第56話 昇格試験
国王陛下との謁見の日からしばらく時間を置いて。
ヘラさんの推薦状を提示して、指定日にギルドに集合した。
試験官の人に連れられ僕たちは王都から離れた平野に案内される。
周囲には総勢三十人の冒険者たちが揃っている。
GからEまでの下位ランクはひとまとめで試験を受けるらしい。
「わぁ。みんな見た目からして強そう」
筋肉隆々の男性陣の中に紛れて僕は感心する。
現状のランクと実際の実力は一致しない事も多いので。
この人たちの中に未来の英雄になる人が居るかも。
そう考えるとワクワクする。もちろん僕だって負けられない。
「おっと邪魔だ。子供がこんな所でうろつくなよ。遊び場じゃないんだぞ」
「その、僕も冒険者です」
「ランクは?」
「Gです」
「わははは、そうか。初めての試験か。邪険にして悪かったな、頑張れよ」
正直に答えると笑われてしまう。この反応も久しぶりだ。
それは僕が望んで目立たなくしているのもあるけど。
国王陛下との謁見は世間には公表されていない。
一部のギルド関係者だけで共有されているのみだ。
実績はあっても、ランクも年齢も低い僕に配慮してくれたんだ。
ガーベラ王国は長い目で僕を代表冒険者に育てたいと考えているみたい。
「Gランクなら最後まで脱落しなければ簡単にFへと上がれるはずだ。目立たず潜んでおけよ」
「そうします」
僕の目標はDランクだから。その逆をしないといけない。
平野の途中に空洞が開いていた。試験の為に調整された洞窟だ。
「参加者の方はこちらの札をお受け取りください」
試験官の人から受け取った白い札。
そこには1ポイントと文字で描かれている。
周囲を見渡すと人によってポイント数が違うみたい。
ランクが高いほど数値も高く、最高で十ポイントかな。
「今回の試験内容は地下サバイバルです。細かいルールについては配布した冊子に記載されています」
事前に受け取ったものを再度確認する。
下のランクの者から順番に地下洞窟に入っていき。
様々な手段で白い札、ポイントを稼いでいくのが目的だ。
取得手段は以下の通り。隠された宝箱、魔導生物、ライバル冒険者。
ここからポイントを奪い合い、三日間守り通す必要があるようだ。
ポイントがゼロになっても脱落判定にはならず。
途中棄権しない限りは続行できる。持ち込めるのは装備だけ。
食料や水などは道中で確保しないといけない。
まさにサバイバルだ。魔塔とは違う外の世界の洞窟だけど。
求められる技術はそこまで差がない。冒険者同士の争いが加わったくらい。
「最終日に保持していたポイントに応じてランクが振り分けられます。下位ランクの試験では降格はありませんので安心してください。最高得点を得られた方は無条件で中位のDランクに昇格できます」
最後の説明を聞いて冒険者たちの目の色が変わる。
三十人の内、Dランクになれるのはたったの一人だけ。
目指す場所は同じだ。よし、全力で一番を取るぞ。
◇
「まずはGランクのロロアさんから入場してください。ご武運を」
「ん……ロロア? どこかで聞いた覚えが」
「俺もだ。何の噂だったかな……?」
Gランクは他に居ないみたいで、僕が先に洞窟へ入る。
後ろで僕の名前に反応している人がいたけど。気にしない。
ヒカリゴケで照らされた内部は、
自然物に人の手が加わった作りになっている。
次の目標である【地下深淵の塔】も地下異世界らしい。
事前演習になっていいかもしれない。死角の多い道を進む。
さっそく小さな溝に宝箱を発見。ポイントは1。
「これって早い物勝ちだよね。低ランクはポイントを稼ぎやすい仕組みなんだ」
その分、後続の人たちから狙われる確率も高くなるけど。
奪い合いが激化する前に、安全地帯を確保するのが重要かも。
「いつもならここで、ライブラさんの意見を聞くところだけど」
今回は全員がアイテムの姿に戻っている。
冒険者の試験だから、一人で挑戦するのが筋だ。
【エリクシルの空瓶】【情報板】が二つ。【アイギスの神盾】
【改造型魔導狙撃銃トロン】【黒炎龍の短剣】
装備を持ち込み過ぎだと、試験官さんに言われたけど。
仲間はずれにできないから。どうか僕の活躍を見届けて欲しい。
「もちろん君も頼りにしているから。これから一緒に頑張ろうね」
レイリアから褒美として授かった【創造の樹杖】を握る。
僕の魔力を吸って伸びた木々が、記録された形へと変貌する。
創造した梯子を伝い上の空洞に隠されていた白い札を取った。
「3ポイントだ。この調子で集めていこう」




