表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/223

第99話 賢者の森17

先週はお休みでした。


騎士の駐屯地では騎士たちが夕食の準備をしていた。ボクが修理した井戸も順調に動いているみたいで安心したよ。

ただ、少し気になるところがある。それはボクが修理した井戸の周りに何かが置いてあることだ。食べ物だったり剣だったり、どうしたんだろうか。

ただまぁ、とりあえずはエレーナから預かった御父上あての手紙を代表者に渡しておこうかな。後回しにしていいことではないし、主目的を果たしてからでもボクの疑問の解消はできるからね。


「ウホ!」


ボクは先ほど一緒にエレーナの元まで向かった騎士を探して声をかける。名前は何だったかな?できることなら知り合いが良いけど、聞いていないかもね。

彼もボクの声で存在に気づいて周囲をきょろきょろと見まわすが、きっとボクが小さいことを失念しているのだろうね。その高さで周囲を見回してもそりゃ見つからないよ。


「むっ?気配は感じるのに見当たらない。ゴリ松殿は不思議な魔法が使えるのか?」


とんでもない勘違いだけど、面白い。でも、時間はあまり消費してはならないから早速本題に移るためにも彼にはこちらに気が付いてもらうとしよう。ボクもまだ夕食を取っていないし、警戒の意味でも早く戻らないとさ。

ボクは騎士のズボンをくいっと引っ張って存在をアピールする。そして地面に文字を書いて挨拶をした。


「ウホ〔やぁ。さっきぶりだね。また用事があってきたよ。〕」


「お、おお!ゴリ松殿。そう言えば小さいのでしたな。モンストル男爵が到着した旨は周知しておりますぞ。また、グランディスからの報告との差異から直接ご来訪されたと判断して到着を報告しました。」


この騎士は存外に優秀だったみたいだね。きっと『近日中にモンストル男爵が賢者の森を訪れてエレーナに協力する』とかそんな感じの話だったのだろうけど、すでにいることでグランディスにいる辺境伯に合わないで、直接こちらに来たのだと判断したのは流石だよ。


「ウホ〔それは手際が良いね。エレーナから預かった手紙にわざわざそのことを追加で記載する意味はなかったね。〕」


「いやいや、そんなことはないですぞ。お嬢様からの報告の方が我らのものより信頼度が高いですからな。まぁ、戦時中などは話が変わりますがね。それよりも追加ということはそれ以外に何かあるのでしょうか?・・・いや、これは差し出口だったかもしれません。」


うん、やっぱり賢いね。ボクが口を滑らせたっていうのもあるけど、よく気が付ける者だ。彼はおそらく、ここの責任者だと思うんだけど、名前を聞いておこうかな。


「ウホ〔大丈夫だよ。多分すぐに御父上から指示が出るし、知っておいた方が良いと思う。あと、君はなんて名前なんだい?〕」


「ああ、そうですね。自己紹介がまだでした。私はグラディスバルト辺境伯軍十人長のマルクスと申します。若輩者ですがどうぞよろしくお願いいたします。」


マルクスは年齢で言えばまだ20代も前半だろう。身のこなしなどから判断して強さはそこそこ、階位も3程度だろうけど、魔法使いでもない人間がこの若さでこの階位というのが珍しいということは、学園で本を読んだりして知っている。やはり優秀なんだろうね。


名前も分かったところで、ボクは先ほどの話を要約して話す。軍団長の捕獲や魔物刑の犯罪者がゴブリンにどのように活用されてしまっているか、エレーナが御父上にどのような要請をするかなどだ。


〔確定していないゴブリンの王の討伐に関する作戦までは話せないけど、だいたいこんなところかな。きっと戦闘になればボクだけじゃどうにもならないし、マルクス殿たちにも指示があると思うのでその時に聞いてね。〕


「はい。しかし、3万ですか・・・。ゴブリンの数はそこまで膨大に増えているとは。となれば、調査が主任務の我らだけでは役不足ですな。きっと上司が来ることになるでしょう。少しでも強くなるために訓練に力を入れねば。」


マルクス殿はそう言って気合を入れる。彼も部下を10人抱えていて、そのうちの数人を連れてきているわけだが、部下には生き残るためにも頑張ってもらいたい。ゴブリンと言えども進化個体が数千といるわけだし油断はできないからね。


〔とりあえず、手紙は渡したよ。御父上に届けてね。〕


「もちろんです。すぐにでも伝令を走らせて届けさせます。」


よし、これでボクの目的は達成だ。それじゃあ、気になったことを聞こうかな。


〔ところでさ、あそこの井戸にある剣とか食べ物とかはどういう意味なの?あそこで誰かが死んだって訳では無いよね?〕


「え?あぁ。そんなわけないですよ。クククッ第一どうしてそんなことをするんです?死人には剣も食料も不要です。」


〔でも死んだら花を手向けるでしょ?〕


「葬儀であればそういうことをしますが、事故であれ殺人であれ、現場に捧げるようなことはありません。きりがないですから。あれはゲン担ぎの一種ですよ。」


マルクス殿に笑われてしまった。やっぱりこの世界での命は軽い。そこかしこで人が死んでいたらそこら中に物をささげなくてはならないということみたいだ。確かに言われればそうなんだろうけどね。

それで、あの行為はゲン担ぎなんだそうだけど、それって何を対象にしているんだろうか。あそこにはボクが修理するまでは何もなかったんだけど。


〔ゲン担ぎ?それってどういうことなんだい?〕


「ああ、ゴリ松殿は理解できないかもしれないですが、アレは強者に加護を貰いたいときに行うゲン担ぎです。英雄などが訪れた村や施設に訪れるのと同じように自分が食べる食料や武器にその加護を授かろうという感じですね。」


なるほど。ボクが理解できるように言うならば、パワースポットって感じかな?それなら理解できる。神頼みとかに近いけど、魔法もあるこの世界でなら意味があるのかもしれない。


〔ふぅん。それは確かにゲン担ぎだね。でもあれはただの井戸じゃない?〕


「いや、あそこには圧倒的な強者であろう方が関わっているじゃないですか。」


「ウホ?」


ボクは意味が分からず首を傾げる。


「ゴリ松殿ですよ。部下たちは、あの魔法に相当な衝撃をうけたみたいですよ。我らが目にする魔法よりも繊細で力強いって。」


彼らの崇める対象はボクだったみたいだ。

うん、びっくり。









拙作を読んでいただきありがとうございます.


「面白い」「続きが読みたい」「人外モノっていいよねb」


と思っていただけたら、ブックマーク,評価、感想をいただけると励みになります.誤字報告もありがたいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