第73話 遺跡調査
「みなさん、到着しました。ここが遺跡があるという六十五階層ですよ」
【星渡りの塔】と違い、代り映えのない風景が広がる。
どこまでも荒地が続いていて空は暗く、山々に囲まれている。
属性の有利不利がないとはいえ、魔物もそろそろ強敵揃いになる。
ここまで順調だったからこそ、気を引き締めていかないと。
「休息所で得た情報によれば廃坑の奥にあるみたいだ。えっと、ここから右に曲がって真っ直ぐ進んで」
「まがれー!」
「右に曲がります!」
アイギスとエルが操縦桿を傾けゴーレムがゆっくりと動き出す。
運転手は交代制となり、二人は楽しそうに先頭で操作している。
「くれぐれも丁寧に扱ってください。パーツの替えはありませんから!」
「「はーい!」」
「本当に大丈夫ですかね……?」
ゴーレムが右に左に傾きながら、不安定なまま進む。
保護者のライブラさんがはらはらしながら見守っていた。
半日を費やして、大きな山の麓に件の廃坑を見つける。
ここも破棄されてから年数が経っている。埃が舞っていた。
「入り口は見つかったけど……どうするか」
問題は遺跡内部まで運搬ゴーレムを運び込めるかだ。
巨大な胴体では途中狭い通路に阻まれると破壊してしまう。
そのまま崩壊して生き埋めなんて最悪だ。入り口は通れそうだけど。
「その辺りは私様に妙案があります。パーツを分解して持ち運ぶのです」
「バラバラにして向こうで組み立てるという事?」
「はい、ユグちゃんで人力輸送車を創造します。重労働になりますが、この先も足は必要ですから」
「この便利さは簡単に手放せないよね。それと、輸送車なんて記憶していた?」
「再現して便利そうな道具を一通り地上で記憶しておきました。クランバルの技術力は高いので、きっとご主人様のお役に立てるかと!」
ユグを胸に抱いたコクエンが答えてくれる。
いつの間に、もうすっかり後輩を使いこなしている。
「コクエンに任せて正解だったよ」
「身に余るお言葉です! ありがとうございます!」
コクエンは嬉しそうに、頑張って鼻血を我慢していた。
やっぱり後輩ができるといいところを見せたくなるんだね。
「ひとまずゴーレムは入り口に待機させ、遺跡攻略を優先しましょう。安全確保の後に分解、運搬作業に移ります。忙しくなりますが、ここまで楽させてもらったのです。この子も最下層まで連れていきますよ!」
ゴーレムの修復作業に三日も費やしたからか。
ライブラさんは我が子のように可愛がっていた。
「ゴーレムにはしばらく休憩してもらおうね。僕たちは――」
「フロアボス退治ですね!」
「おー」
「……でばん」
「もう気が早いよ。まずは遺跡探索だからね?」
前のめりになるエルたちに笑いながら。
準備を整えて、全員で廃坑に乗り込んでいく。
◇
廃坑内部は蜘蛛の巣のように入り組んでいて。
遺跡に辿り着く前からかなりの距離を歩かされた。
ドワーフたちが残した案内板を頼りに最深部を目指す。
「……いない」
数分置きにトロンが気配を探ってくれる。
いつ奇襲されてもおかしくない暗闇の中、
安心して移動できるのは彼女の能力のおかげだ。
「廃坑には魔物が住み着いていないようだね」
「遺跡の方に集まっているのでしょう。どうも集団戦を得意とするボスのようですし」
【情報板】にはフロアボス情報が記述されている。
クイーンアント――地底昆虫の女王だ。
フェロモンを使い周辺の魔物を支配下に置く。
遺跡内部全域をナワバリとし、侵入者を執拗に捕食する。
本体が強大であったフォルネウスとは違い数で制圧するボスだ。
「ここまでフロアボスを倒してくれた賞金稼ぎもこの階層は放置している。油断しないようにね」
優秀なパーティですら戦闘を避ける相手のようだ。
「強そうです!」
「つよーいつよーい!」
「ふぅ……闇は落ち着きます」
「おなかへった」
「……正直、フロアボスよりも注意すべきは遺跡の罠かもしれません」
「あはは……そうだね。僕たちって落ち着きがないから」
ライブラさんの心配はよく理解できる。
戦闘面では優秀だけど、みんな自由奔放だから。
罠は能力に関係なく被害が及ぶ。
例えば僕が経験した転移罠のように。
遺跡内で転移してしまえば、合流はかなり厳しい。
「ここからは最低二人一組の行動を心掛けて進んでいこう」
次回更新は10/18になります




