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第106話 砂漠の移動要塞

 休息所で一晩を過ごした後、運搬ゴーレムに乗り込んで砂漠地帯を走る。

 僕たちの後方には【深淵化】した魔物の群れが。まともに相手してられない。


「おぉ……数えられないくらいたくさんです!」


「えいえい、足止めです~」


 ユグが地面に妨害用の木柵を設置して距離を離していく。

 魔物同士がぶつかり合い。争いが生じた。勢いが一時的に落ちる。


「一体、この階層の生態系はどうなっているんだ……」


 それぞれに住処が違う魔物たちが同じ砂漠地帯に集結している。 

 自発的に集まったとは思えない。何者かに誘導されていると考えた方が。


「どこかに集団を操る統率者が潜んでいるはずです。まずはその者を討伐しましょう!」


 魔物は魔物で縄張り争いなどを繰り返す生物。

 一つの目的に団結するような性質は持っていない。


 ライブラさんの言う通り、全体を指揮する誰かが隠れている。


「しかし参謀。辺りは見晴らしのいい砂漠ですが、それらしき統率者の存在はありません!」


 コクエンは両目を凝らして周囲を隈なく探っている。

 狙撃手の目を持つトロンだって。二人の監視を掻い潜れるものなのかな。


「……目に見えるものだけがすべてじゃない。砂漠で隠れられる場所といえば……」


 僕はゴーレムが走行している砂地を見下ろす。

 もしかして、統率者は地中に潜んでいるのでは?


「ティアマトさん!」


「了解した」


 説明するまでもなく、ティアマトさんが風の力を地中に送り込む。

 段階的に揺れが増していき、ゴーレム上でも縦に振動が伝わってきた。

 

「――正解だったみたいだ」


 遠方で耳の鼓膜が破裂しそうなほどの爆音が連続した。


「おおお……揺れが激しく……! みなさん何かに掴まってください!」


「ライブラ様、ゴーレムの姿勢制御をお忘れなく~」


「見てください! おっきなお魚さんです!」


 エルが指差す先には、巨大な砂漠鯨が浮かび上がっていた。

 サンドホエール。通常種の魔物の中では最上級の巨体を誇る。


「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 鳴き声一つで砂漠に噴水が幾つも吹きあがっていた。


「はひっ……空が真っ暗に、こんなのが下に潜んでいたのですかぁ!?」


「おいしそう……」


「見ろ、口元から零れ落ちているのは雑兵どもだ」


 黒い影が地面に向けて降り注いでいる。

 一つ一つが魔物だとすれば、とんでもない数だ。


「まさに移動要塞ですよ。いつまでも止まらない増援にも納得です!」


「ヴヴヴヴオオオオオオオオオオオン」


 サンドホエールは尾ビレを曲げて、進行方向を変える。

 僕たちを上から押し潰そうとしているんだ。要塞が落ちてきた。


「ひぃゃひっ、ど、どどどうしましょう!?」


「落ち着いて。相手が空なら、こちらも空を飛べばいいんだ!」


「ええ、小回りが利く分こちらが有利ですよ!」


「飛ばすぞ。振り落とされるな」


「いつでもどうぞ~」


「わぁぁぁい!」


 運搬ゴーレムの背中に局所的な暴風が駆け抜ける。

 猛スピードで砂漠を走り、創造領域内のレールに乗った。

 

「ごちそう」


 一気に上空を飛んだ。間髪入れずにトロンが雷光砲撃を放つ。

 稲妻の光線がホエールの脚ビレを掠った。焼けた臭いを漂わせる。


 巨体に対して攻撃力が足りない、けど僅かに姿勢が崩れてひっくり返った。

 自分で自分の巨体を制御するのが難しいみたいだ。地上の魔物が潰されてる。


「トロンよ、無茶をするな。空中で制御を乱すと命取りなのだぞ」


「ごめん、なさい」


 反動に対して風の保護を纏わせてティアマトさんが窘める。

 気付かないところでティアマトさんの補助にいつも助けられてる。


「さて、反撃開始といきますか。近付きますよ!」


 ライブラさんが運転棒を回して、ゴーレムがゆっくりと弧を描いて反転。

 大地に落ちたサンドホエールに接近する。コクエンがフードを深く被る。


「ご主人様、行って参ります!」


「気を付けてね」


 コクエンが背面から垂直に落ちていく。サンドホエールの背中に着地した。

 座礁した鯨を手刀で刻んでいく。小さな炎が各地から燃え盛り。規模が増す。


「エルもついていきます! わわわ」


「だ、大丈夫……行っちゃった」


 新しく手に入れた槍を持って、エルも回転しながら落ちていった。

 武器の重さに負けて頭から着地していたけど。元気よく走っている。


「主人よ。これで上手くいくと思うか?」


「んー。あのサンドホエールが運搬役なのは間違いないはずですけど。統率者ではないと思います」


 一応、これで増援は止まるだろうけど。肝心なところが不明のまま。


「だろうな。しかし地中にはこれ以上の反応はない。隠れる場所は皆無だ」


「逃げた、と考えるべきでしょうかね?」


「ティアマトの監視すら抜ける相手ですか……。また面倒な状況になりそうですね」


 下を確認すると、コクエンとエルが手を振っている。


 無事にサンドホエールを討伐し終えたみたいだ。

 あくまで運び屋なだけでそこまで強くはなかった。


「とにかくこの階層は攻略完了だね。少しずつ見えない統率者を追い詰めていこう!」

次の更新は12/23です

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