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第112話 一網打尽

「うわっ!?」


 足元から木杭が飛び上がった。衝撃で左に傾くと今度は木矢が。

 前方に大きく飛び込むと、先程僕が立っていた場所が悲惨な状態に。


 偽ティアマトを倒してからまだ数分も経っていないというのに。


「今度はユグの偽物かっ!」


「無力な人間よ。お前はここで朽果てるのだ!!」


 本物とかけ離れた口調で、偽ユグが創造領域を展開する。

 単純な力押しとは違う、ユグの搦手は僕にとっては天敵だ。 


 足を奪われる前に速攻を掛けないと、もう一度スキルリンクを――


「ぐうっ、な、なんだこれは、うごがががががががああああああああああ」


「えっ?」


 突然、偽ユグの体内から無数の蔦が伸びた。天まで伸びていく。

 生きたまま植物に身体を侵食され、偽物は白目を剥いて絶命している。


 頂上で大きな花が咲く。真ん中からもう一人のユグが出現した。

 纏うのは純白の衣。彼女は挑発的な瞳で地上を、僕を見下ろしている。


「ふふふ、わたくしの偽物はおろか。今度はロロア様に化けるだなんて。とんだ命知らずですね。その罪、死をもって償うのです」


 言葉遣いから察するに本物だ。いつも笑みを崩さないユグが激怒している。

 杖を僕に突きつけて創造領域を構築して。って、見惚れている場合じゃない。


「違うよ、僕は本物だよ!」


「偽物はみなそう答えるのです。散りなさい」


「わわっ」


 次々と地面から這い出てくる槍を躱す、巨大花から種が零れ落ちた。

 種からは凶悪な臭いを放つ植物が宿った、指先から痺れが全身に回る。


「くっ、足が……動かない。やっぱりユグとは相性が悪い……」


 盾では臭いは防げないし、目に見えず走って逃げるというのも難しい。


「偽物とはいえ、主であるロロア様を害すのは抵抗がありますね」


 きっとここまで偽物と戦い続けたのだろう。ユグの疑心暗鬼が止まらない。 

 とはいえ言葉通り、トドメを刺すのを躊躇っている様子が伺えた。まだ間に合う。 


「落ち着いて、僕は本物だよ。証拠もあるんだ」


「……証拠、ですか」


 僕は痺れる腕を庇いつつ、アイギスの神盾を見せる。


「それは、アイギス様ではありませんか。まさか本物のロロア様で……?」


 するとユグの表情が変わった。元の優しい姿に――


「させるか!!」


 勇ましい女性の声。僕の背後から風の刃が殺到した。

 ユグは瞬時に植物を盾に後ろへと下がった。怒りを取り戻す。 


「主人よ、無事だったか」


「ティアマトさん!?」


 本物のティアマトさんが、僕の前に立ちユグと相対する。


「やはり罠、でしたか。偽物は姑息な真似をするものです」


「貴様こそ。偽物の分際で、我の主人を手に掛けようとするとは万死に値するぞ」


「ちょ、ちょっと待って。冷静に、どちらも本物だよ!」


 間に入って落ち着くように説得しようとすると。

 遠方から雷光弾が飛んできた。偽トロンだ。偽コクエンも居る。


「醜く争え」


「本物は私だ」


 偽ティアマトに偽ユグのおかわりまで。もうぐちゃぐちゃだった。

 次々と模倣する者(ドッペルゲンガー)が集まってくる。もはや僕の力では止められない。


「主人よ、我の傍から決して離れるな」


 本物のティアマトさんが、風海神龍ティアマトを召喚した。

 対するユグは巨大樹から蔦を伸ばす。嵐と植物の衝撃が世界を揺らす。


 四方から雷光砲撃が飛んでくる。ティアマトさんが僕を抱え飛翔。

 接近してくる偽コクエンを蹴り飛ばし、本物のユグへと龍と共に迫る。


「風海神龍よ、奴を根元から食い破れ!」


「世界樹の化身よ、主を騙る愚か者へ神の裁きを!」


 伝説の龍が咆哮し、対して伝説の巨大樹が立ちはだかる。

 ティアマトさんとユグの全力がぶつかり合う――はずだった。


「あれ……?」


 本物同士。両者の全力はぶつかる直前で、見事に交差した。

 そのままこの場に集っている本物の偽物に向かって降り注ぐ。

 

「ぐぎあ―――――」


「ごああ―――――」


 数十居た模倣する者たちが悲鳴をあげて消滅していく。

 残されたのは僕と、本物の二人。あとは荒れた地が続く。


「ロロア様、ご無事でなによりです~」


 何事もなかったかのように、ユグはのほほんと笑みを浮かべていた。


「これで、大半の偽物を片付けられたな」


 ティアマトさんも、何食わぬ顔でユグと話している。


「偽物様は、共通して調子に乗りやすい性格のようでしたから~力を自覚したばかりの幼子のように」


 うん。僕もわかっている。これは最初から二人の作戦だったって事は。

 敵に仲間割れだと思わせて、便乗してきた連中を一網打尽にするという。


「無事で何より~じゃないよっ! 僕は、本気で怖かったよ!!」


 自分が死ぬという怖さよりも。どちらかが死ぬのでは、という恐怖で。

 しかも仲間殺しだ。過呼吸気味になる身体を落ち着かせ、僕は地面に座る。


「ロロア様、ご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。わたくしたちは正常ですよ~」


「他に手が思いつかなかったのでな。趣味が悪かったのは自覚している」


 二人に支えられて立ち上がる。安心したら今度は笑いが出てきてしまった。


「もういいよ。二人が無事だったのなら。今度同じ作戦を取る際は、事前に説明してね?」

次の更新は1/12です

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