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第62話 かつての強敵

「人形風情が俺の邪魔をするなあああああああああ!」


「シュー」


 白い魔導ゴーレムが煙を出しながら連続で拳をぶつけていく。

 クロストが【剛力】で反撃するも、肉体がついていっていない。

 

 本人は意識していないけど、身体の三分の一が潰れているんだ。

 不安定な重心と膨張した肉の重み。小型ゴーレムに翻弄されるしかない。


 僕は四発目の雷光弾を、剥き出しの心臓部へと射出する。


「ぐぎゃああああああああああああ」


 洞窟の天井まで届く血飛沫をあげるが、まだ息は残されている。

 小さな急所に魔法障壁を多重展開して威力を減衰させたのか。


 それでも衝撃までは防ぎ切れず、白目を剥いて口から血泡を吹いている。


「これ以上は苦しみを長続きさせるだけだというのに……!」


 【神化の秘宝】を使用した時点で死の運命が確定している。

 ここで抗っても何も生まない。無意味に苦しさが増すだけだ。


「おれは……かみのちからを……てにいれた……あは、ははは」


 無知というのは恐ろしい。彼は未だに全能感に浸っている。

 

 度重なるスキル使用によって脳に負担が来ているのか。

 呂律が回っていない。視線の動きも不規則になり不気味だ。


「マズイな……今の奴は意識を失い人間としての本能が薄れている。神話級の霊薬の力だけで動かされている状態だ。【理の破壊者】というのは、どこまで人の尊厳を傷付ければ気が済むんだ!」


 ルガンさんが悔しそうに拳を地面に叩きつける。

 あの霊薬が世間に出回ったらと考えると寒気がする。


「ルガンさん、その身体ではもう……僕に任せて離れていてください」


「ああ……ロロア、気を付けろ。生物としての、奴の最期の足掻きが来るぞ!」


 死期を悟った生物ほど怖いものはない。

 霊薬に無理やり生かされた怪物が白い息を吐く。


「ふぅ……ふぅ……」


 姿が消えた。立っていた場所に腕が落ちている。

 クロストは邪魔な肉を削ぎ落して身体を軽くしたんだ。


「があああああああああああ」


「冷静に……速さに惑わされずに……そこっ」


 地面に滴る血痕の動きで行動を予測する。

 アイギスを構えるも激しい衝撃に盾が弾かれる。


「動きを止めるな、止まったらやられる……!」


 足元を転がりながらコクエンで背中を斬り付ける。


「ぐううううううううう」


 傷口に闇の炎が宿った。自然治癒は発動していない。

 攻撃スキル以外を捨てたんだ。殺戮生物と化している。 


 やるか、やられるかの勝負だ。 


 続いてトロンで足を狙う。魔力水を飲む暇はない。

 またクロストは姿を消した。次は頭上から降り注ぐ。

  

「シューシュー」


 着地地点に白い魔導ゴーレムが待機していた。


 大きな揺れの衝撃もものともしない。

 水流をまとった拳でクロストを壁へと押し遣る。


「そうか……やっとわかったよ。君はフォルネウスを宿しているんだね!」


 かつての強敵、【星渡りの塔】最強の空遊魚の魔石だ。

 心強い味方を得て、僕の身体も鼓舞される。足を撃ち抜いた。


「ぐうぎぎぎぎぎぎぎ」


 痛みは感じていないだろうけど、肉体は正直だ。

 片足だけでは体重を支えきれず速度が落ちている。

 

「逃がさないよ、クリエイト!」


 【創造の樹杖】で獣を捕らえる頑丈な檻を作る。

 速さを取って腕を捨てたのがお前の敗因だ。壊せやしない。


「ぐおおおおおおおおお」


 全身を闇の炎に包まれ、何度も体当たりで抵抗する怪物。

 エルの魔力水を飲んで、最後の六発目の全力雷光弾を。


「……トドメだよ」


「シュウーシュウウウ」


 隣で白い魔導ゴーレムが四連魔法陣を展開する。

 雷光弾が水龍竜巻(メイルシュトローム)に包まれる。クロストの胸を貫いた。

 

 体内に取り込まれた魔水が行き場を失い、

 クロストの身体が風船のように膨らんでいく。


「ぐおお……おお――おおおおおおおお」


 檻の中で爆発、バラバラに弾け飛んだ。

 

「……ふぅ。やっと終わった。想像以上に厳しい試験になったよ……」


 安堵から血に濡れた地面に座り込む。全身が痺れて動かない。

 しばらくすれば異変を察したギルドの人たちが来てくれるはず。


「シューシュー」


「ありがとう。助かったよ……僕だけじゃ厳しかったから」


 白い魔導ゴーレムがまた煙を出しながら止まってしまった。

 もしかしたらこの子は、【神化の秘薬】に反応したのかな。


「あとでレイリアに聞いてみよう」

次回更新は26日(日曜)となります

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