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メモリー2 これがスキルか(2)

 なぜはやくも知れ渡っているのだろうか、超気まずいんだが……。

 昨日集まって人たちが結果を聞いていて広めたのだろうか。

 昨日まで希望に満ちたような目で僕を見ていたみんなの目が心なしか哀れみと蔑みの目に満ちている気がする。そんな目をされても一番絶望しているのは自分だというのに、困るんだが。


「おい!どこ見てんだよレイド!ジャイルが話してる途中だろうが!」


 ジャイルの取り巻きがキョロキョロしていた俺にそう言ってくる。

 めんどくさいなぁー、10銅貨あげるから帰ってくんないかなぁ。


「レイドぉ、お前スキルまだ見たことないだろう?俺たちの町では【お告げ】の日を終えるまでスキルを見ることは禁じられているもんなぁ」


「……そうだね」


 ジャイルが言った通りで、僕はスキルというものを見たことがない。この町では七歳にになって【お告げ】の日を終えるまでは自分のスキルについて調べたり、誰かにスキルを見せてもらったりするとは禁止されている。

 曰く、スキルに人生を左右されることなく自分のしたい道を見極めよみたいな教えがこの町には根付いているらしい。まあ、スキルが無いと分かった途端、僕に向ける目が明らかに変わったことを鑑みるにスキルに左右されない人生は不可能だということが証明されたことだろう。


「へっへっへ、スキルがないお前のために俺がスキルってやつを見せてやるよ」


「ジャイルのスキルはレアスキルなんだぞ」


「そうだぜ、お前とは違うんだぜレイド」


 ジャイルがそう言い、それに腰巾着たちが同調して口々に喋る。

 まあ、僕もスキルに興味があるのでその様子を黙ってみる。


「いくぜ、レイド!はあああ!スキル<炎生成>」


 そう言って人差し指を出して力を籠めるジャイル。

 するとジャイルの人差し指の周りに、淡い光を発する文字のようなものの羅列が漂い始める。

 そしてそれが、収束していきジャイルの指の先にマッチ程度の火が灯る。


「はあ、はあ、どうだレイド!これがお前が一生使うことのできないスキルだぞ」


「は、はぁ……」


 かなりのドヤ顔で自慢してくるジャイル。

 …………いや、しょっぼ。あんだけためてその程度の炎しか出せないん?

 炎出るまではめっちゃカッコよかったやん、それで出るのマッチの炎程度なん?もうそれマッチでええやん。


「おい!なんだよその反応は」

「そうだぞ!ジャイルがせっかくお前のためにスキルを見せてやってるのによ!」


 僕の反応が気に入らなかったのか突っかかっていくる取り巻き。僕に近寄って胸のあたりを勢いよく押そうとする。

 僕はそれに対して、相手の押そうとしている手をつかみ勢いを利用して相手の重心を崩す。

 この技は町の格闘家の人が教えてくれた技である。


「ほっ」


「うわっ!」


 それによって、取り巻きの一人がバランスを崩してこける。


「よくもやったな!みんなかかれ!」


「えぇ?そっちから手出したじゃん……」


 俺の抗議の声は虚しく空に消えていき、ジャイルの掛け声によって取り巻きたちが一斉に飛びかかってくる。





「ふん、二度と舐めた態度とるなよ!……皆行くぞ」


 ジャイル達は満足したのか去っていく。

 僕は今ジャイル達に袋叩きにされ、地面に大の字で寝そべって空を仰いでいる。

 ボコボコにされて負けたのは初めての体験である。ある意味では貴重な体験である。

 全く嬉しくはないが。


 今までも突っかかってこられることは多々あったが、すべて撃退できていた。いくら大人数でこようが一度見た技や体の動かし方を忘れない僕からしてみたら同世代の奴らは敵ではなかった。

 でも、スキルを得たことによって強くなったようで今日はボコボコにされたということである。

 

 みんながみんなスキル使ってたなぁ。

 おそらく僕にスキルを見せてもよくなる時を待ってたんだろうな……、ガキ大将め。


 にしても昨日からひどいことの連続だな。もしかしてこっから僕の人生下り坂ですか?

 流石に早すぎませんかねぇ。


「にしても、スキルの発動って綺麗だったな……」


 僕は立ち上がって服の汚れをおとしながら先ほどの光景を思い出す。

 淡い光の輝きに包まれそしてそれが収束していく様は圧巻だったな。

 ――――――俺には使えないのか……。


 いかんいかん、考えてもしょうがないな。

 …………とりあえず図書館にいくか。


「今日も相変わらず人いねぇなぁ図書館」


 ガラガラで静かな図書館に僕の声が響く。


「あらぁ、レイドくんじゃなぁい。また来たのぉ?」


 伸びきったような、まったりとした喋り方で話しかけてくるのはこの図書館の司書であるラムダさんである。


「ここが一番落ち着くんですよ。いつも静かですしね」


「まあ、人まったくこないものねぇ。私は楽でいいけどぉ」


 それでいいのか司書よ。まあ、人が来なくてもお給料は出るのだろうしいいのだろう。


「あ、そういえばレイドくんもう七歳よね?【お告げ】はもう行ったの?」


あまり聞かれたくないことを聞いてくるラムダさん。


「まあ」


「あら、この前はあれだけ楽しみにしてる様子だったのにどうしたの?」


「まあ、色々ありまして……。端的にいうと僕はスキルないらしいです」


「あらぁ、スキルが?」


「はい、スキルが」


「ない?」


「ないんです」


「そんなこともあるのねぇ」


 あまり驚かないラムダさん。この対応は初めてである。絶望するわけでも失望するわけでもないし、励ますわけでもない。

 ただ淡々と話を聞く、これがラムダさんのいい所なのかもしれない。


「いや、まずないと思いますけどね?」


「確かに、私も初めて聞いたわぁ」


「ほんと、困りますよ。僕の伝説的人生がいきなり絶望的人生になりそうなんですよ」


「それは困ったわねぇ」


 いつも通りの様子で言うラムダさん。

 あまり深刻ではなさそうである、まあそりゃラムダさんが深刻なわけではないのだが。


「まあレイドくんなら大丈夫よぉ」


「なんですかその根拠にかける自信は」


 確信を持っているようにしゃべるラムダさん。

 その言葉に否定しつつも笑顔になる。

 ラムダさんの言葉といつも通りの態度に僕は少し励まされる。


「とりあえず図書館来たんだし何か読むぅ?」


「そうですね。ていってもこの図書館の本ほとんど読んじゃいましたけどね」


「ほんとレイドくんって異常よねぇ」


「……」


 なんだその褒め言葉なのか、けなしなのか微妙なラインのワードチョイスは。

 完全記憶能力を持つ僕からすればまあそれくらいのことは余裕である。


「そうねぇ、せっかくスキルを見たりできる年になったんだしぃ、スキルのことについて書かれている本でも読んでみるぅ?」


「…………まあ、意味があるかどうかはおいておいて読んでみますか」


 よりによってそのチョイス、ほんとにラムダさんは天然なのか狙ってるのか、狙ってるとしたらかなりやばいやつである。


「これはわたしのおすすめよ」


「へぇ、面白いんですか?」


「あらゆる読者がマイナス評価をつけてるわね」


「なんて本勧めるんですか!」


 ほんとにこの人司書なのかよ。評判の悪い本勧めるなんてやばいでしょ。


「まあまあ、とりあえず読んでみてよぉ」


「……そういうなら」


 ラムダさんのすすめによりとりあえず読むことにした僕は椅子に腰を掛ける。

 ふむ、なになに題名は『スキルの真実』か。






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