表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/118

第16話 最後に立っていた者

「アレは【情報板(ライブラボード)】に記録される声帯データを組み合わせた、ライブラ様の百ある必殺技の一つです!」


「酷い、それのせいで僕は街の冒険者全員を敵に回したよ! 今後誰ともパーティを組めないよ!?」


 格下に威張られて、名誉を傷つけられたと怒りに燃えている。

 クルトンたちが悪い噂を広めるのと、結果は変わらないのでは?


「組む必要がおありなのですか? ロロアさんには私様たちがついているのですから。わざわざ弱っちくて、愚かで、馬鹿な人間と仲良くなる必要はございません。王には王に相応しい臣下を選ぶべきです」


「ライブラさんって、もしかして人間不信?」


「純粋無垢な子供が、触れただけで暗黒面に堕ちるほどのデータはたくさん蓄えていますので」


 おお……とても深い闇を感じた。触れない方がいいかも。


「多少強引だったのは謝罪しますが。ああでも言わないと、アイちゃんが意地を張って過去の発言を撤回できませんから。よろしいですか、ロロアさん。神話級に到達するアイテムというのは……至極面倒な方が多いのです。人の世界でも天才は奇人揃いだと言うでしょう? どうか寛大な御心で受け止めてあげてください」


 それってライブラさんも奇人に含まれるよね。


「えっとアイギスさ――――アイギス」


 言い慣れない呼び方で、僕はアイギスを隣に誘う。

 ライブラさんに、男らしく話した方が喜ぶと教えられたけど。


「なーにロロア、疲れたの? 私が背負ってあげようか?」


 アイギスがとても甘えた声でくっついてくる。

 こちらも全然慣れない。どういう心境の変化だろう。


 僕たちは今、魔塔都市にある闘技場を訪れている。

 普段は武術大会などの催しで利用される場所だ。


 何故か今からギルドが貸切って個人の私闘に使われるけど。

 フロアボスを討伐した功績は、それほどの影響力があるらしい。


「ロロア、自分の発言に責任を持てよ。俺たち全員を相手すると言ったんだ、手加減しないからな」


 集まったのは総勢四十を超える男たちだ。


「うるさい蠅ですね。ロロアさん、王として目に物見せてやりましょう!」


 切っ掛けを作ったライブラさんは瞳を輝かせる。


「一人相手でも勝てないのに、向こうはたくさんだよ! 殺されちゃうよ!?」


 僕には逃げ足はあっても、肝心な敵を倒す腕がない。

 というかこの人数差じゃ何をしても押し潰されちゃう。


「大丈夫です! あるじさまにはエルたちがついてます!」


 エルはそう言ってくれるけど。隣に居てくれたら心強いけど。

 偽僕が一人で倒すと豪語しちゃった以上、仲間は連れて――――


「ロロアさんお忘れでしょうか、私様たちは貴方を助けるアイテムですよ?」


 ライブラさんは宙でクルリと一回転してウィンクをした。


「ロロアが私に相応しいマスターとなるのなら。私はそれに恥じない神話級の盾となってみせるわ」


 アイギスは僕の前に立って、手を握って白い光に包まれる。

 手元には立派な盾が残された。国宝級の価値があるアイギスの神盾だ。


「ん……マスターの敵、撃つ」


 続けてトロンも魔導銃の姿に。両腕に戦う力が宿った。


「あるじさまが言っていました。「道具は僕の半身」だって。エルたちも同じ想いです!」

 

 エルも相棒のエリクシルの空瓶の姿に。水龍の魔力水がまだたくさん残されている。

 

 ――ああ、そうだったんだ。


 だからあの時アイギスは怒ったんだ。「私の身体に触れるな」と。

 

「私様の王は愛されていますね。これでは過剰戦力で勝負にならないかもしれません」


 ◇


「なっ、これは何の冗談だ……! どうして街一番の俺の剣がロロアに通じないんだ!?」


 目の前の男が、繰り出す剣技を【アイギスの神盾】が受け止める。

 お返しに魔導銃を放ち刀剣を粉々に砕く。衝撃で相手は地面を転がる。


「まずロロアが盾を使いこなすなんて聞いた事がないぞ! アイツ荷物持ちしかできないんじゃなかったのか!?」


 斜めから飛んで来る斧を受け流して後退する。

 距離を取ればこちらが一方的だ。トロンが光を放つ。


(説明しましょう! 高位の武具は使い手を選びます。それは言い換えると、選ばれ、愛された人間はまるで手足の如く武具を使いこなせるのです、以上っ!)


 初めて握った盾は、僕の半身を固く覆って。

 見た目とは裏腹に軽くて思い通りに動いてくれる。


(ロロアさん後ろです!)


「よっと」


 背後から迫る槍を避けていく。得意の逃げ足は健在。

 今はそれに加えて盾が隙間を埋めてくれる。相性は抜群だ。 


「近接距離が駄目なら、コイツを喰らえ! アイスニードル!!」

 

「無駄だよ!」


 【アイギスの神盾】には魔法障壁が備わっている。

 単発の下位魔法なら触れただけで消滅する威力だ。


『目の前の僕は残像だ、後ろは取ったぞ!』


「なにっ!?」


 敵の魔法士たちが偽僕の声を聞いて背中を見せる。

 ライブラさんの声真似だ。好きな場所から出せるみたい。


「よし、今のうちに」

 

 水龍の魔力水が入った【エリクシルの空瓶】に口をつけて、魔力を充填。

 雷光弾を発射。地面を抉り魔法士八人を結界ごと吹き飛ばした。


「えーい!」


「ガハッ……!」

「グハッ!?」


 足を止めていた人たちを【エリクシルの空瓶】で殴り付ける。

 本人から鈍器としての使用許可は貰っているけど、頑丈だから痛そうだ。


「瓶で……殴り倒すだと……? コイツはロロアじゃない……怪物だ……暴虐の王だ……ぐふっ」


 最後の一人もきっちりトドメを刺して。

 エルに付着した汚れを綺麗に拭いてあげる。


「……あれ。勝っちゃった」


 自分でも無我夢中で戦い続けた。

 最後まで逃げずに戦うのは初めてで。

 闘技場のあちこちで倒れた冒険者たちが呻いている。


 最後まで立っていたのは僕一人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