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第13話 領主

お読みいただきありがとうございます。

初評価、ブックマークありがとうございます。書きたくなった物に点数が付くのはうれしいです。


領都に入ってからは話が早かった。どうやらエレーナは僕との待ち合わせのことは家族に伝えてあったみたいで、迎えまでよこしてもらっていた。


先に入った隊長さんたちには悪いが、これくらいのささやかな感じがいいよね。もちろん彼らは魔物を警戒していたのだから無理な相談だろうけどさ。


僕にとっては初めての人の町だから見る物すべてが珍しい。そりゃ前世と比べれば文明のレベルで言えば下なわけだけど、そもそも僕みたいなのが賢者って言われている時点でお察しな文明レベルだから、比べるつもりはないよ。


さあ、領主が待つ館へと行くらしいから、大人しく抱かれているとしようか。


そうやって、ゆっくりすることを決めた僕にエレーナが話しかけてくるので、問答を始める。ミーシャは僕を運ぶのに夢中で話しかけるほどの余裕はないみたいだね。そう、僕は今もモフられているんだよ。


「なあ、ゴリ松はずいぶん落ち着いているけど、町に入るのは初めてではないのか?もしかして、誰かの従魔だったとか?」


「ウホ、ウホ?ウホ(いいや、そんなことは無いよ?僕は知っているからね。)」


「そうか。まあ、いいか。今はこうして私の相棒なんだからな。嬉しいよ。」


「ウホ(そうだね。)」


相棒か。それは良いね。僕にはやたらと無理難題を押し付けてくる上司や仕事を押し付けてくるような使えない部下しかいなかったからね。相棒とは違う。


うん、いいね、僕もエレーナの相棒で嬉しいよ。


でも、従魔をこういう扱いにする人って少ないだろうね。その点でも言いご主人様に出会えたってことだろう。エレーナは美人だし。


あれ?


「ウホウホウホ?(僕の様に大きな従魔は小さくなるためにこれが必要だけど、他の小さい子にも必要なの?)」


僕は自分の首に巻かれた赤いバンダナ風の首輪をつつきながらエレーナに尋ねる。


「ん?ああ、そのことか。普通は無いぞ?ゴリ松みたいに大きな従魔用だな。契約には必要なかっただろう?」


エレーナに言われて、それもそっかと思い直す。エレーナと契約が成ってつながりが出来たのは熊との喧嘩の最中だ。道具を必要としてない。

じゃあ、どうやって従魔を見分けるんだろう?


「ウホ、ウホ?(じゃあ、どうやって見分けるの?)」


「それはな。ここを見るんだよ。」


エレーナはそう言って左掌をこちらに見せてくれた。それが何を意味するのかはすぐにわかった。意味は分からないけれど、そこには二重丸に二本角が生えたようなマークがあった。


「うほ?(これは?)」


「これは従魔と契約している証だ。ほら、自分の手のひらを見てみろ。」


そう言われて僕は自分の掌を見るとそこにもエレーナにあるのと同じマークが存在していた。

へぇ、僕にもあるのか。これを見せれば従魔であると証明できるんだね。


「基本的に契約者は従魔と離れることはないが、従魔を索敵に出すこともあるからな。そう言うときのために従魔には人に会ったら、掌を見せる訓練をするんだ。ゴリ松には必要ないがな。」


エレーナはだから賢い従魔を求めたってことなんだろう。しかし、掌っていうのは僕みたいな手があるタイプだけだろうけど、どういう仕組み何だろうね?

まあいいや、こういう話をしているうちに目的地に着いたみたいだ。


「さあ、ここが私の実家、グラディスバルト辺境伯家の屋敷だ。ようこそ。」


「ゴリ松ちゃん、いらっしゃいませ!」


2人が歓迎の言葉をくれて中へと案内してくれる。うーん。このまま行っても良いけど、何かが待ち構えているんだよね。


僕は警戒していない二人を横目に屋敷の玄関扉の先にいる人物に意識を割いて警戒する。2人があまりに無警戒なのは怖いが、どうしてだろう?


ガチャリとドアノブの音がして扉が開くと、中にいた人物が飛び出してくる。僕としてはこれは予期していたので、ミーシャの腕から飛び出してその人物を後ろ手に取り押さえる。レベル5ゴリラの力があれば余裕で制圧できる。


「うほ!」

「ぐおぉお」


苦悶の声を上げるその人物はまだ若い青年で、イケメンな顔にしっかりと筋肉が付いた身体を持っていた。自分でやっといてアレだが、こんないかにも武闘派を制圧できる、僕の力ってどうなっているんだろうね。


「父上。何をしておられるのですか?」


「お父さん!何してるの?」


2人はずいぶんあっさりとした対応をしているが、この人物はまさかの御父上様であった。予想できたなぁ、失敗失敗。

僕は彼を放して、ミーシャのもとへと戻る。


御父上は後ろ手にされたことで少々痛そうにしていたが、立ちあがって二人を抱きしめる。先ほどもそうしたかったんだろうけど、貴族の当主ってこんなに奔放なのかな?


「おかえり~我が最愛の娘よ~。一週間ぶりの実家だっていうのに学園からそのまま賢者の森に行ったっていうから心配したよ。」


「父上。大げさです。私は先週の内に伝えてあったでしょう?従魔を得に行くのですから、一人で行くと。この間は護衛は許しましたが、もう一人で大丈夫なんです!」


「だってさ~」


どうやら御父上は娘を溺愛しているらしい。僕みたいなこんなにインパクトのあるぬいぐるみみたいなゴリラに取り押さえられたのに、娘の方だけに関心があるのだから相当だよね。


そうして待つこと数分。エレーナの後にミーシャと話すとようやく僕の番のようだ。何を言われるのかな。


「森の賢者殿、本日は我が屋敷にお越しくださり歓迎いたします。つきましてはまずは屋敷の中へとどうぞ。」


先程までの娘に対してデレッとした姿はどこへやら、僕には貴族然とした対応をしてくるあたりはさすがに当主って感じだね。

僕はその『森の賢者』っていうのがよくわからないのだけど、歓迎してくれるならありがたい。遠慮なく入らせてもらう。


じゃあ、行こう。と足を出そうとして、次に出した足は地面に着くことはなかった。またミーシャに抱えられたからだ。このまま行くんだね。


「あたしが連れてったげる!」


「ウホ(ありがと)」


まあ一応お礼を言って、流される。どうせ抵抗しても意味ないからね。ミーシャは見た目はお嬢様だけど、結構頑固そうだからさ。


御父上はその僕の姿に悔しそうに項垂れているけど、どういう感情何だろうね、それは。人形扱いが羨ましいなんておかしいよ。


「ゴリ松、さあ、まずは父上の執務室でいいだろう。話をするにはあそこが最適だ。」


エレーナの案内で屋敷の中を進む。今度の目的地は執務室らしい。御父上の部屋なのに勝手に決められているあたり、御父上の立場が弱いことが理解できるな。

まあ、ご母堂はすでに亡くなられているみたいだから、父親として構いすぎた感じかな。それはそれで素敵なお父さんだね。


僕はミーシャに抱えられながらも御父上のことを考えてクスッと笑う。


そんな娘思いの良い御父上は、僕が従魔になったことを許してくれるかな。これでもエレーナを守れるくらいは強いつもりなんだけど。

あと、バナナはくれないかなぁ。








拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


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