第88話 空を飛ぶゴーレム
「早い早い! すごいです!! わあぁ~! てぃあまとさんすごいです!」
「そうだろう。もっと加速させるからな。振り落とされるでないぞ?」
「ひひ、ひぃ、ここ、怖くないです、怖くないですよぉ!」
「おお……おおー」
運搬ゴーレムの背中から勢いよく水が噴出されていた。
ティアマトさんの水の力。その反動で加速が付いている。
「ゴーレムは丈夫だけど。僕の身体が持つかな……?」
全身が激しく上下に揺れて、頭がぐわんぐわんする。
操縦しているライブラさんも集中しているのか無言だ。
「前方に障害物はありませんね~。ではでは、飛びますよ~」
ユグが木製の長い坂道レールを創造した。そのまま直進する。
身体が斜めに傾き空が近付いていく。そして、空中に投げ出された。
「わああああぁい!! 高ーいです! 飛んでまーす!」
「わわっ」
「主人よ、我に掴まれ」
ティアマトさんに支えられて持ち直す。
身体の中身が浮き上がる感覚。地面が遠い。
空中に跳びながらも、更に加速は続いている。
「ひぃいいい、やっぱり怖いですっ! これは鍛えて我慢できるものじゃないですっ!」
「おお……お~」
「安心しろ。ゴーレムは落ちない。我の風に乗せているからな」
「教官、それは油断したら乗員は落ちるって事ですよね!?」
「ははは、この程度で脱落するような軟弱な仲間は居ないはずだが?」
「試練が終わっても、教官は教官です……ひぃ」
「安心してくださ~い。落ちたらわたくしが拾いますよ~。間に合ったらですけど~」
ティアマトさんが風海神龍の能力を解放している。
ゴーレムの左右にはユグの作品の翼が広がっていて。
安定した高度を保ちつつ、次の階層まで一直線に進む。
「わぁー、あるじさま見てください! 泉があります!」
「本当だ。綺麗だね」
気持ちに余裕ができてから、僕たちは景色を楽しむ。
コクエンはしゃがんで震えていた。高いの苦手なのかな。
「おー。まもののむれ、たたかてる」
「縄張り争いだね。普段は見る事ができない珍しい光景だ」
「ますた、うつ?」
「そこは撃たなくてもいいよ。遠くから見守ろう」
――現在【地下深淵の塔】 四十一階層。
運搬ゴーレムを完成させてからまだ一日も経っていない。
空を飛ぶゴーレムはすべての障害を乗り越え魔物すら回避する。
だから一日で四階層も突破してしまったんだ。もう訳がわからない。
「しかしフロアボスというのは軟弱なものだな。大した運動にもならなかった」
「神話級率いる集団に襲われて、数分持っただけマシな方でしょう……相手が憐れでしたよ」
操作の必要がなくなり、ライブラさんが戻ってくる。
秘密の階層の出口である四十五階層にはフロアボスが残っていた。
地下に潜むサウザントワーム。ゴーレムすら呑み込む巨大な魔物だけど。
ティアマトさんが素手で捕まえてしまい。ユグが蔦で縛って動きを封じて。
コクエンとトロンが一方的に倒してしまった。あとエルは魔石を拾ってくれた。
「三ヶ月の特訓成果が表れていたね。ここにアイギスも加われば……」
「間違いなく敵なしでしょう。私様が本気を出す必要性も薄れます」
そうか、ライブラさんという切り札もあるんだった。
これから戦争に出るのかというほどの過剰戦力だけど。
【理の破壊者】含め見えない敵は多いから。多いに越した事はないか。
「そういえば、目ぼしいアイテムは全員【擬人化】してしまいましたね」
「そうだね。☆付きのアイテムはもう手元にないかな。嬉しい話だけど」
僕は全員と心を通わせたという事になる。
「あるじさま、もう仲間は増えないんですか?」
「魔塔でレアアイテムを拾えば、また出会いはあるかもしれないけど」
ゴーレムは相変わらず空を自由に飛んでいる。
こんな場所でアイテムを拾う機会はなさそうだ。
「便利過ぎるというのも良い事ばかりではありませんね」
「出会いを逃すのはもったいないから。時々でいいから地上も探索してみよう」
「了解した。次の四十階層でフロアボスを潰すついでにアイテム探しだな」
「わーい! エルも今度こそ活躍します!」
「教官、先程倒したばかりですよ!?」
「おー。ぼすたおす」
「みなさま、元気いっぱいですね~」
「ティアマトのせいで一気に脳筋色が強まりましたね……アイちゃん、早く帰って来てください!」
「あはは……一日でフロアボス二体討伐って、地上では誰も信じてくれなさそう」
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