から疑ってかかるというのはいかがなものかね。


そんなことを考えていたら、役所から出て別の場所へ行くことになった。どうやら実際にゴールドバックだった時のことを考えて、広い場所を用意するらしい。聞こえてきたエレーナと男爵の会話から訓練場であることが分かる。


ただ、そこまでの道のりが少しばかり長い。


「ウホウホ、ウホ(ねえエレーナ、まだ?)」


僕は今は自分の足で歩いているため少しばかり歩みが遅く、歩幅も極端に短い。そのため、外に出てからの道のりが異常に長く感じている。


「そうか。今はゴリ松は小さかったな。どれ、私が抱っこしてやろう。」


そういうとエレーナが僕を抱えて歩き出す。僕としてはありがたいのだけれど、それを見た男爵は、さらに疑念を抱いたみたいだ。ちょっと失敗したかもね。


とにかく、そこからは楽チンで、すぐに用意された訓練場に到着する。その場にはたくさんの人がいて、剣や槍、弓などの訓練をしている様だ。冒険者や騎士が入り混じっているみたいだね。

中には手のひらや杖を前に突き出して的に何かを放っている人たちもいるが、あれが魔法なのだろう。僕は熊の魔法くらいしか見ていないけど、人が放つとあんな感じなんだね。なんて言うかしょぼい気がするよ。


僕の内心の落胆をよそに、男爵は僕達を訓練場の一角に案内してくれる。そこで、説明を開始した。


「それでは、エレーナ様の従魔には、こちらでゴールドバックであることを証明していただきます。」


「ああ、ここでか。まあ、すでに見たことがある者もいるだろうから良いが。」


その言葉に男爵が少し反応したね。やっぱり、僕が門に現れたときのことは知らなかったみたいだ。じゃあ、しょうがないけど、驚かせてしまいそうだね。


「では早速始めるとしようか。少し離れてくれ。」


「分かりました。」


ここまで行くと、さすがに男爵もちょっと真剣な表情になって指示を素直に聞く。おそらく、さっきのエレーナの言葉でもしやと思ったんだろうけど、役所として情報の共有がされていなかったのは残念だね。


「よし、ゴリ松。外すぞ?」


「ウホ(うん。)」


エレーナの問いに了承して僕は首を差し出す。そのまま首の輪っかをエレーナが取ると僕から離れて待機する。

どうやら最初の時も小さくなるのに時間がかかったように、大きくなるのも即時っていうわけじゃないみたい。


ん?でも、何か行けそうかも?


「ウホ、ウホウホウホ?(ねえ、自然に大きくなるのを待った方が良いかい?)」


僕はエレーナに、魔道具の効果を享受する方が良いのかを問う。なんとなくだけど、無理矢理大きくなることもできるような気がするんだよね。


エレーナはその言葉を聞いて、少し驚いたみたいだけど、頷いてくれた。きっと僕の体が魔道具に慣れたのかもしれない。その内自分でも大きくなったり小さくなったりできるかもね。

レベル5ゴリラはまだ所詮はレベル5。もっとレベルが上がればできるようになるかもしれない。


僕は全身に力を込めて体を押し込めている力のような物をぶち破る。


パリィン


というガラスが割れたような音が周囲に響いて、僕は枷から解放される。そして次の瞬間には、体がずんずんと大きくなり始め、エレーナと会った頃と同じ、3mくらいの身長に戻った。


爆誕!金色の毛を持つゴリラ。その名もゴールドバック・ゴリ松!!


なんちゃって。


おっとっと。身長が高くなったらバランスがとりずらくなったね。とりあえず、前傾姿勢で腕を突いておこう。


こうして僕は大きくなったのだけど、男爵が先程から静かなのが気になって下を向く。すると男爵が口を大きく開いて固まっているのが目に入ってきた。その傍らにはドヤ顔のエレーナがいる。


「ウホ、ウホウホウホ?(エレーナ、貴族の令嬢がその顔はダメだよ?)」


「ぬ?ゴリ松に言われてしまうとは。そこまでひどい顔をしていたか?気をつけよう。」


エレーナは顔の筋肉を動かすようにして揉むと、今度は男爵の方を向き直し、その様子を窺う。


「男爵よ。確認してくれて構わんぞ?」


「は、はい!ただいま!」


エレーナとしては勤めて優しく言ったつもりなのだと思うけど、男爵はそれ見たことかと言われたようにすぐに行動を起こした。僕の周りをグルグルと回りながら何かを手元の紙に記入していく。

きっと従魔の確認事項何だろうね。


何周かしているけど、毎回、背中の金色の毛を見るたびに何度も手元の紙に追加で何かを書いているから、何十チェックをしているんだろうね。

まあ、僕の存在が認められるならなんでもいいか。


「はい、終わりました。」


そうして男爵が確認が終了したのか紙を懐に仕舞って、エレーナに向き直る。どうやら問題は無かったみたいだ。僕は男爵が次の言葉を口にする前に首に輪っかを装着して今度は自分の存在を小さくするように意識をする。

それだけで、僕の体はあのぬいぐるみサイズに逆もどりだ。慣れてきたね。


男爵はその光景を見てまだ信じられないと言った表情だが、すぐに取り繕ってエレーナに謝罪する。


「この度は確認のためとは言え、お手数おかけして申し訳ありません。エレーナ様の従魔としてこちらのゴリ松様を登録させていただきます。

つきましては、階位の確認等ございますので、先程の応接間にご足労願えますか?」


「うむ、謝罪は必要ない。元はと言えば学園の者がしでかしたのが原因のようだしな。まさか規則が変わっているとは思わなかった私の確認不足もある。気にするな。

それじゃあ、行こうか。私もゴリ松の階位は気になっていたんだ。」


階位という聞き馴染みのない言葉を聞いて、不思議に思うけど、どうやら従魔としてはこれで登録がされたみたいだ。まだ何かをする必要があるみたいだけどね。


僕たちは先ほどの部屋まで移動を開始する。もう一度僕は抱えられての移動だ。


次は何をするんだろうね。











拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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