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第75話 遺跡の女王

「ここからは時間との勝負になるよ。素早くクイーンを見つけないと。増援が止まらない」


「……こっち」


 無数にある通路から正解の道をトロンが選択していく。

 今自分たちがどの方角を走っているのかも定かではない。


 遺跡は左右だけでなく上下も含めた立体迷路となっていて。

 一見して行き止まりに見せかけた隠し通路まで備わっていた。


「ここからかぜがふいてるよ?」


 アイギスが壁を叩いて新しい道を発見した。これで三度目だ。

 索敵範囲が広いトロンでは見落としがちな部分を補強してくれる。


「……すごい」


「幼くともアイちゃんはアイちゃんですね」


「えへへ」


「お手柄だね。どんな時でもアイギスは頼りになるよ」


 背後から敵の気配。遠回りしてきた兵隊たちだ。

 隠し通路の中の安全を確認して、一気に突入する。

 

 崩れかけた階段を駆け下りて、地下深くまで走り抜ける。


「……もうすこし、おおきいはんのう、ある」


「へんなにおい……おくにいっぱいいるよ!」


「クイーンを守る近衛兵だろうね。厳しい戦いになりそうだ」


 エルとコクエンが抜けた状況で、主力がトロンだけになる。

 自由に動ける僕が先行して、雷光砲撃の放つ隙を作らないと。

 

「最悪、クイーンは私様が【情報受信(データロード)】を使い瞬殺しますが」


「それは本当に最終手段だね……!」


 ライブラさんの切り札は一度の魔塔探索に一回しか使えない。

 予備の【情報板(ライブラボード)】は、冒険者ギルドで一つしかもらえないから。


 そこまでして秘密の階層に辿り着けたとしても。

 今後もクイーン以上の強敵が待ち構えているのは確実だ。

  

 まだ探索も中盤だというのに、ここで全力を出し切ってしまったら。

 結局、どこかで地上に戻る羽目になる。次の挑戦に持ち越しになるんだ。


 だったら初めから近道なんて使わずに、普通に攻略すべきで。


 安全を期すなら、ここでライブラさんに頼るのも一つの手。

 だけど僕は引き返したくない。そう思ってしまったら止まらない。


「……悪いけど、危険な道だけど。僕の我儘に付き合ってもらえるかな? ここで切り札は使わない」


「もちろんですとも。私様はロロアさんが満足するまでお付き合いしますよ」


「……いいよ」


「がんばろー!」


 みんなが賛同してくれる。背中を押されて僕は足を早める。

 長い下り坂があった。巨大な生物の気配。滑り降り着地する。


「クギュルルルルルル」


 長方形に広がる空間に、石を積み重ねてできた舞台がある。

 最奥の祭壇には扉のようなもの。長く伸びた胴体が巻き付いている。


 追っていくと、頭上に女王の顔が浮かんでいた。

 天井には糸を垂らす無数の卵。アーミーアントの幼体だ。


 クイーンアントが部屋全体に甘い空気を漂わせている。


「ギュウルルルル」

 

 女王を護るのは羽を生やした巨大な甲冑虫。

 アーミーアントが直立して剣と盾を構えている。


 また、棍棒を握り締めた白目の巨人が動き出した。

 同じく白目を剥いた無数のゴブリンたちも横に広がる。


「近衛兵のアントソルジャーです! それにトロル、ケイブゴブリンまで。遺跡前の廃坑に住み着いていた魔物でしょう。誘惑されて操り人形となっていますね。幼体の餌として使われているのでしょう」


 地面には大量の魔物の骨が転がっている。

 餌として囚われて盾にもされる憐れな人形。


 僕たちも捕まれば同じ目に遭うだろう。

 喰うか喰われるかの戦いだ。足に力を入れる。


「トロン、雷光砲撃を卵に! まずは新手を生まないように巣を破壊する。隙は僕が作るから!」


「……りょうかい」


 前に出て、アントソルジャーの斬撃を交わす。

 同時に棍棒を振り下ろすトロルの一撃を誘導した。


「グギャアアアアア」


 操られたトロルの攻撃が地面を滑りケイブゴブリンたちを巻き込む。

 種族が違えば動きも違う。操られている魔物は連携が上手く取れていない。


 統率者は虫なのだ。あくまでも人形は人形。

 僕が注意すべきは近衛兵。羽を動かし飛翔してくる。


「ブシャアアアア」


 口から酸を飛ばしてきた。遺跡の柱を利用してやり過ごす。

 そこに小柄なケイブゴブリンが乱入してくる。小斧が飛んでくる。


「だめー!」


 アイギスが体当たりで弾き飛ばした。斧は壁に刺さる。


「アイギス、前に出たら危ないよ!」

 

「ろろあはわたしがまもるの!」


 幼くても自分の役目を果たそうと、アイギスは盾の力を発揮する。

 ソルジャーアントの剣を素手のまま防いで、帯電で痺れさせた。


「ギュアアアアアアアアアアア」


 戦況を見守っていたクイーンが咆哮する。

 卵に亀裂が入りアーミーアントが顔を出した。


 数にして五十を超えている。このままでは物量に押し潰される。


「……おそい」


 でも一歩こちらが上回った。トロンが背中の筒を天井に向ける。

 直後に眩い光が部屋を駆け巡り、天井全域を稲妻で焼き焦がした。


「ギュアアアアア、ギュルルルルルルル」


 崩れ落ちる卵を前にクイーンが地上に降り立った。

 質量で遺跡が揺れる。全身が赤に染まり怒りを露わにする。


 狙いは子供を奪ったトロンだ。酸の霧を噴き出してくる。


「マズイ、これは避け切れない!」


 部屋全体に仲間を巻き込んでのブレスは、僕たちの前で止まる。


「んん!!」


「アイちゃん、その調子ですよ!」


 アイギスの周囲に魔法結界が展開された。

 本人は無意識の行動で、本能のまま助けてくれた。


 ドームの奥では酸で溶けるトロルとケイブゴブリンが映る。


「勝手に自滅してくれた。あとは女王と近衛兵だけだ」

 

「トロちゃん、今のうちに魔力回復薬(マナポーション)で補給です!」


「うん、つぎで、たおす」


 酸の霧が途切れるまでに回復を終わらせて、僕たちは態勢を整えた。

次の更新は10/22です

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