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大戦③

今回の主要人物


【宗教都市ゼロ】

さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。宗教都市ゼロ代表兼さくら神社神主。もふもふ同盟。

ナビ(AI)3D化に成功した神社システムのヘルプ担当。

デリエ(人間)ジョザ村の元村長。

カメア(人間)回復士。


【バジ王国】

ザマ(人間)バジ王国軍大将。

「ちーさん、デリエさん、カメアさん、大戦始まったみたいですよ。もうそろそろ落ちてくる頃です」

【緑】アプリを使ったシゲさんの戦況ログと【マップ】アプリによる赤い点の移動を確認しているナビが知らせてくれた。


「ナビはアタイの首の後ろに、カメアは私の背後に、デリエは私の前に立つのだ」ちーは、配置を指示した。

(ご主人様に任された大事な場所、役は完璧にこなして褒めてもらうのだ)


「デリエとカメアは、弱っちいから、アタイの側に居るのだ。どんな攻撃が来ても翼で防いであげるのだ」

「ちーさん、頼りにしてるね」とカメアはちーの尾を撫でて礼を言った。

「ピーナッツ火山の主様に守ってもらえるなんて、光栄です」元ジョザ村の村長らしくデリエは、ちーを崇めていた。


 すると、ヌルヌルヌル滑り台の奥の方から、恐怖を感じている者達の叫び声が聞こえたきた。

「そろそろくるのだ!」


 ちーは、こう考えていた。一人づつ落ちてきて、その名前をナビからこっそり教えてもらい、決め台詞を繰り返すものだと。しかし目の前には、流しそうめんの様に、次から次へと落ちてくる。


 ちーの頭の後ろから、「ガーノ、アポロお前達って一括りにしましょう」とナビが提案してくれた。しかし、痛さが優っているのか、落ちてきたもの達は、ちー達を見ていないで、うめき声を上げながら動こうとしない。

(アタイの見せ場が台無しになってしまうのだ……)


 焦ったちーは、とりあえず注目されるため、豪快に吠えた。味方には耳を押さえてもらうことは事前に言った。ユニコーン隊は……防げなかった……


 突然のドラゴンの雄叫びに、負傷して動けなかったバジ王国軍の兵も一斉にちーに視線を向け、恐怖におののいている。

(今が、アタイの見せ場なのだ!)

ちーは、この日のために、子供達を集めて、セリフの練習を何回もしてきていた。出来るだけ相手を怖がらせる言い回しを子供達とアレンジしていた。


「我はピーナッツ火山を守る者。そして宗教都市ゼロの守護を担う者。ガーノ、アポロ、他お前達の魂はしかと覚えた。」これだけで、宗教都市ゼロに戦を仕掛けたことを各兵は後悔した。


「我が主の首を刎ねた代償は、その体で償ってもらおうではないか!」と言い、もう一度豪快に吠えた。

気分が乗ってきたちーは、さらにアレンジを加えていた。


「我が守護する宗教都市ゼロに隕石を落とし、愚王にそそのかされて歓喜の声を上げていたのも知らぬと思っているのか!」これは、ちーの想像だが、実際にそうだった。


「我の怒りに剣を向ける勇気が残っているなら相手になろうぞ!ここで命を落とすことになるがな。我が主は大戦の前線に一人で歩んで行った。それが我が慕う主の姿だ!お前達の愚王は何処で何をしておる?安全な王都でお前達を捨て駒にして、今頃は美味い物でも食うておるわい!」バジ王国軍の士気は、ほぼ無くなっていた。


「どちらの王の姿が理想か考えてみるのだ。ジョザ村はバジ王国の愚王に何度助けを求めたが見捨てられ、宗教都市ゼロは、隕石が降り注いだ最悪な日に助けを求めたが、快く受け入れてくれた。肌の色など関係なく平和な生活を過ごさせてもらっている。そろそろ目を覚ますときなのではないのか?」ジョザ村の元村長のデリエが語りかけた。


「バジ王国には、もうオリハルコンの採掘は尽きている。ピーナッツ火山の主様が噴火を抑え噴煙が止んだのだから、真面目に農業をすればいいだけではないのか?ゼフ王国はモンスターに田畑を荒らされ、お前達が夢見る豊富な食料は無いぞ。なんのために大戦をしているのだ?」追い討ちをかけたデリエの言葉に、バジ王国軍の兵は完全に心が折れた。


