表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/118

第80話 七神宝

 翌朝、と呼べる時間なのかはわからないけど。

 体力を回復させてから僕たちは探索を開始する。


 最初はあまり遠くは目指さずに、まずは今いる浮島を歩く。

 といっても山火事で灰になっていたので、すぐに回り切った。


「何もなさそうだね。生物もいないし。もう少し奥に進んでみよう」


「隣の浮島に通じる橋が一つありました。あれが正しい順路なのでしょう」


 木製の手作り感のある橋がギシギシと音を立てている。

 火事で燃えなくてよかった。でも人の重みでも落ちそうだ。


 ここで命を失えば永遠の存在になる。戦闘とは違う緊張感が。


「念を入れて、一人ずつ通っていこうか。まずは僕が安全を――」


「わ~!」


 エルが楽しそうに橋を走って渡っていった。

 勢いで大きく横に揺れる。が、何とか無事だった。


 見た目は脆そうだけど、意外と丈夫なのかも。


「エルエル!? 何をされているのですか! 落ちたらおしまいなのですよ!?」


「? エルが安全を確かめたらダメだったですか?」


「誰かがやらないといけなかったけど。走る必要まではなかったよ……?」

 

 エルは不死身だからこそ、死に恐怖するという感情に乏しい。

 無事に済んだけど。あとで危ない事はしないよう教えてあげないと。


「ご主人様、あちらの方に人工物を発見しました!」


「……だれも、いない。あんぜん」


 二つ目の浮島に入り、先行していたコクエンが知らせてくれる。

 トロンが索敵して、魔物の気配はなさそうなのでそこを次の目的地に。


「おおーかくれがだ!」


 森の中に隠れるようにして小さな家が建っている。

 所有者が誰なのかは考えずともわかる。この魔塔の創造主だ。


「……お邪魔します」


 ドアを開けると、大量の白い埃が宙を舞う。

 天井がガラス張りで光が差し込み室内がよく見える。


 机とたくさんの本棚。水を入れる壺に吊るされた保存食。

 竃に暖炉、燃料の炭に色んなものが乱雑に放置されていた。

 一人の人物が暮らしていくのに不自由ない設備が整っている。


「あはは、この部屋を見るだけで、何となくどんな人物だったのか想像できるね」


 本は開きっぱなしで、あれもこれも整理が中途半端になっている。


「めんどうくさがり?」


「男の人の部屋って感じです! あるじさまの部屋はいつも綺麗ですけど!」


「僕の場合はみんなと過ごしているからね」


 僕も一人だけなら、きっとこんな感じに適当になっちゃうかも。


「……私めには読めそうにないです。古代文字で書かれてあります。ケルファなら読めるのかなぁ?」


「本当だ。グネグネしてる」


 読めないけどかなり字が汚いのはわかった。

 きっと他人に見せない個人の日記のようなもの。

 

「こ、これは大賢者ドラウフトの日誌ですよ! ふむふむ、日頃の献立が書き殴られています。――取り留めのない内容ですね。まるで痴呆症対策をする老人ですよ……!」


「どんな優秀な人でも老いには勝てないんだね」


 過去の偉人に一気に親近感が。同じ肉体を持つ人だったんだと。


「この階層で食用できる素材もまとめられています。有益な情報として保存しておきましょう」


「あの四角い実も食べられます?」


「あれは上質な魔力回復薬の材料になりますね。直接口に含むと舌が腫れて七日は戻らないそうで」


「全部自分の身体で試したんだ。何だか食いしん坊のトロンみたい」


「……むぅ。まけない。もっとたべる」


「そっち?」


 調べてみると、回復薬を製造する機材までも見つかる。

 ライブラさんがあとで試して、安全ならたくさん作るみたいだ。


「老人の日誌はさておき。しかしこれは面白い事になりました」


 ライブラさんは興奮気味に、今度は棚の書物を読み漁っていく。


「ロロアさんもご存じのはずですが、七賢人の血を引き継ぐ王家には大賢者の秘宝も継承されています。私様の本体である【ライブラの書】も、現在は大陸中央を支配する帝国が管理しておりまして。ガーベラ王国では大賢者スフィーダが遺した【神槍ブリュンヒルデ】もその一つ。それらをまとめて【七神宝】として、王が王たる証明にも使われています」


「でも大賢者ドラウフトは、孤独を貫き通しその血を絶やしたんだよね?」


 ドワーフ族が国を挙げて魔塔の管理を引き受けているけど。

 七大国家に属しながらも、リンドウ王国は正式な一員ではなく。

 

 王の証明となる【七神宝】にも、一つ欠けが出ている状況なんだ。


「この隠れ家には、失われた【七神宝】の在りかが記されているやもしれません!」


「らいぶらさん、その方も神話級なんです?」


「当然です。まぁ、残る六つが束になったとしても、残念ながら私様に劣りますがね♪」


 ライブラさんがすごい自画自賛をしている。

 本気を知っていると大言ではないのはわかるけど。

 

 同じ神話級でも、やっぱり大きな格差があるみたいだ。


「りゅうじんさまのおたからってなーに?」


「エルも気になります!」

 

「大賢者ドラウフトの秘宝は、【滅龍双盾ティアマト】。伝説の邪龍を討ち滅ぼした巨大盾ですね――あっ」


 ライブラさんが途中でやってしまったという表情に。


「たて……わたしより、ゆうしゅうな、たて」


 アイギスが悲しそうに、何度も口を動かして、俯いてしまう。

 同じ役割で、国宝級を超える大賢者の秘宝。目指していた神話級。


 ことごとく今の心が折れているアイギスには、辛い内容だった。


「ま、まだ見つかると決まった訳じゃないし。巨大な盾なんて僕には使えないよ!」


「ロロアさんの仰る通りです! アイちゃんは気にしなくてよいのですからね? あー私様突然古代文字が読めなくなりました~! 老化ですかね!?」


 僕とライブラさんで必死になって励ます。

 持ち主が亡くなってから数千年は経過しているんだ。


 今さらそんな都合よく失われた秘宝が見つかるはずがないと。

 

「ううぅ……申し訳ありません。あぁ……私めはなんて間の悪い、余計な働きを……!」


「もう、コクエンちゃんまでどうされたのです。急に泣き出したりして」


 何故か入り口に立っていたコクエンまでも泣きそうになっていた。

 その手に持っているものは、巨大な盾は――――えっ。


「今しがた隠れ家の周囲を調べていたのですが、その、地下を見つけてしまいまして……」


「秘宝、見つけちゃったんです?」


「……はい」


「そんな、馬鹿な……!」


 思わず僕は頭を抱えてしまった。喜び以上に戸惑いが募る。

 これが僕とアイギスへの試練だとするならば、あんまりだと思った。

次の更新は11/1になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