メモリー2 これがスキルか(4)
炎が!手から出てる!!なのに熱くない!!!
何だこれ新感覚すぎるだろ!
うぉぉおおおお!!!
自分でも引くくらい意味の分からないテンションになっている。
しかしそれもしょうがないだろう。スキル無しと言われて絶望していたのに、一転して全てのスキルを使えるかもしれない無限の可能性を秘めた存在になったのだから。
自分の手元で煌々と燃える炎をみながら希望に胸を膨らます。
ーーーそういえば、ジャイルはこれくらいの炎しか出せて無かったけど僕なら規模や威力の数値を上げればもっと強いものが出せるんじゃ?
そう考えた僕は早速試してみる。規模と威力の数値を0.1から0.5まで上げた術式を頭の中で構築していく。
ーーーーーブワァアア!!!
先程までとは比にならない炎が生み出される。増大した炎は天にまで達していく。
この場合天というのは家の中なので天井になる。
つまり、何が言いたいかというと天井に火が移り燃え始めたのである。
「え、やばくね?」
ーーーーガチャ
「おい、レイド焦げ臭い匂いがするけどどんな変態プレイしてるんだ、父さんでさ焦げ臭くなるレベルのものはなかなかない…………ぞ?」
父が扉を開けたまま固まる。
ていうか変態プレイじゃねぇよ。
「うわあああ!火事だ!燃えてるぞレイド!早く逃げろ!」
それからかくかくしかじかあり朝になった。
ちなみに父さんと母さんには泣かれた。どうやら俺が死ぬつもりだったと思ってるらしい。
まあ、スキル無しと言われた次の日に家を炎で燃やしてたらそう思われてもしょうがないな。
一応弁解はしておいたがあれは信じてない顔だった。僕が炎を生み出したっていっても優しい顔で僕のことを見てるだけだったからな。
とりあえず、僕はこれからニートになります。(いきなりの宣言)
なんでかって言うとこの街の人のスキルを全て解析して使えるようになろうと考えているからである。
僕は人生を自由に生きたい。自分の思った通りに思ったように何者にも曲げられずに生きたい。
そのためにはまず、何者よりも強く無ければいけない。この世界は結局弱肉強食なのである。
それから時はたち、僕は十歳の誕生日を迎える。
僕は町の人のスキルを全て使えるようになっていた。くだらねぇと思うスキルから何から何まで全て理解した。…………まじで大変だった。一種の精神修行だよあれは、大量に羅列された読めない文字の塊を全て理解しようっていうんだから何度発狂して壁パンしたことか。
まあ、でも最後の方は共通してる術式なんかも結構あって楽にはなっていったな。
さあ、これからどうしようかな。とりあえず冒険者にでもなって美少女を助けてぐへへ。
―――コンコン
僕が妄想に胸を膨らませていると僕の部屋の扉がノックされる。
「レイド、……今日は外に出るのか?」
父さんである、そう七歳から十歳の間ほとんど家に籠っていたことによって僕は完全に両親に寄生するニートとなっていた。
僕は扉を開けて父さんに向かい合う。久しぶりにしっかりと顔を見せる僕に父が驚く。
「父さん、僕…………この町をでるよ!」
「……え?」
いきなりの発言に驚く父さん。
何言ってんだお前という顔をされる。
「僕、世界を見て回りたいんだ!」
「!!!…………そうか、レイド。お前ついにやりたいことが出来たんだな!」
「うん!」
「俺は応援するぞレイド!」
「ありがとう!父さん!」
もう勢いとノリで会話する僕と父、もう無茶苦茶である。
「母さん!!!レイドがやりたいことが出来たらしい!」
「あらぁ、それはよかったわねぇ~」
駆け足で下の階に降りていき、母さんに話している父さん。
母さんは相変わらずである。僕がいくら部屋に籠ってもずっと何も変わらなかった。
ニートになっても怒らないなんて最高の母だぜ!
「ということで、父さん母さん僕旅に出るよ」
そんなこんなであれよあれよと準備をして僕は旅に出ることになった。
「健康には気を付けるのよ~」
「楽しんで来いよ!」
「行ってきます!」
なんとも軽いノリで僕の旅編は始まるのであった。