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第11話 領都グランディス

初の土日投稿です。今はこれでよろしくお願いします。


ブックマークありがとうございます。


僕が故郷の森を旅立ってから1時間。森の外に広がる平原を冒険者に見られながらも疾走して見えてきたのが、僕とエレーナの目的地であるグラディスバルト辺境伯領最大の都市、領都グランディスらしい。今は広大な畑の中を歩行者に気をつけて歩いている。


僕の背中に捕まって指示を出していたエレーナが少しの疲労を感じさせる声で、領都のことを教えてくれる。


「あそこが、領都グランディスだ。主な産業はこの広い土地を開墾して作った巨大な農地と牧畜になる。他にも特色としてはダンジョンを有するおかげで冒険者が多かったり、隣国と接するために我が家の騎士団にも実力者が多いと知れ渡っていたりする。」


「ホゥ。ウホウホ?(へー。あれ?ダンジョン?)」


僕はエレーナの話を聞いて一つ疑問に思った。産業は別に今まで走って歩いてきた光景を見れば納得だし、辺境伯という地位がどういうものか小説などで想像できるから騎士団が強いのも分かる。

でもダンジョンがあるのなら不思議に思うんだ。なんで僕が住んでいた森に冒険者が来ていたんだろうって。


冒険者ってダンジョンに行くもんじゃないの?

僕の疑問にはエレーナが答えてくれる。考えていることが筒抜けなのも悪いことばかりではないね。


「確かに冒険者はダンジョンの探索も仕事の内だけど、それ以上に魔物の討伐や植物の採取などで、お金を稼ぐのだ。魔物が居るのはダンジョンだけじゃないさ。賢者の森だってそうだろう?冒険者は魔物が居るところに行くんだからね。」


「ウホ。(うん)」


こんな話をしながら畑のど真ん中を進んで行くと先程まで見えていた外壁が目の前に現れる。その高さは僕の身長よりも優に高く倍以上あった。(僕の4足時身長は2.5m)

僕とエレーナは街の中に入るためにここまで来たのだから、そのまま門へと向かいたい。でも、生憎だけど僕は間違いなくモンスターだ。この世界では魔物って言うみたいだけど、どっちでもいいよね。

とにかく僕みたいに大きな魔物がいきなり来たら驚くのが普通だろうね。今も出入り口だろう場所からたくさん人が出てきているもん。

エレーナは心配している僕に大丈夫だと言ったけど、この様な騒ぎになってしまって僕は本当に大丈夫か余計に心配になってしまうよ。


「ウホ(大丈夫かなぁ。)」


「安心しろ、ゴリ松。私がいるんだから大丈夫さ。」


僕としてはそれが一番不安なんだよなぁ。実はここに来るまでにエレーナの運び方を変えたんだけど、背負う形じゃなくて、森を出るときにしたように抱っこする形だ。

エレーナの指示だったんだけど、僕は正直失敗したかなと思う。


だって、今の僕達、誘拐犯と被害者みたいに見えてしまわないかな?


「そうか?私はそうは思わないがな。」


エレーナののんきな感想は良いとして、今は出てきた人たちが何のための人員かが大切だよね。

少し耳を澄ませて聞いて見よう。


***


「全員急いで外壁前に陣を構えろ。敵は正体不明の魔物。コング系統と思われるが、あの系統の魔物は賢い。油断するな!」


「しかし、隊長。奴は人質を取っています。このまま突撃はできないのではないでしょうか!」


「そうだ!やつは小賢しくもお嬢様を人質にとっている!とにかく今はやつを刺激しないようにするのだ!」


「ハッ!〔一同〕」


***


やっぱり予想していた通りだよ!?そうだよね。そう見えるよね。あー、失敗したよ。


「ウホ(どうしよう)」


「ハハハ、すまないな。まさかそんなことになるとは。よし、まずは私が言って聞かせよう。」


僕が聞こえた内容をエレーナに伝えると、さも想定してなかったというように軽く謝罪し、自分が説得すると言い出した。


でもさ。ここでエレーナを引き渡したら、そのまま僕が狙われない?え?僕なら大丈夫だろって?まあ、たぶんそうだけど。

でも、僕がどれだけ強いか分からないし、不安だなぁ。


とはいえ、それ以外に手段が無いのは事実。それに賭けるしかないか。よし、それじゃあ、言って来てよ。僕はここでおとなしくしているからさ。


「任せてくれ。」


エレーナは意気揚々と僕から降りて、陣形を整えつつある集団の方へと歩いて行く。その様は堂々としたものだが、どこか抜けたところを知った僕には、不安を煽る以外の何物でもなかった。


そして数分後。僕の予想は裏切られ、エレーナは戻ってきて僕を中に入れる許可を取ったと言う。聞き耳を立てていた僕にはすべて聞こえたのだけど、言わぬが花だよね。


ちなみにどんなことが起きたのか知りたいかい?しょうがないなぁ。


***


「みんな!私はエレーナ=グラディスバルトだ!賢者の森から帰還した。私はこの通り無事である。迎撃隊形を解いてくれ。」


「姫様!ご無事でしたか!あのゴリラもさすがに騎士団を前にしてビビったのでしょうな!ささっ、御屋形様がお待ちでございます。行きましょうぞ。


全軍、目標あのゴリラ、構え、と「ちょっと待ってくれ!あいつは悪い魔物じゃないんだ!だから討伐はやめてくれ。ほら、アレはゴールドバックだ!最近噂の森の賢者だ!」つ.........なんですと?」


