さくらは異世界に転生する
真っ白な空間に裸で浮かんでいた。
さくらは、本能的に自分が死んだことを悟っていた。
これが死後の世界?真っ白でふわふわしてる…
脳に響くように無感情な言葉が聞こえた。
「転生を要望されています。受け入れますか?」
(おぉ! なんかゲームのオープニングみたいじゃん)
さくは元気よく「はい!」と答えた。
(さくらは、忙しい子だねぇ。もう次の世界にいくのかい)
(先ずは、私に任せるぞえ。だますのは得意ぞえ)
(またさくらと紙風船できる♪)
(わしも準備をするかの)
さくらは強い光につつまれ、ゆっくりと光が弱まると白いローブを着て魔法陣の真ん中に立っていた。周囲は異世界人を転生させる秘術をおこなった術者が数名さくらを見ている。
お互いに気まずい空気が漂う中、さくらは恐る恐る挨拶をしてみた。
「こんにちは?」
異世界人を転生させることに成功した周囲の術者は、ほっとしているようだった。
さくらは、自分の体を動かして確かめてた。今までの世界と変わりない体のようだ。ただ、手に何か硬い物体を持っているが、裸にポンチョのような腕を出すことが出来ない白い布をかぶっているため、それが何なのか確認できずにいた。
異世界転生者の案内役であろう一人の神官が、さくらへ近寄り、何故召還したかを伝えた。
さくらを召還したのは、地球とは別の世界らしいゼフ王国という場所。
一年後に人間が治めるゼフ王国と魔族が治めるバジ王国と大戦が行われることが決まり、切り札として異世界人のさくらを呼び寄せたらしい。
異世界人を召還できる条件は、自国に異世界人が居ないこと、前回の異世界人召還から2年経過していること。
さくらを召還した今、もうゼフ王国は大戦前に他の異世界人を召還することは出来ないそうだ。呼び寄せた異世界人には、【剣豪】や【賢者】など一目でわかるような強力なスキルが付与されてくると教えてもらった。
もう一人の案内役の神官が言うには、この後、ゼフ国王陛下の準備が出来たら、国王陛下が見守る前でスキル鑑定が行われるらしい。それまで待機していて欲しいとのことだった。
ゲーム好きのさくらは、自分に付与されたスキルが何なのかワクワクしてきた。
(魔法とか使えちゃうの? ドラゴンとかに乗って無双するの?)