第57話 狙撃
「そろそろ全員が入場したところかな。ポイントは31。多いか少ないかわからないね」
Gランクの特権で最初に安全な窪みを見つけ、そこで休息を取る。
洞窟内に流れる水脈を見つけて、とりあえず一日分は確保できた。
仲間の居ない一人の状態だと、欲張り過ぎると上手く回らないものだ。
宝箱の中には携帯食料なども隠されている。
流石に食料も合わせて三日分を持ち運ぶのは難しい。
荷物が増えるとそれだけ狙われる確率も増え、逃げ辛くなる。
「普段のパーティ探索に慣れていると、その辺り気が回らなくなるんだよね」
僕は荷物持ちとしての経験がある。邪魔にならない程度の量を把握できる。
すべての役割を一人でこなすんだ。他の参加者たちもきっと苦労しているはず。
「最初の一日は様子見だろうから。本格的な奪い合いは明日からかな」
洞窟内でも【情報板】を使えば現在時刻は判断できるし。
また一日の終わりにポイント数で上位に立つ三名が公表される。
ポイント争奪戦を停滞させないようにする工夫だ。
名前と見た目の特徴までもバレるので実質指名手配と同じ。
作戦の一つとして、初日は何も行動せずに体力を温存しておく。
二日目に、把握した三位のポイントを参考に四位のポイント数を狙う。
そして最終日に一気に駆け抜ける。
上位になればその間ずっと狙われるのだから。
この作戦だったら、不用意に狙われず安定行動を取れる。
――と考えている人たちが多いはず。
「寧ろこの場合、一位を独走した方が有利になる。僕は初日から動こう」
もしも大多数がこの作戦を取ったらと考えると。
最終日に逆転を狙って大勢が動き出す。乱戦になるんだ。
そうなると指名手配なんて関係がなくなり。
一位をキープしたまま逃げる方が俄然有利となる。
これがパーティ戦ならともかく、周囲は全員敵なのだから。
恐れずに突き進む事が栄光への近道。僕はもう前しか見ないぞ。
◇
「よし、まずは一人目を発見。呑気に飲み水を補充しているや」
洞窟の水脈は辿っていくと広い地底湖に辿り着く。
そこは天井が高く遮蔽物も多い。隠れる場所が幾つもある。
あらかじめ【創造の樹杖】で天井に木の土台を作り高所を取った。
【改造型魔導狙撃銃トロン】の照準器を覗き込む。顔がよく見えるぞ。
「これも真剣勝負だから。……ごめんね」
トリガーを引く。鋭い射撃音と共に水を飲んでいた冒険者が吹き飛ぶ。
あまりの衝撃に悲鳴すらない。煙を吹いてトロン本体に熱が生じる。
「おお、威力を最低限に抑えたのに。一撃で気絶させちゃったよ」
これまでより少ない魔力消費量で、三倍以上の威力が出ていた。
連射はできなくなったけど。その対価に見合う結果を生み出している。
イーグルさんの技術は世界最高峰だと思う。トロンも強くなったね。
「よし、このまま次の獲物を待とう」
倒した冒険者のポイントは回収せずに釣り餌とする。
不用意に近付く者はそのまま一撃で休んでもらう事にして。
罠だと気付かれても、薄暗い洞窟の天井に潜んでいるんだ。
向こうからこちらを視認するのは困難で、
見つかったとしても逃げる時間は簡単に稼げる。
「音に反応して二人が入ってきた。争う様子は……ないか」
初日からの無駄な戦闘は避けたいようで。
冒険者たちは互いに警戒しながら隙を狙っている。
目の前のポイントをどうにかして手に入れたい。
でも下手に争えば第三者が乱入してくるかもしれない。
「既に僕が潜んでいるんだけどね……おやすみ」
二人の内の強そうな見た目の方を吹き飛ばす。
「な、何が起こったんだ!?」と片方が叫び出した。
ポイントを放置して、慌ててその場から逃走を始める。
僕は逃げる背中を照準器で追いかけて、次弾を装填。
出口を目指しているはわかる。あとは命中補正を効かせれば。
「……そこだ」
ぎゃあ、と悲鳴をあげてもう一人も壁に激突し気絶した。
これで三人が戦闘不能。あとで試験官さんが回収しに来るはず。
目覚めてからもう一度参加できるけど。
その頃にはポイント差でかなり後手になる。
「ふぅ……狙撃って結構神経を使うかも」
照準器を覗いている間は無防備の状態なので。
安全だとわかっていても、一人だと焦りで狙いがブレる。
水分補給をして汗を拭う。目の運動も欠かさずに。
不死身のエルなら緊張もせずに上手く扱えるのかな。
二人の新たな可能性を楽しみにしつつ、また次の獲物を待つ。
「ん……流石に警戒されちゃったか。これ以上の成果は望めなさそう」
洞窟内に響く狙撃音は隠せないので、地底湖に人が来なくなってしまった。
そろそろ場所を移さないと、何らかのスキルで居場所を探られる可能性も。
急いで地面におりて、倒れている三人からポイントを強奪する。
「えっと、18ポイントだから。合計で49か」
相変わらずそれが高いのかよくわからないけど。
初日の目標はキリのいい100として、次の狙撃場所を探そう。




