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第114話 最弱の敵

「創造主様? ――また真似っ子ですか!!」


 ストブリは構えを保ったまま、偽ロロアと向かい合う。

 ここまでフォルスとの連携で偽物たちを軽く蹴散らしてきたが。

 しかしライブラはそれが悪手だと理解している。戦ってはいけないのだ。


「いけませんストブリちゃん、ロロアさんとはまともな勝負にはなりません!!」 


「あれ、当たらないです!? どうしてです!?」


 ストブリの放つ風刃は偽ロロアに当たらず。

 偶然発生した魔力の乱れによりあらぬ方向へ飛ぶ。

 相手は一歩もその場を動いていない。表情を崩さない。

 

 偶々自分の都合の良い方向に運が向く。絶対勝利の力だ。


「くっくっくっ、所詮は人間だと甘く見ていたが、面白い力を持っているようだな」


 偽ロロアは自覚して能力を行使しているようだ。

 接近戦に切り替えたストブリを子供扱いしていた。

 その隙にまた別の個体が出現する。数はもう少ないが。


 偽ロロアが先頭に立っている、絶対勝利を攻略しなければ手出しができない。


「不完全な模倣であったとしても、私様たちでは絶対勝利の力は阻めませんか……!」


「ライブラ様、どうすればいいです? どうすれば……!」


 すべての攻撃を軽くあしらわれて、ストブリはじりじりと追い詰められる。

 これまで自分たちが享受してきた恩恵が、そっくりそのまま返ってきたのだ。


「この最強の力があれば、もはや人質を取る必要もない。ここで朽ちるがいい!!」


 偽ロロアの命じると、後ろに控えていた偽トロンたちが砲台を向ける。

 偽王の念を宿した砲撃だ。逃げても確実に命中する。運命を定められる。


「仮に私様が本気を出したとしても、強制力により結果は覆せない……くっ、ここまでですか!」


「レイリア……ごめんなさいです」


 絶望に打ちひしがれる二人を吞み込まんとする光の奔流が迫る。

 直後、地面から木壁がせり上がった。砲撃に対して貧弱な守りだ。


「……これは、ユグちゃんの創造魔法!?」


「まだ仲間が居たか。しかし遅い!」


 偽ロロアは勝利を確信している。

 頼りのない壁を光が包み込んだ。爆散する。

 すると、複数砲撃の軌道に若干のズレが生じた。


 そのズレは距離に比例して大きくなり。対象を越えて遥か先の空へ。

 

「なんだと……!?」


 ――偽ロロアの想定外の出来事が起こっていた。

 奇跡を塗り替える奇跡。偽物の絶対勝利を上回る力。


「あらあら、ダメ元でもやってみれば上手くいくものですね~」


「みんな無事!? あれ、ストブリは何でここに? って、偽物の僕まで居るんだけど!!」


 本物の王が、ユグと共に天から降り注いだのだ。


 ◇


 巨大樹から恐怖の空中散歩を終えて、運搬ゴーレムの元に到着すると。

 何故かストブリと白いゴーレム、フォルスがライブラさんを守っていた。


「創造主様! お久しぶりですです!!」


「わわっ」

 

 メイド服を靡かせて、ストブリが僕の胸に飛び込んでくる。

 反動でクルリと一回転。よしよしと頭を撫でると喜んでくれた。


「遅くなってごめんね」


 どうしてここに居るのか聞きたいけど、まずは目の前の敵だ。

 僕は偽物の自分を睨みつける。動く自分を見るのは変な気分だ。

 

「今さら増援が現れたところで、この最強の力は止められまい!!」


「……えっ? ライブラさん、この人何を言っているの?」


「あっ、それはその……説明が難しいと言いますか……!」


 ライブラさんは困った表情で、答え辛そうにしている。

 偽物の僕が威張り散らしているけど、偽物の中で僕が一番弱いよね?

 何だか恥ずかしい人を見ているようで、それが僕の姿をしているのが辛い。


「僕は王だ。この力で地上を制覇してやるんだ!」


「もう黙っていて欲しいんだけど」


「き、貴様、これ以上近付けば、命はないぞ!」


「えいっ」


「ぐあはっ」


 アイギスの神盾で殴り付けると、偽物の僕は血を吐いて倒れた。

 当然だ。他のみんなと違って僕は人間の子供だし。武器持ちには勝てない。

 それにしても弱い、弱すぎる。やっぱり僕はまだまだこの程度なんだなぁ……。


「不完全な偽物の能力が、本物に敵うはずがないですね……呆気ない」


「何だかよくわかりませんが、攻撃が当たるようになったです!!」


「ではでは、ゴミ掃除をしましょうね~」


 偽物の僕を倒したあとは、それはもう消化試合だった。

 体力のあるストブリとフォルスが逃げる偽物を次々と討ち取り。 


 どうも僕の姿を模倣していた者が、オリジナル(最初の一体目)だったらしく?

 どうして弱い僕に化けたのかはわからないけど、親玉を失った子分は戦意喪失していた。

 

「シューシュゴ―」


「フォルスが周囲には敵はいないと言ってますです! 終わりましたです!」


「結局、エルを見つけ出す前に終わっちゃったね」


「うっ、緊張から解放されて、腹痛がまた主張を……」


 未だに毒に蝕まれているライブラさんが呻いていた。

 倒れているコクエンと地面に寝転がっていたトロンも毛布に寝かせて。

 エルを探しに向かったティアマトさんの帰りを待つ。


「……待たせたな」


「あっ、ティアマトさん!」


 戻ってきたティアマトさんは、一人だった。

 エルの姿はなく、そして彼女は何故だか疲れた表情をしている。


「エル様はどうされたのですか~?」


「まさか……深い沼底に沈んで救い出せないとか……?」


 いくら不死身でも僕たちが辿り着けない場所に居ては救い出せない。

 不安になる気持ちを抑えつつ、ティアマトさんの次の言葉を待つ。


「――エルならここに居る」


「へっ?」


 予想外の台詞に僕は一瞬、固まった


「ふああああああ、よく寝ました。あれ、あるじさま?」


 すると後ろの方で、運搬ゴーレムに設置した天幕の中からエルが出てきた。

 呑気に欠伸をして。今までの出来事を何も知らない無邪気な笑顔を見せている。

 

「どうやら最初からずっと天幕で寝ていたらしい」


「ええ……。でも偽物が毒沼に沈めたって……。まさか、ただの嘘だったのかぁ……」


「エル様、お久しぶりですです!」


「すとぶりさん!」


 主戦場となっていた運搬ゴーレム近辺は魔力の流れが激しく。

 ティアマトさんの索敵が妨害され常に死角となっていたらしい。

 偽物を全員倒した時点で、エルが普通に索敵に掛かったみたいだ。


「きゃっきゃ」


 元気なストブリとエルが手を繋いで飛び跳ねている。

 何だかどっと疲れが圧し掛かってきた。最初から気付いていれば。

 こんな苦労はしないで済んだのでは? 何で偽物の言葉を信じちゃったんだろう。


「はぁ……」


「あの……ロロアさん。できれば早めの治療を……!」


「あっ、そうだね。エル、目覚めたばかりで悪いけど治療の水を分けて欲しいんだ」

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