宴
今回の主要人物
【宗教都市ゼロ】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。宗教都市ゼロ代表兼さくら神社神主。もふもふ同盟。
タマ(九尾の狐)さくら神社に祀られている、アーティファクト「お稲荷様」の化身。武術に長け、料理上手。
くー(コロボックル)兄妹の兄。
さー(コロボックル)兄妹の妹。最近はエスターに懐いている。
しろ(龍神)普段は白蛇姿。
エスター(人間)孤児院出身の宗教都市ゼロ大将。もふもふ同盟。
メルツ(人間)孤児院の生き残り。エスターの親友。もふもふ同盟。
ケルン(人間)孤児院の生き残り。男の子。
フィル(人間)孤児院の生き残り。女の子。
ちー(マインドラゴン)元ピーナッツ火山の主。さくらの眷属。普段は人代、犬化をしている。リス獣人達に崇められている存在。ユニコーン隊のリーダー。
イスト(リス獣人)代表。
エリ(リス獣人)副代表。
バージル(人間)ジョザ村出身の鍛治職人。シナとクボの父。くーを師匠としている。
シナ(人間)クボの姉。
クボ(人間)シナの弟。
【ゼフ王国】
ゼフ(人間)ゼフ王国の王。
さくらはちーちゃんと一緒に、リス獣人エリアへ状況を見に行った。ちーちゃんに生贄として捧げたと思っていた娘が、生きて帰って来たのだ。戻ってきた娘の母親は、さくら達に感謝をしていた。その度に、「アタイが、生贄として受け取ったと嘘ついて悪かったのだ。許して欲しいのだ」とちーちゃんは、平謝りしていた。
(イストさんのお願いで、ちーちゃんは話を合わせていただけなのに、憎まれ役をするなんて偉いね。またバケツプリンお取り寄せしてあげよ♪)
ちーちゃんの見た目は、可愛い女の子だが、本当の姿は、ピーナッツ火山の主として君臨するマインドラゴンである。そんなドラゴンに平謝りされて、リス獣人の方がどうしていいかわからなくなっているようにも見える。
イストさんとエリさんも、久しぶりに再会した娘と、楽しそうに話をしているようだった。
(今日はそっとしておいて、親子水入らずの時間を過ごしてもらおう)
さくらとちーちゃんは、こっそりとリス獣人エリアを後にした。
場所は変わり、大戦作戦本部だった公民館に、リス獣人以外の氏子が全員集まっていた。しろさんも人化して珍しく席についている。みんないい表情をして、大戦の活躍自慢や苦労自慢をしていた。
タマさんがリーダーとしてお料理教室の生徒と料理に腕をふるった。
・ふぐ鍋(具材が無くなった鍋から、ご飯と溶き卵を入れて雑炊)
・サイコロステーキ
・鳥の唐揚げ
・エビチリ
・揚げ出し豆腐
・春菊のピーナッツ和え
・へそ稲荷寿司(桜でんぶをご飯に和えてあまじょっぱいお稲荷さんに包み、砂糖でコーティングされたローストくるみを一つ、へそとしてご飯の上に置く)
・某大型店のティラミス
さくらは、「みんな、お疲れ様でした!バジ王国大将率いる軍も、ゼフ王国大将率いる軍も跳ね除け、真の敵として監視していたノストラも壊滅出来たのは、皆さんのおかげです!」
「「お疲れ様でーす」」
さくらは、この島全部をさくら神社の敷地にして、モンスター以外に赤い点は一つしかない事を確認していた。
「宗教都市ゼロは、一人の死者も出さず、攻めてきた国の兵を誰も殺す事無く防衛できました!」さくらは、渾身のドヤ顔で、防衛成功宣言をした。
「やったぁ!」
「頑張ったぞえ!」
「さくらちゃん、立派だっったぞ!」
「本当は、みんなの顔を見ながら話さないといけないとは思っているんだけど、美味しい料理……私も初めて食べるふぐ鍋に、どうしても目が行ってしまいます。えへへ。ふぐは福とも言って、幸福につながる縁起の良い食べ物なんです。宗教都市ゼロに幸福が絶えないように、いっぱい食べましょう!いただきまーす!」
「「いただきまーす」」
さくらは隣に座っているエスターさんに話しかける。定番の膝の上ちょこんと座っているさーちゃんにふぐをふーふーしてから食べさせている。
「一年、こんな何も知らない私を助けてくれてありがとう」
「私の方こそ、人生観が変わった激動の一年だった」
「廃墟のタス村を見た時は、お互いに途方に暮れていたよね」
「そうだったな。私もどうしていいかわからなかった。さくら殿とお稲荷様に助けてもらえなかったら、そこで死んでいただろう」
「いやぁ……エスターさんなら、きっと私なんか居なくても大丈夫だったよ!」さくらも、膝の上にちょこんと座っているくーちゃんに、ふぐをふーふーしてから食べさせてあげた」
「さくら! 美味しい!」
「エスター! 私も美味しいかったよ!」
くーちゃんとさーちゃんはふぐを気に入ってくれたらしい。
エスターさんと今までの昔話をしていると、バージルさんがやってきた。
「バージルどうした? くーのふぐはあげないよ!」
「お、おぅ…師匠のふぐは盗らないから安心してくれ」
(誰もくーちゃんのふぐを盗らないよ)
「バージルさん、お疲れ様でした。くーちゃんと一緒に加護付きオリハルコン装備や武器を造ってもらえていなかったら、防衛出来たかどうかわからなかったと思う。ありがとう!」
「さくらさん、こっちこそ、何から何まで世話をしてもらって、感謝の言葉しか出ない。それと…」バージルさんは顔を赤らめながら言葉に詰まる……
(えっ!なになに?どこかで私、バージルさんとフラグ立ててた?嘘でしょ……告白されるの? 心の準備できていないよ!)
