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第92話 狙撃手の目

 探索部隊として抜擢されたコクエン、ユグ、エルは渓谷を下っていく。

 霧深い細道で足を踏み外さないように、細心の注意を払って――――


「わーーーい!」


 ただしエルは例外だった。不死身の彼女は高所の恐怖を知らない。

 自ら危険な先頭を走りルート開発に余念がない。酷い時は普通に落ちた。


「わあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「ひっ、エルさんがまた落下しちゃいました!」


 コクエンの目の前でエルの小さな身体が消えてしまう。

 一緒に蔦も落ちていく。崖の途中で逆さまになって吊るされた。


「わたくしの命綱がありますので、大丈夫ですよ~」


「命綱があったところで、崖で身体の表面が削られるのですが……見せられない状態ですよ」


 相談役としてついてきたライブラは、

 子供のお使いを見守る親のような面持ちだった。


「想像するだけで寒気がします……! 戦いの中ではなく、不注意で破損するなんて。武器としては最悪な最期です……」


 たとえ元アイテムの肉体だとはいえ、高所からの衝撃は耐え難い。

 高所を恐れるのは人間だけではなく。【擬人化】した彼女らも同じ。


「高いです~! ぶら~んぶら~ん」


 一方エルは呑気に左右に揺れて空中ブランコを楽しんでいた。


「エル様は崖を削る方ですね~」


 一同はエルを引っ張りあげて一息つく。目の前の道が崩れていた。

 こうして危険な場所はひと通り探索して潰していく。また別の道へ。


「ライブラ様、例の盗人を捕らえる手段はどういたします~?」


 探索部隊の最終目標は、自立する魔法アイテムの確保だった。

 しかし相手の能力の詳細は不明であり、その姿も目視されていない。


 盗みを働いた冒険者たちも何に襲われたのか理解していなかったくらいだ。


「策は考えてあります。こちらに荷物を用意いたしました」


「開けますね!」


 エルが背負っている鞄を開けると、闇の炎が灯されたカンテラ。

 そして幾つかの食料が入っている。情報によれば相手は食料を奪う。


「カンテラにはコクエンちゃんの消えない炎が宿っています。鞄の中身を奪われた時点で、この炎を活性化させます。同時に食料にも燃え広がるでしょう」


「私めの魔力が宿った炎ですから。気配を探るのが容易になります。また霧の中でも導きの炎となるはずです!」


「なるほど~。つまり相手の行動待ちという事ですか~」


「そうなりますね。冒険者たちが襲われたのは渓谷を渡っている最中との事なので。私様たちはこのまま移動を続けます。追いかける際に足場を確保しないといけませんから、安全なルートも構築しましょう」


「よくわからないですけど、エルが大活躍ですか! いっぱい落ちますよ!」


「落ちない方がいいと思うんですが……ひっ、また想像してしまいました……!」


「コクエン様は想像力豊かですね~」


 こうしてコクエン率いる探索部隊は、今のところ順調に歩みを進めるのであった。


 ◇


「ますた、ひま」


「暇なのはいい事だと思うよ。平和だからね」


 運搬ゴーレムを見張る待機組の僕たちは、変化のない時間を過ごしていた。

 あまりに退屈過ぎて、トロンがさっきから僕の服を引っ張ってくる。

 いつもはエルが遊び相手になっている。今は隣に僕しかいない。


「あそぼ」


「遊んでいたらティアマトさんに怒られちゃうよ? 見張りも大事な仕事だから」

 

 ティアマトさんはここより少し離れた場所で座り、

 フロアボスの気配を辿っている。敵は常に飛行しているから。


 僕たちの主目的はゴーレムの監視で移動は最低限しかできず。

 討伐しようにも向こうから近付いてくるのを待つ必要があった。


「せめて運搬ゴーレムを動かせたらいいんだけど」


 超重量のゴーレムを運んで歩くのは不可能で。

 起動にはライブラさんの専門知識が必要なのだ。

 

「……ごれむ、うごかす?」


「トロンできるの?」


「らいぶら、みて、おぼえた」


 大丈夫かなと、後ろで様子を見ていると。

 トロンは迷いなく順番に装置に触れていく。


 ガタガタと運搬ゴーレムの胴体が動き出した。


「お、おお……本当に動いた」


 操縦桿を握ると、ゴーレムは問題なく移動を始める。 

 ゴーレムの組み立ての時もそうだけど、トロンは賢く器用だ。


「一体何の音だ」


 騒ぎを聞きつけて、ティアマトさんが戻って来てくれた。


「トロンがこの子を起動させてくれました」


「ほぉ、ぼんやりとしているようで意外な才能だな。いや、狙撃手の目を持つならそういうものか」


「うれし」


 褒められてトロンは嬉しそうに下を向いている。

 トロンはみんなの動きを目で追って覚えているんだ。


 後方支援は仲間の行動を予測しないと誤射も多発するから。


「これでフロアボスを捜索するのが楽になる」


「目的が当初から完全に変わってしまいますけど」


「今は騒がしい妖精がいないのだ。我々の好きにさせてもらおう」


「ぼす、たおす。たのし」


 狩りを楽しむ狩人みたいな二人に僕は苦笑する。

 ライブラさんにあとでたくさん怒られるだろうなぁ。

次の更新は11/25です

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