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第19話 魔塔都市の姫君

「【星渡りの塔】に再挑戦ですか。ロロアさんはまた自ら苦行に挑まれるおつもりで、お好きですねぇ」


 僕たちは街の公園にエルを迎えに来ていた。

 その道中で、僕は今後の方針について二人に相談する。


 知名度を上げるのに【星渡りの塔】制覇が手っ取り早い。

 上位ランクの冒険者は、最低でも二つの魔塔を攻略している。

 

 七魔塔の内【星渡りの塔】は難易度が二番目に低いとされていて。

 最上層が六十階であり、他の魔塔は階層が百を超えるので効率も大きく変わる。


「今回も同じメンバーで挑むつもりだから、みんなの都合が良ければという前提で」


 というか怖がられているので、組める相手が他にいない。


「もちろんロロアがそれを望むなら、私は構わない。一緒に神話級を目指すと約束したものね」


 アイギスが快い返事をしてくれる。


「私様も実際にこの目で最上層のデータを集めたいとは思っていました。断る理由はありませんが……知名度を上げるのでしたら、暴虐王のままでよかったのでは?」


「せめて納得できる形にして欲しいかな! 別に嫌われたい訳じゃないからね!?」


 不倒無血の盾使いも正直カッコよくはない。ライブラさんは喜んでるけど。


 攻略にあたり懸念があるとすれば、僕の経験不足。

 荷物持ち(サポーター)以外の役割で魔塔に挑戦するのは二度目で。

 パーティのリーダーを務めるのもすべて、初めて尽くしなんだ。


 あとは上層の能力喰らい(スキルイーター)の存在も気になっている。

 どうしてだか、僕はそこに妙に惹きつけられるんだ。

 

 犯罪者と関わりたい気持ちなんて微塵もないのに、自分でも矛盾してる。

 

「あるじさま! 何のお話ですか?」


 考え事をしていると、エルが隣に立っていた。

 お友達の子たちと別れを告げて、すっかり順応している。


 彼女にもさっきと同じ説明をする。


「エルもついていきます! また冒険の始まりですね!」


 ちょっと遊びに行くような感覚で、楽しそうにそう語ってくれる。

 とても危険な仕事なんだけど、不死身だからこその楽観視なのかな。


「トロンにもあとで説明するとして、ヘラさんからもう一度詳しい情報を聞き出す必要がありそうだ」


「むむ」

「またその名前……!」


 今回は同行者ではなく挑戦者として、必要な情報を集めたい。

 ヘラさんと聞いて、ライブラさんとアイギスが一瞬反応したけど。

 

 いい人なんだよ? 二人は心配性だなぁ。

 

 全員集合して、もう一度ギルドの方を目指していると。

 

 目の前で一人の女性が馬車から降り立った。豪華な装飾で彩られた服装からして高貴な身分の人だ。

 桃色の髪に白銀の軽鎧、意志の強そうな蒼瞳。人間の知り合いがいない僕は、気にせず傍を通り過ぎる。

 

「――お待ちください!」


 呼び止められた。すかさずアイギスが僕の前に立つ。


「ロロアに何の用?」

 

 アイギスの冷たい視線にも怯まず、女性は僕に丁重に頭を下げた。


「私は王都コーレリアから参りました、ガーベラ王国第三王女レイリアと申します。突然のご無礼をお許しください。どうか、ロロア様とお話をさせていただけないでしょうか?」


 ◇


 王都コーレリアを有するガーベラ王国は、魔塔都市ラティア並びに【星渡りの塔】を管理する国家だ。

 七賢人の一人で槍の名手、戦乙女ブリュンヒルデの血を受け継ぐガーベラ王家は、代々高名なユニークスキル持ちを輩出しているらしい。

 

 僕も以前から噂で耳にしていた。魔塔都市ラティアではお姫様が冒険者として活動していると。

 

 【王女の激励】というユニークスキルを宿し、効果は周囲の味方強化。

 その美貌と能力から、高位パーティの誘いを毎日のように受けているとか。


 ただ彼女は頑なにパーティを組まないらしい。所謂ソロ専というやつで。

 味方を強化するスキルがあるのに、仲間を作らない変わったお姫様であると。

  

 ユニークスキルという共通点があって、勝手に親近感を覚えていた。

 とはいえ身分も実力も違う。関わり合う機会なんて一生ないだろうと思っていた。


「え、えっと。ここでいいかな? 警備の都合とかあれば、言ってもらえると」


 あまりに目立ち過ぎるお姫様を、まずはギルド併設の酒場にご案内した。

 ……緊張する。おもてなしとか必要かな。周りの人も遠巻きにこちらを見ている。


「王家の血を引くといっても、継承権は二十を超える兄弟の下から数えた方が早く。私は比較的自由な身分ですので、そう緊張なされなくても大丈夫ですよ」


 レイリアさんは僕に、人好きのする笑顔を見せてくれる。


 そう言われましても、庶民からすれば王族には変わりないし。

 雰囲気に気圧されて背筋が伸びる。男の僕と話して怒られないよね。


(私様の出番ですか? 王として威厳ある返しを……! 小娘にわからせてやりますか!)

 

 ライブラさんがこっそり語りかけてくる。

 ここで偽僕を使われると不敬罪で首が飛んじゃうよ。

   

「おひめさま? 初めてお会いしましたけど、綺麗です!」


 エルが興味深そうにレイリアさんを見つめる。


「……うまうま」


 食事が提供されて、トロンも人の姿に。

 お姫様とは関係なく自分の世界に入っている。

 

「それで、用件は? 私たちも忙しいのだけど」


 まともに会話ができるアイギスは終始不機嫌だ。

 うん、僕の悪評はいつの日か王国まで届きそうだよ。


「ロロア様、もしかしてこちらの方々は例の【擬人化】の?」


「あ、僕のスキルをご存じでしたか」


「もちろん、この街では有名な話ですし。今回私もその噂を頼りに足を運ばせていただきました」


 本来ユニークスキル持ちは自分の力を隠すもので。

 嫉妬や、犯罪に巻き込まれないよう、自衛するんだけど。


 僕の場合は、何処からか情報が漏れてたらしく。

 いつの間にか【擬人化】が広まっていた経緯がある。


 レイリアさんの【王女の激励】はその特性上。

 スキルを使った時点で周囲の人に勘付かれるので隠す意味がない。


「僕を頼るという事は【擬人化】絡みですよね?」


「はい。ご明察の通りで、どうかロロア様のお力で私の望みを叶えていただけないでしょうか?」


 畏まった態度で、レイリアさんが布に包まれた武器を取り出す。 

 布を剥がすと、目の前に差し出されたのは、一振りの宝剣だった。

お読みいただきありがとうございます

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