「だから、あれは討伐するなと言ったんだ!」


「しかし、アレは魔物、討伐せねばなりますまい。」


「だから、悪い魔物じゃないって言ってるじゃないか。」


「姫様!」


「隊長!」


「姫様!」


「隊長!」


こんな感じで僕を討伐するしないで口論しだしたんだ。それを見て周りの騎士も困った雰囲気だし、当事者である僕も困ったよ。

そんなときに救世主が来たんだ。


「こら、何を口論してるの!?あのゴリラさんはあたしたちを助けてくれたて話をしたでしょ!

お姉ちゃんもゴリ松ちゃんがそうだって伝えなきゃ!」


「あれがそうなのですか?」


「うっ、そうだな。すまない。」


そう、ミーシャちゃん(8歳)だ。彼女のおかげで彼らの口論は終了したし、僕のことも一瞬で説明された。

まあ、下手に攻撃されなくてよかったよ。


***


こうして僕のやってもいない罪は許されたんだけど、その後エレーナは僕の方へと戻ってきて自信満々に言った。「許可を取ったぞ」ってね。


自信満々でその実、妹が助けてくれたとは言えないよね。まあ、それはそれで仲の良い姉妹だと僕は思うけど。

とにかく僕が入れることになったので、先ほど同様にエレーナを抱えて歩き出す。今度はずいぶん好意的な視線だ。さっきまでの警戒心むき出しの視線よりは心地いい。


歩いて指示を出していた隊長さんとミーシャちゃんの前に着くと僕はエレーナを下ろす。

そして、エレーナが「フフン、どうだ、大人しく賢いだろ!」とどうでもいいことで胸を張っている隙に、僕は森から持ってきた枝ペンを取りだして文字を書こうと地面を見下ろす。

しかし、不運なことにここからは石畳が引かれているため、文字を書くことができなかった。でも諦める僕じゃない。それならそれでできることがある。

僕は近くに在った大きめの石を手に取って力を入れる。無いなら作ればいい。ゴリラの腕力で石をすりつぶして砂にする。これを広げれば立派なメモ帳だ。


イザ文字を、と思った時にふと視線を感じて見回すとその場の全員の視線が僕に集まっていた。石を潰す音が大きすぎたかな?

まあ、いいや。


僕は文字を書き始める。あて先はミーシャちゃんだ。

カリカリカリ


文字を書き終わるとミーシャちゃんの肩をトントンと叩いて文字を見せる。だけど、見せてから気が付いた。まだ文字は読めないんだったっけ?


でも、

「あ、ゴリ松ちゃん。これあたしに?えっと『ミーシャ、感謝』ね!いーえ、どういたしまして。うふふ、あたしも少しだけ文字を読めるようになったの!驚いた?

ゴリ松ちゃんもあたしの名前覚えてくれたんだねぇ。ありがとう。」


「ウホ(こちらこそ。)」


「ゴリ松はこちらこそありがとうって。良かったなミーシャ」


「うん」


エレーナがナチュラルに僕の言葉をミーシャに通訳をしてくれた。まあ、僕が聞こえてたことに気が付いて耳を真っ赤にしてだけど。


「と、とにかくこれで、領都に入っても良いだろう?いやとは言わせないぞ。」


「わかりましたよ。でも姫様。この図体でどうやって通りを行くつもりですか?さすがに民をどかすわけにはいきませんよ?」


それは確かに僕も思った。騎士があれだけいて、これほどの外壁を持つ都市が賑わっていないわけがない。僕はどこをどう通ればいいんだろうか。


「ああ、心配するな。私はそもそも学園からここに来るのに何をしに来たと思う?」


「いえ、聞かされてませんが。」


「従魔だよね!お姉ちゃん。」


そう言えばそうだな。僕がそれなんだけど、それなら、

「ウホウホ(最初に僕がエレーナの従魔って言えばいいんじゃないの?)」


「フッ、冒険者ならいるかもしれんが、この辺境の地で魔導士が従魔を所有することなど知っている者はいないだろう。従魔という物すら知らない可能性があるぞ。

現にここまで話して隊長も理解していない。説明しても分からなかったさ。」


「ウホ(なるほど)」


確かにそれなら納得だ。それで良いのかな。しかし、もしや魔導士って数が少ないのか?

魔導士ってのは2属性以上を操る魔法使いの名称らしいと先程聞いた。魔法使いが多くて魔導士は少ないってことっぽいな。


で、それが何に繫がるんだろう。


「これだ。」


そう言ってエレーナが腰のポーチからとりだしたのは何かの首輪?腕輪?とにかく輪っかだ。どういうことかエレーナの魔力が込められていて、近くに魔素がまとわりついている。大きさは結構大きい。


「これはなあに?お姉ちゃん。」


「これはな、従魔に着ける魔道具なんだ。」


エレーナはドヤ顔で言うが、これから俺はそんな魔道具をつけられるのか!?








拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


と思っていただけたら、ブックマーク,評価、感想をいただけると励みになります.誤字報告もありがたいです。


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