「最後に問う。愚王の剣となり闘うという者は、我が全力で相手をしてやろう。愚王に剣を向ける勇気が有るものは、脇の洞窟から去れ!」


 一人、また一人と洞窟に向かっていく。カメアが【マップ】アプリで赤い点から白い点に変わった者に、ちーの背後からヒールをかける。あたかもピーナッツ火山の主からの加護に見せかける様に……


「なんて事だ! 傷が癒えていく!」

「敵として攻め込んだのに、許していただけるのか!」


 その光景を見た者は、悩みを捨て、洞窟に向かって行った。




 次から次へとバジ王国軍の兵は、滑り落ちて来るが、ちーの脅しとデリエの揺さぶりに心を折られ、誰一人として、ちーに向かって来る者はいなかった。その後の彼らがどの様な行動を取るのかはどうでも良かった。クーデターを起こそうが、何もせず怯えて暮らそうが、知ったことでは無い。この街に平和が戻ればいいだけなのだから。




 その頃、ザマは焦っていた。

 兵が進軍して行っているのは見えているが、先に行った者からの伝令が一切無いからである。

(一体どうなっているというのだ……進軍をやめて引き返すべきなのか、全軍進むべきなのか……)

 ザマは野心家で有る。王女に媚を売り贔屓にされており、将来を誓い合っていた。あとは、更なる実績……大戦での功績……が有れば、自分が次期バジ王国の国王になれると狙っていた。


 ここで引く事は出来ないと思いただし、「宗教都市ゼロのトップはもう居ない。あとは蹴散らすだけだ!全軍進行を早めろ!」と檄を飛ばす。それが谷底に兵を落とすことに拍車をかけることになっているとも知らずに…





 全軍が進み、大将のザマと護衛の数名だけになった。それでも、伝令は返って来ない。

「我々も続くぞ!」ザマは鳥居をくぐって、細い道と白い煙に覆われた谷を目にした。細い道の先は誰も居ない。護衛を先に行かせ、ザマは最後尾になる。


 ザマの目の前の兵が豪快に足元を滑らせて谷底に消えた。滑らせたというより、足を払われた様に見えた。落ちたものの衝撃音、うめき声が段々と遠くになっていく。


 さらに、目の前の兵は突然体をよろめかせて、谷底に落ちて行った。なんて事はないこの細い道に何が起きているのかわからない。気がつくとザマ一人になっていた。もう自分一人だけでも助かりたいと思い、来た細い道を引き返す。そこに足元をすくう様に空気で押される感じがして谷底に落ちて行った。


 気がつくと、目の前にはドラゴンと見覚えのあるジョザ村の村長のデリエが居た。

ドラゴンの脅しとデリエの揺さぶりを受け、ザマは衝撃的な事実を知った。

(オリハルコンが無いだって?ゼフ王国に対する唯一のカードを失った国の王など何の魅力が有るか……地味な国づくりなど興味無い。もうあのワガママな王女に媚びを売る必要など無い……)


 【マップ】アプリのザマは赤い点ではなく、白い点に変わって居た。


 バジ王国軍の兵は全て反乱軍としてバジ王国に戻って行った。




シゲが流した戦況ログは、

『さくら(影武者の人形)がバジ王国大将ザマに切られて大戦開幕』

『エスター、「宗教都市ゼロ 大戦作戦本部」に帰還』

『バジ王国軍、鳥居をくぐり街道を進軍中』

『細い道に気が付かずバジ王国軍先頭多数谷底へ』

『最初から、バジ王国軍の兵が想定以上の人数滑り落ちて来てしまったため、ちーさん、デリエ、臨機応変に対応し、心を折りバジ王国に帰還させる事に成功』

『バジ王国軍大将ザマも心を折りバジ王国に帰還』

『バジ王国軍からの防衛成功』

『ゼフ王国に動き、未だなし。本日の警戒解除』

と流れた。


 初日は、バジ王国軍の進軍を跳ね除け、宗教都市ゼロの損害は、リアルドール一体だけで済んだ。

ゼフ王国には、まだ動きはない。

初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。

タイムリミットある中、異世界でのさくらの活躍を応援してください!


ついに大戦が始まりました!


さくらの活躍を応援していただける方は、ぜひブックマーク、評価(下部の☆☆☆☆☆)にて、後押しお願いします。

その応援がはげみになります。


次話は初日の反省会の話です。


※誤字報告ありがとうございます。この場を使ってお礼にかえさせていただきます。

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