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第46話 心の成長

「街並みが随分と変わっているね。新しいお店が増えて新鮮だ」


 ギルドから受け取った報酬、金貨四十枚を持って。

 僕たちは消耗品やらの補充の為に商店街を歩いていた。


「あ……ここのチキンサンド美味しかったんだけど。移転しちゃったみたいだ」


「ロロアさん。それでしたら三番通りに新しいグルメスポットがあるそうですよ!」


「本当? あとで寄ってみよう!」


 四ヵ月以上も地上を離れていると、同じ街でも違う景色が広がっている。

 お気に入りのお店がなくなっていたりするのは残念だけど。

 お宝探し気分で探索するのは、冒険者らしさがあって悪くないかも。


「っと、あんまり無駄遣いしちゃうとアイギスに怒られちゃうね」


 食料品はレイリアの使いの人が用意してくれるので。

 目的はそれ以外の衣料品を中心に。気付いたら女の子ばかりだから。


 男の僕が直接選ぶとなると精々靴とかそういうところで。

 下着は何故か、ライブラさんが全員分のサイズを記録していた。

 

 それを聞いてアイギスが呆れていたけど。

 どれを買うか迷わずに済むのはありがたかった。


 金貨四十枚もあったら、なにを買うにも困らないで済む。

 ちなみに、フォルネウスの魔石分の報酬は別途で貰えるらしい。

 魔石はその用途が幅広く、高品質なものは防衛兵器などにも使われる。


 【星渡りの塔】最強の魔石の価値は想像以上のものだった。

 なんでも王都コーレリアの方でも大層話題になっているとかで。


 レイリアの父親、ガーベラ王国の王様に謁見できる可能性もあるとか。

 報酬を受け取る際に、正式に僕の担当になったヘラさんが教えてくれた。


 正直、当事者以上に周囲が盛り上がり過ぎて、感情が追い付かないのが本音。


「そういえばガーベラ王国では、僕は盾使いとして名が知られているみたいだよ」


「不倒無血の盾使いですか。何度聞いてもしっくり来ないですね……やはり暴虐王の方が威厳が――」


「国もないのに王を名乗ってもね、国外にまで悪評を轟かすのは困るよ。既に色んな怪しい組織の人に声を掛けられているのに……」


 拠点にまで大金を持ち込んで取引を申し込まれたりして。

 偶然居合わせたレイリアが毅然とした態度で追い払ってくれたけど。

 

 その一件から僕が王女すらも懐柔して王国の支配を狙っているとか。

 更にとんでもない噂が流れ始めた。やっぱり地上の生活は落ち着かないよ……。


 もし王宮に召喚されるとなったら、まずは誤解を解かないといけないかも。


「後世に名が残るのですよ! 私様の王がそこらの冒険者と同じような扱いをされては困ります!」


 未だ呼び名に納得してないライブラさんが、ポケット内で呟いてる。

 その隣でフードを被ったコクエンが、付き添いで荷物を背負ってくれていた。


「……盾使い。今からでもどうにか短剣使いに………………うっ、わ、私めは無意識になんて欲深い妄想を!?」


 小声でアイギスに張り合っていたのが聞こえていた。

 コクエンは縮こまりながら、怯えた表情で僕の方をちらちら見ている。

 聞こえていないフリをしてと。短剣使いもかっこいいけど僕に似合うだろうか。

 

 二人を除く他の子たちは拠点でお留守番中だ。

 まだしばらく街に滞在しているレイリアとストブリに家事を教わっている。

 今朝からエルとアイギスがたくさん料理を作って、トロンが全部平らげていた。


「地上でも、みんなそれぞれ好きなことを見つけて、成長しているんだね」


 僕は歩きながら【情報板(ライブラボード)】を覗き込む。

 スペアも壊れたので、ヘラさんにお願いして特別に貰ったものだ。


―――――――――――――――――――――――――――――

 エリクシルの空瓶☆3.1【擬人化】


☆1・不死身の器

☆2・液体蓄積

☆3・癒しの水

☆4・???

☆5・???

☆6・???

―――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――――

 改造型魔導銃トロン☆3.2【擬人化】


・魔力吸収改

・雷属性変換

・命中補正ランクD

・魔力伝導効率ランクE

・強化スロット×2

―――――――――――――――――――――――――――――


 エルとトロンのレアリティが若干上昇している。

 アイギスは変化なし。やっぱり国宝級は難しいみたい。


「うーん。コクエンも大活躍したはずなんだけど、☆3.5のままだね」


 フォルネウス戦やカナン戦でも要所で大きな働きをみせてくれた。

 戦闘面ではトロンに次ぐ二番手として、彼女も評価されていいと思うけど。


「うぅ……王の懐刀を自称しながらまるで成長しない。このまま溶けて消えたいよぉ……」


「さっそく暗黒面に堕ちましたね……短剣は立ち位置的に地味で名声を得られ辛いですから」


「けれど、アクアドラゴン戦を経てエルが急成長したから。工夫しようはあると思うんだ」

 

 レアリティが名声や戦歴に影響を受けるのはわかっている。

 それとは別に、なにかしら超えないといけない壁があるような。

 

 あの時の、強くなりたいと願ったエルの姿を思い出す。 

 道具のままなら、こうも頻繁にレアリティの変化は起こらない。

 

 人の肉体であるからこそ。全員に等しく成長するチャンスを与えられているんだ。


「【擬人化】である以上、人としての感情――心の成長が鍵なのかもね」


「心の成長ですか。ふむ、コクエンちゃんの一番苦手とする分野ですね!」


「あひっ……申し訳ありません……! な、情けないよぉ……このままじゃご主人様に失望されて……しくしく」


 フードの奥でびくびく震えだすコクエン。

 ここで僕が怒ってないよと伝えるのは逆効果だ。


 そろそろ彼女への対応も慣れてきたぞ。

 慣れてきたけど、ずっとこのままなのは辛い。


 どうにかコクエンとも、今以上に仲良くなる方法はないだろうか。


「あっそうだ。今度ケルファさんたちと会う予定があるんだけど」


 地上に戻ったら魔石報酬で一杯奢る約束をしていたから。

 ギルドのヘラさん経由でケルファさんたちに伝えてもらった。


 ケルファさんのお店でまた祝杯を挙げる。その日が今から楽しみだ。

 

「あのキングオーガ戦で協力した者たちですか。あれは口約束だったと記憶していますが、ロロアさんも律儀ですね」


「冒険者は横の繋がりが大事だしね。特に僕の場合、今から対等の知り合いを作るのは難しいから。――コクエンも一緒にどう?」


「わ、私めがですか!? ご、ご主人様お一人ではなく!?」


「元の持ち主さんと話をするいい機会だよ」


 コクエンはケルファさんから譲り受けたものだった。

 もしかしたら彼女の成長に一役買ってくれるかもしれない。


 ――そういう打算を抜きに考えても。

 コクエンだって本心では会いたいんじゃないかな。


「……その、少しだけ考えるお時間をいただけないでしょうか」


「うん、わかった。いい返事を期待しておくね」

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