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メモリー2 これがスキルか

 クリス神父に衝撃の事実を告げられた後、僕はその結果が信じられずもう一度鑑定をお願いした。

 当然、結果が変わることはなく僕は逃げるようにして家に帰った。

 僕のために集まった人が口々に話しかけてきたがそれさえも無視するようにその場を去った。


 ―――いやいや、え、なに?ちょっと何言ってるかわかんないんだけど。

 スキル無いってなに?一個とかならまだしもゼロだよゼロ意味わからんやん。

今は自分の部屋で頭を抱えているところである。この僕が頭を抱えるなんてこと今までの人生で一回でもあっただろうか?

 いやない、断じてない。なんでわかるかって?ハハハ、それは僕が完全記憶能力を持っているからさ。


 ―――コンコン

 なんて軽く現実逃避をしていると部屋のドアがノックされる。


「レイド!帰ってきていきなり何も言わずに部屋に籠るなんてどうしたんだ!」


 父さんが俺の様子を心配して見に来てくれたようだ。まあ、意気揚々と出かけた息子が呆然とした顔で帰ってきたかと思うと、いきなり何も言わずに部屋に籠りはじめたんだから当然といえば当然だろう。


「何かあったのか?【お告げ】が出来なかったとか」


「【お告げ】なら無事終わったよ、父さん……」


「そ、そうか、なら良かったじゃないか!いいかレイド、思ったより結果が悪かったとしても努力していけばスキルは増やすことができるし、そんな落ち込むことはないぞ!」


 どうやら父さんは僕の【お告げ】の結果が思ったより悪かったことにショックを受けていると思っているようだ。

 まあ、間違いではないんだけど。


「…………なかったんだ」


「ん?何が無かったんだ?」


「スキルが一つも無かったんだ……。前代未聞のスキル無しってことさ」


「な、そんなことあるはずが……、何かの間違いに決まってる!そうだ!もう一度【お告げ】を受けに行こう、父さんも一緒に行くから」


 父さんも僕の言ったことが信じられない様子だ。そりゃあそうだろう、スキルが無いなんて話一度も聞いたことがないしね。


「間違いなんかじゃないよ父さん、僕にはスキルが無いのさ」


 僕は落ち込んだ声色でそういう。


「そんな……、なんていえばいいのか…………」


 父さんはかける言葉が見つからないようで、何も言えずにこちらを見てくる。

 スキルはその人の人生に大きく関わってくる。良いスキルを持っていれば富や名声を手に入れることができるし、例え強力なスキルではないとしても鍛え、派生してスキルを覚えていけば食うことに困るといったことにはならないだろう。

 だが、僕にはそもそもスキルが無いのでそんなこともできないのだ。そりゃ父さんもなんていえばいいのか分からないだろう。


「父さん、今は一人になりたいんだ。そっとしといてくれないかな」


「そうか……、わかった。まあ、あまり落ち込むなよレイド」


 そう言い残すと父さんはドアを閉めて部屋から出ていった。


「はあ……」


 僕は身体がどっと疲れたのを感じながら、ベッドに横になる。

 ―――これからどうするかな。基本的にはこの世界の人たちは自分のスキルにあった生活をする。攻撃系のスキルを持っている人たちは冒険者になったり騎士になったりするし、農業系のスキルなら農業をしたりである。

 スキルが無い僕はどうすればよいのか、ニートにでもなるか。


 そんなことを考えていたら、いつの間にか眠りについていた。



               ●



「……ふぁーあ、よく寝た」


 どうやら、僕は爆睡していたようで目覚めた時には次の日の朝になっていた。

 人間不思議なもので一日ぐっすり寝ると気分も意外と落ち着いていた。まあ、落ち着いたところで今の現状が変わるわけではないんだけどね。


 とりあえず、昨日【お告げ】から帰って何も食べていなかった僕のお腹は限界を迎えていたらしく、先ほどから怪獣のように泣き続けている。

 その腹に住まう怪獣を黙らせるために僕は一回のリビングへと食料を求めて向かう。

 リビングにはいつものように父さんと母さんが朝食をとっていた。


「おはよう、父さん母さん」


「おお、もういいのか?レイド」


「そうよ~、大丈夫なの?」


 父さんと母さんが心配そうにこっちを見てくる。

 母さんには父さんから昨日のことを話したんだろう。


「まあ、ずっと寝ててもしょうがないしね。僕にも朝飯を頂戴よ母さん」


「そうね、分かったわ~」


 そういって僕の朝飯を出してくれる。


「今日はどうするつもりなんだ?レイド」


 父さんが質問する。


「そうだね、とりあえず図書館にでもいって考えを整理してみようかなと思ってるよ」


 僕は図書館が大好きで暇があれば通っている。完全記憶能力をもつ僕にっとては読めば読むだけ新しいことを知れる本というものはとても面白いものなのだ。

 

「そうか、まあお前なら何とでもなるさ。お前は天才だからな!」


 励まそうとしているのか笑顔でいう父さん。天才ね、今となっては皮肉ともいえる言葉である。



 朝食を済ませた俺は図書館に向かうべく外に出る。町を歩いていると妙に視線を向けられる。

 こちらを見たかと思えば、ひそひそと話しているようだ。

 一体何事だろう。


 そう思いながら、歩いていると前から同世代の子供集団が僕の方に向かって近づいてくる。


「よう、レイド!聞いたぜ、お前スキルが無いんだってなぁ」


 子供集団のガキ大将が僕にそう言ってくる。ガキ大将の名前はジャイルで僕のこと目の敵にしている。というか同世代の子供はほとんど僕のことをよく思っていないだろう。

 なぜかというと僕と同世代の子供はみんな僕と比べられて育ったからだ。事あるごとにレイドを見習えと口ずっぱくいわれたことだろう。


 というか、僕がスキル無しだということはもう知れ渡っているらしい。

 なるほど、だからさっきからいろんな人に見られるのか。


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