第97話 大喰らい
「さてさて、あとはこの暴れん坊をどう大人しくするかですが」
相変わらず宝箱はカタカタと身体を揺らして蔦を食い破る。
一向に大人しくなる気配がなかった。重量もあり持ち運びは難しい。
「やんちゃですね~」
「……ご主人様に頼る他ないのでしょうか?」
「うーむ、調べたところ☆は4.7【擬人化】には少し足りません。この状態で対処するしかなさそうです」
「あいぎすさんを返してください!」
エルが宝箱をくすぐる。更にカタカタと震え、その度合いが強まる。
「わわわっ」
「あらら、拘束が間に合いません~」
ついにはエルを押し返し、ユグの蔦の拘束からも逃れた。
かなりのパワーを秘めている。転移能力だけではなさそうだ。
「ゴゴゴゴゴゴ」
口を大きく開けて唸る宝箱。周囲の景色が歪んでいく。
コクエンの手元にあったロストワイバーンの魔石が消失していた。
「参謀、魔石が盗まれてしまいました……。こんなの防ぎようがありませんよ……!」
「あらあら。鞄の中身も空になっています。いつの間に。神業ですね~」
次々と手持ちのアイテムを盗まれていく。もはや天災だ。
それでも満足できないのか、獲物を求めて身体を跳ねさせる。
「むっ……いけません。エルエル、離れてください!」
ライブラの忠告と同時に宝箱が飛び掛かってくる。
「わぁあああああ! 真っ暗です! 何も見えません!!」
「ひえっ……エルさんの首がっ!」
宝箱が直接エルの頭を挟み込んだ。中は収納空間に繋がっているらしく。
エルの頭が消失して、傍から見ると首を切断されているように映っている。
「どうやら転移は生物にも作用するようです……中々に凶悪な能力で」
「で、では、この子がその気になれば、私めも食べられてしまうのでしょうか……?」
「食べるというよりかは保存に近いですね……元は宝箱ですので」
エルだから無事なのか、それとも生命を奪う力まではないのか。
お試しするのはあまりに危険だ。全員がレアリティで劣っている。
最悪ここで捕まれば、抜け出す事ができなくなる。
現状レアリティが上回り対応できるのはティアマトのみ。
「この子にその気はまったくなさそうですけどね~」
宝箱はエルが蓄えている龍の魔力水を狙って吸い込んでいた。
エルは抵抗しているが、為す術がなく無理やり魔力を奪われる。
「手始めに魔石を狙ったあたり、強い魔力に反応しているようです。アイテムを奪うのは宝箱としての本能。魔力は宝箱としての食事なのでしょう。エルエルは先程ユグちゃんに龍の魔力水を譲渡していましたので、次の獲物として狙われましたね」
「トロンさんに似て食いしん坊です……!」
「という事は、満腹になれば大人しくなるのでは~? トロン様も食事のあとはいつも眠そうにされていますので~」
「試してみる価値はありそうです……エルエル、そのまま魔力を与え続けてください!」
「わああああああ」
気が付けばエルの上半身も消滅していた。
そのまま直接龍の魔力水を与え続けている。
「足りません、まだ足りません~! 底なしです~!」
「コクエンちゃんとユグちゃんも援護を!」
「了解です!」
「は~い!」
三人が魔力を放出して宝箱に食べさせていく。
想定外の食事量に宝箱は大人しくなっていく。
「わああああ、やっと見つけました!!」
そしてエルが、その隙に何かを引っ張り上げる。
地面を転がったのは虹色に輝く【アイギスの神盾】。
「おおっ、噛まれながら助け出すだなんて流石はエルエルです。ただではやられませんね!」
「えへへ」
相変わらず首から先は消えているが、エルは嬉しそうに笑う。
「ここまで来れば私様たちの勝ちです。アイちゃんの神話級の魔力をお借りしましょう!」
ライブラが盾に触れて、スキルリンクを発動させた。
疑似的に神話級に到達したエルたちが宝箱に餌を渡す。
「ゴゴゴ……ゴ」
許容量を超える魔力を与えられ、満足した宝箱はコテンと倒れる。
すると簡単に持ち運べるだけの重さになる。質量すらも自在のようだ。
「ふぅ……エルの龍の魔力水もカラカラです……」
「フロアボスよりも数倍厄介でしたね……」
「かなりの問題児となる気がしますが、ロロアさんでしたらきっと上手く手懐けてくださる事でしょう」
「探索部隊任務完了です~」
次の更新は12/5です




