第17話 新しい自分へ
「はぁ……どうしてこんな事に……」
僕は街を歩きながら深い溜め息を吐いた。
勝利の余韻とか、アイギスが残ってくれた事とか。
嬉しい話が続いたけど、それ以上に今後の不安も増していた。
昨日、闘技場で四十を超える冒険者たちとの決闘に勝ってから。
日頃悪評ばかり流されていた僕は、別の意味で有名になっていた。
嘘吐きロロアから――――暴虐王ロロアへ。
曰く、ロロアはキレると見境なく人を襲う。
男四十人に取り押さえられても、一歩たりとも止まらなかった。
返り血を舐めて笑っていた。手のひらから光線を発射する。瓶で殴ってくる。
本気を出せば魔塔を崩壊させる、多重人格者。好物は人の血。
尚、本人に記憶は残っておらず。普段は人畜無害の仮面を被るらしい。
何故そこまで強くなったのかというと。フロアボスの遺骸を喰らったからだそうだ。
……もう意味が分からないよ。
若干、事実も含まれているけど。こんな風に、僕は完全に怪物扱いだ。
「冒険者からの嫌がらせがなくなった代わりに、今度は街の人たちに怖がられるように……」
買い物に行けば店主さんが怯えだすし、子供は泣いて逃げる。
宿ではタダにするから殺さないでくださいと、命乞いされるし。
騎士団からは警戒され、謎の集団から暗殺者としてスカウトされたり。
僕の取り巻く世界が急激に変わり過ぎて、頭がおかしくなりそう。
「暴虐王……私様たちの王に相応しい称号ですね! いずれは魔神王? それとも神王でしょうか? 地上世界を牛耳るのも時間の問題かもしれませんっ」
ライブラさんはズレた感受性で誰よりも喜んでいた。
いつも王と呼んでくれるけど、本気で言っていたんだね。
「私のマスターなら当然の結果ね。ロロア、一緒にもっと高みを目指すわよ!」
輝かしい笑顔を振り撒き、アイギスは僕の一歩前を歩く。
僕の盾として、誰よりも強くなると誓ってくれた。僕も負けてられない。
「……ぐぅ。ますた、おなか、すいた」
トロンは僕の片腕にしがみついて指を齧っている。
非力な僕にとって彼女の存在は大きい。いつも頼りにしているよ。
「エルはどんなあるじさまでも大好きです! もちろん皆さんもですけど!」
エルはいつもと変わらない親愛を手のひらで表現してくれた。
僕がどんな時も、前を向いて歩いていけるのは君のおかげだね。
取り巻く世界は変わっても、この子たちは何も変わらない。
相変わらず無茶苦茶で、でも僕に変わらない愛情を向けてくれる。
「あーあ、もう暴虐王でも何でもいいや! 考えるのはやーめた」
いっそ、開き直った方が楽になれるかな。
今さら僕が他人にどう思われていても関係ないし。
だって僕にはもう――人間の仲間は必要ないようだから。
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