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第72話 高まる欲望と王の素質

 九十階層で手に入れた運搬ゴーレムが進んでいく。

 荒れた大地も重量のある四輪が難なく乗り越えていく。

 気が付けば七十階層に突入していた。まだ一ヵ月とちょっと。

 

 一番の懸念であったフロアボスは他パーティが討伐しているので。

 何の障害もなく最短ルートで階層を駆け抜けられるのが非常に大きい。


 ここから更に秘密の階層を経由すると考えると。

 四ヵ月攻略が現実的なものになってくる。どきどきしてきた。


 世界に七つある魔塔を僅か一年で二つ攻略する。

 この調子なら前人未踏の全制覇もありえる話になる。


 冒険者の全盛期は短く、一つの魔塔攻略に年単位を要するので。

 これまでは不可能と考えられてきたけど。僕はまだまだ若いから。


 例えばエルフなどの長寿種族なら時間を掛けれるけど。

 パーティ全員が同種族で固めるというのはあまり聞かない。

 種族間で得意不得意が極端に分かれるから。基本はバラバラだ。


 本人の寿命が長くても、仲間が先に衰えるというのはよく聞く話で。

 魔塔探索はパーティ単位で挑むもの。個人では限界が出てしまう。

 

 それじゃ別パーティに移籍すればという事になるけど。

 大して親交もなかった相手と数年間過ごすのは覚悟がいる。


 冒険者として優秀でも人との関係は別の才能がいる。

 結局一番重要なのは他者との信頼関係になるのだから。


 エルたちはアイテムだからどの種族よりも長生きする。

 途中で衰える事もなく。肝心の僕自身は今は成長過程にある。


 【擬人化】の発動条件が信頼である以上、関係は悪くなりようがない。

 条件としてはこれ以上にないほど恵まれている。魔塔攻略に適している。


「ライブラさん、どうしよう。僕は欲張りになってきたかも」


 七十階層の情報を調べて、フロアボスがいない事を確認して。

 休息所で手に入れた補給物資を運搬ゴーレムに積み込んでいく。


 身体が小さく力仕事が苦手なライブラさんは、

 頭部の操縦席で休憩していた。僕もその隣に座る。 


「どうされたのですか?」


「こうしてすべてが順調に進んで。より大きな世界を見てみたくなったんだ」


 最初はアイギスを神話級に高めるお手伝いとして始めた。

 それが何だか上手くいって、周囲に期待されるようになった。


 流されてばかりであったけど。今は自分でも高みを目指したくなっている。

 日に日に欲望が渦巻くんだ。それを聞いて、ライブラさんは表情を綻ばせた。


「ロロアさんはこれまでが無欲であり過ぎたのです。力があるのですから当然の帰結です」


「過ぎたる欲望は身を滅ぼすとよく聞くけど」


「すべてを許容できる器になればいいのです。欲を持つというのは生物として当然ですよ。それを悪と見るのは自身の成長を拒んでいるのと同じ。私様としては理解に苦しみます」


 ライブラさんは簡単に言うけどかなり難しいとは思う。

 有名になればあの王子たちのように悪い連中に目を付けられる。


 僕自身だけでなく周囲にも被害が及ぶ。それを許容するというのは。

 それこそ――王様みたいに何者にも屈しない強大な権力を持たないと。


 ああ、そういえば最初からライブラさんは僕を王にしようとしていた。


「大丈夫ですよ。この神話級たる私様が傍に居るのですから」


「応援してくれる人だけじゃない、敵もいっぱい増えると思うよ」


 英雄を目指すという事、改めて自分だけの問題ではないと実感する。


「私様たちはずっと味方です。すべてが敵になったとしたら、新たに国を建てればいいのです」


「【擬人化】の子だけを集めた国? それはとてつもない話だね」


 全員が僕と信頼関係で結ばれているから実現したら強国になると思う。

 国民の一人一人がエルたちのような特殊スキルを持っている訳で……。


「ロロアさんは自覚がないようですが、それを簡単に実現する力が【擬人化】なのです。貴方は王の素質を既にお持ちなのですよ」


「……そうかも」


 あまり深くは考えた事がなかったけど、新しい命を生み出す力なんだ。

 見方を変えれば禁忌を侵していると言ってもいい。まだ目立たないだけで。


 この先、【理の破壊者】だけでなく本当に国すらも敵に回すかもしれない。

 それだけのリスクが目の前にあったとしても、やはり欲望は止まらないのだ。

 

「そして底なしの欲を持つというのも王に必要な条件です。私様の努力もようやく実り始めましたね!」


 何度も傍で王と呼ばれ続けたから、違和感もなくなってきた。

 それがライブラさんの作戦だとしたら、もう完全に術中に嵌っている。


「すっかりその気にさせられちゃったよ。責任を取って欲しいな」


「もちろんです。私様はロロアさんの望む世界を創造してみせますよ。誰にも邪魔させません!」


 ライブラさんはやっぱり誰よりも忠誠心が強いんだ。

 いつもふざけているけど。多分、僕の為なら手を汚す事だってする。


「責任重大だなぁ……」


 その気になれば国を滅ぼせる神話級のアイテムが僕の味方で。

 この先もきっと仲間が増えていく、本気で僕も強くならないと。

次の更新は10/16です

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