さくらまで、顔を赤らめた。
「さくらさん、この場を借りて、みんなに言いたい事があるんだけどいいかな……」バージルは、緊張しているようだ。
「う、うん……いいよ……」さくらもバージルを意識して目を合わせられない。
バージルは、立ち上がり、「みんな聞いてくれ! 俺の一世一代の宣言になる。
シナちゃんとクボ君も、バージルさんの隣に立った。二人はこれからの宣言を知っているのだろう。みんなの視線を集めたバージルは、さらに緊張したのか少し声を上擦らせ……
「大戦が終わったら……無事に防衛が出来たら……結婚して欲しいと告白されていました。この場を借りて、答えを言わせてもらいます。メルツさん、俺と結婚して下さい。シナやクボだけじゃ無く、ケルンとフィルも俺の子供として一緒に生活して下さい。」
みんなの注目はメルツさんに集まった。メルツさんも立ち上がり、ケルン君とフィルちゃんも立ち上がり……
「バージルさん、ありがとうございます。一緒の家庭を築いていかさせてください」と顔を真っ赤にして答えた。その返事を聞いたみんなは、大歓声を上げた。
「ふぐを食べたら、すぐに幸福が舞い降りてきたぞえ!」
「めでてぇのは、いい事だなぁ」
日本酒で出来上がりつつあるタマさんとシゲさんも上機嫌である。
勘違いしたさくらは、ドキドキ損だったようだ。それでも、転生してきた時の話では、人間と魔族の家庭が出来た事になる。ただ、肌の色が違うだけの人間同士が妬みあっていたなんて、この宴の席ではバカみたいな話である。
楽しい宴は、遅くまで続いた。
「くー、ちょっとゼフ王国の王宮まで連れてってくれぞえ」
「タマ、いいよ」
夜が深くなったゼフ王の居る王宮に、キセルをふかしたタマと白蛇姿でタマにからんでいるしろさんが居た。
護衛の兵など、タマの前では赤子同然。キセルで延髄を叩けば意識を失う。
タマがたどりついたのは、ゼフ王の寝室。タマはゼフ王の布団に潜り込み夜這いをかけた。
目が覚めたカエルのように小太りしているゼフ王は、
「誰だ! お前は!」
「お忘れですかえ? 先日、側室に誘っていただいたのに、いけずだえ…」と言い、タマはゼフ王に裸で絡みつく。
「お前は……あの時の獣人……」
「思い出してくれただえ。あの時は、主人の手前受け入れる発言は出来なかっただけぞえ。今晩私を試して、側室にふさわしいか吟味してほしいぞえ」
「くるしゅう無い。朝まで吟味してやるぞ」とゼフ王は喜んだ。まだゼフ王の耳にはオーサム大将の敗戦は届いていないようだ。命欲しさに色気を使って逃げてきたのだろうとでも思ったのだろう。
明け方、生気をすっかり吸われ、意識も飛んでいるゼフ王に、「わらわをゴミと言い、笑った事を後悔しても遅いぞえ」と言い放った。
部屋の隅で事を見ていたしろさんが近寄り、ゼフ王国の足をひと噛みした。
力ない声で「うっ……」とだけゼフ王国は声を上げた。それと共に、ゼフ王の体は全身膿んで痒みが止まらず、掻けば膿が垂れでる姿に変えられてしまった。「ハズレ呼ばわりした罰じゃ」そう言い、タマに絡みつく。
タマは草むらに入り、くーを呼んでさくら神社に戻った。
縁側では、シゲが一人ちびりと呑んでいた。
「随分ツヤツヤになって帰ってきたじゃねぇかぁ。根に持たれるって怖えぇもんだな」
「何のことかわからないぞえ」とニヤリと笑みを浮かべたタマは部屋に戻って行った。
「しろさんも一緒に行ってたなんて、よっぽど怒らせていたんだねぇ。俺は途中参加してよかったんだろうなぁ。最初からだったら、あのカエルに何を言われてたかわからねぇもんな」
もののけ達のケジメも終わったようである。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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ついに大戦が始まりました!
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次話はその後のゼフ王国とバジ王国の話です。




