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第94話 ミミック

「キュイイイイイイイイイイイイイイ」


 左右に大きく翼を広げた翼竜が峡谷の上空を巡回していた。

 最初に見つけたのはトロンで、狙撃手の目で雷光弾を連発する。


「ばん、ばんばん」


「ギュイイイイイイイイイイ!?」


 飛膜を傷付け飛行能力を低下させていく。徐々に高度が下がる。

 反撃の風魔法が四方から殺到するも、ティアマトさんは抜けない。


 翼竜の風は石の建物すら吹き飛ばす威力。だけど直前で相殺されていた。


「……ふむ、涼しい風だな。主人よ、右に曲がってもらえるか」


「右だね。よっと!」


 僕は指示通りに運搬ゴーレムを動かす。ガタガタと車体が揺れた。

 

 フロアボス――ロストワイバーンの移動経路に回り込んでいく。

 相手は攻撃をことごとく無効化されて、慌てて逃げようとしていた。


「のがさない」


 雷光弾が破裂して散弾となりロストワイバーンの片目を潰した。 

 ティアマトさんの操る風に乗せて誘導する弾は全弾必中を約束される。 


「よし、このまま一気に撃ち落とそう。探索部隊も安全になるよ!」


「つぎで、とどめ」


 ロストワイバーンに向けてトロンは背中の長筒、砲塔を傾ける。

 超絶威力の雷光砲撃だ。衝撃に備えて僕は運搬ゴーレムを一時停止。


「逃がしはしない」


 ティアマトさんが指を鳴らすと、ロストワイバーンの周囲の風が止まる。

 移動を阻害されて空中に浮かぶ的となったボスに、眩い光が殺到していく。


 そして――――不可解な現象が起こった。


「なに……?」


「……あれ」


「砲撃が消えた……!?」


 確実に息の根を止める必殺の一撃が、消滅していたんだ。

 段階的ではなく瞬間的に。僕たち全員が見ている状況化で。


「むっ、主人。あれを見ろ、翼竜の背中に宝箱があるぞ」


「本当だ。しかも動いている!」


 ロストワイバーンの不安定な背中で宝箱が跳ねている。

 その口の中に光が放出されていた。トロンの魔力に近い色。


「みみっく……」


「どうやらアレが我らの求めている盗人の正体らしい」


「砲撃すらも盗むんだ……すごいね」


 ミミックは宝箱の形をしたゴーレムに近い魔導生物で。

 アイテムかといわれると怪しいけど。非常に珍しい存在だ。


 現存するものはすべて数千年前の遺物で、高位の能力を持つ。


「……この魔力の歪み。主人よ気を付けろ、奴に狙われている!」


 ティアマトさんが僕の身体を包み込む。周囲の景色に歪みが生じた。


「なっ、マズいよ、アイギスが盗られた!」


 僕の手元から【アイギスの神盾】が失われている。

 触れられた形跡もない。景色の中に溶けて消えてしまった。


「短距離の空間転移だ。あの宝箱(ミミック)は自身ではなく他者に付与できるのか。盾すらも貫通する厄介な能力だぞ」


 宝箱の口の中にアイギスが吸い込まれていく。

 神話級の盾が下位のアイテムに破壊される事はない。

 つまり体内にはアイテムを入れる収納空間があるんだ。


「トロン、攻撃は一時中止だよ! このままだと宝箱(ミミック)がアイギスごと渓谷に落ちてしまう!」


 もしもこの状態で仮に宝箱(ミミック)を破壊してしまった場合。

 アイギスがどこに飛ばされるのかわかったものじゃない。


「わかた」


 ロストワイバーンはティアマトさんの脅威に怯えて背中を向ける。

 絶好の機会だけど、宝箱(ミミック)もセットだと下手に攻撃ができない。


「……霧の中に下りていったね。谷底に巣があるのかもしれない。ゴーレムじゃ入れないよ」


「ここから先は探索部隊に任せるしかないな。手負いのワイバーンはもはや障害にならない。コクエン一人でも倒せるはずだ」


宝箱(ミミック)の方が問題だね……空間転移がどの範囲、対象まで作用するのか」


 あくまでアイギスが狙われたのは、気まぐれなのかもしれない。

 人物にまで効果があるなら、それはただの人間である僕も危うい。


「その辺りはライブラが何とかしてくれるだろう。奴はアレでも【七神宝】の一角だ」


「とても信頼しているんですね」


「ふんっ、それくらいしか能がない小妖精なのだ。ここで活躍しなければただのお荷物だ」


 照れているのを誤魔化すようにティアマトさんが椅子に座る。

 トロンは隣で大きな欠伸をしていた。仲間を信頼している証拠だ。


 僕も彼女たちを見習って、慌てずにどっしり構えていないと。

 奪われたアイギスは、コクエンたちが取り返してくれるはずだ。

次の更新は11/29です

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