王国の基盤が揺らぐゼフ王国とバジ王国
今回の主要人物
【宗教都市ゼロ】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。宗教都市ゼロ代表兼さくら神社神主。もふもふ同盟。
タマ(九尾の狐)さくら神社に祀られている、アーティファクト「お稲荷様」の化身。武術に長け、料理上手。
ワシ(座敷童)おばあちゃん。
シゲ(ぬらりひょん)さくら神社の参謀。
メルツ(人間)孤児院の生き残り。エスターの親友。もふもふ同盟。
ちー(マインドラゴン)元ピーナッツ火山の主。さくらの眷属。普段は人代、犬化をしている。リス獣人達に崇められている存在。馬っころと強い絆で結ばれている。
【ゼフ王国】
ゼフ(人間)国王
オーサム(人間)大将
【バジ王国】
バジ(人間)国王。
ゼフ王は、王都ゼフに襲撃してくるモンスターが増えている事、防衛する兵の足となる馬が一夜にして全て居なくなった事、都市を囲む外壁が日々崩されてきている事……不安ばかりで夜も眠れないが、ぷっくり膨らんでるお腹は変わりがない。いい物は食べてるようだ。
反対に、対面に居るオーサム大将は、モンスター対策がうまく出来ずに、ゼフ王から叱責を受けており、表情は固い。
「オーサム、いつになったらモンスターの鳴き声を聞かないで眠れる日が来るのだ!」唾を飛ばしながらゼフ王はオーサム大将を責めていた。
「殿下、モンスターについては、他の者に任せています。まず先に宗教都市ゼロの鎮圧を……」裏の顔のカークとしては、オスロとの連絡を早急に取りたかった。
「うるさい!口答えするな!モンスター対策の責任者はオーサム、お前だ!【軍師のペンダント】を持っていてもいい策が浮かばないのか!無能め!」さらにゼフ王は顔を赤らめて、強い感情のままオーサムをモンスター対策の責任者に任命した。
結果だけ求めて手段を指示しない上司を持つと、下は苦労するものである。
覚悟を決めたオーサムは、進言する。
「殿下、王都ゼフを捨てましょう。防衛都市カサスに移動しましょう。守るに特化した都市です。この策が【軍師のペンダント】が導き出したものです」
「大戦前に王都を捨てるだと?血迷いおったか!命令だ!王都ゼフをモンスターの脅威から守ってみせよ!」王宮を離れる生活などゼフ王には考える気が無いようだ。ゼフ王国の存続より、快適な生活の方が大事なようである。
「かしこまりました……」これ以上は話が通じないとオーサム大将は、あきらめの表情を浮かべている。
どうモンスターの対応策を練るべきか考えながら、王都ゼフの外壁の上に登りピーナッツ火山を見ながらオーサム大将は途方に暮れていた。城壁の外は、所々にモンスターが見えている……
(武器も揃っていない、軍馬も居ない、兵は疲労して士気が落ちている……何が出来ると言うのだ)
そこに幻でも見ているのか、数本の白い帯がモンスターを轢き殺して行く。
ユニコーンの様な角を生やした白い鎧をまとった馬が数頭、駆け抜けていっただけで、モンスターは蹂躙されたいく。ワイバーンが急降下して攻撃を仕掛けてきても、馬もタイミング良く跳ね、角でワイバーンを一撃で仕留める。
(これは一体……天の助けなのか?)
オーサム大将は何もすることなく、王都ゼフの周囲のモンスターを数日で減らすことに成功した。
「馬っころ、怪我して無いか?いっぱいモンスター倒してきたか?」トレーニングから夕方戻ってくるユニコーン隊の馬に優しく声をかけるちーちゃん。
「ヒヒィィィン!」馬も元気に無事を答える。
「アタイも誇らしいのだ!厩舎で美味しい餌を食べて、ゆっくり休むんだぞ!」
「ヒヒィィィン!」
オーサム大将は救われたと思っている様だが、敵対視している宗教都市ゼロの戦力が上がっていっているのである。
同じ頃、バジ王国は食料が減り、一般の国民は、朝一回の配給に戻っていた。
オスロ商会から没収した食料で、軍の食料は、大戦を乗り越えるまで確保していた。
(大戦が決まった以降、ノストラからの連絡が何故途絶えたのだ……食料を供給すると言うから大戦を受けたのに……)
バジ王国には、オリハルコン製の武器がある。元々身体能力の高い種族なので、大戦自体は怖くなかった。開けた大地、豊富な食料、それを夢見ている。しかし、現実は田畑はモンスターに荒らされ、治安の悪い国に落ちた魅力など無い場所である。まだバジ王国の火山灰の土地の方がいいのかもしれない。
バジ王が恐れているのは、国民が一度上げた士気がゼフ王国に向かずに、食料を隠しもっているバジ王国に向いてしまうことである。それだけはなんとか避けたかった。
場所は変わり、さくら神社の居間。
「今日は、季節的には少し早いけど、おでんぞえ!」おでん鍋を持ったタマさんが夕食のメニューを言う。
「やったぁ!私の好きな、ロールキャベツ入ってる?」さくらは、好きなネタが入ってるか気になった。
「もちろん入ってるぞえ!ゆで卵とさつま揚げも入ってるぞえ!」さくらの好きな物は抑えているタマさん。
「おすすめは、大根とちくわとハンペンだね!」さくらはおすすめに自分の好物は言わなかった。
ケルン君、フィルちゃん、ちーちゃんは、色々タネに目を輝かせている。綺麗にネタの並んでいるおでんは、見ているだけでヨダレが出てきそうになる。
シゲさんは一升瓶を持ってきた。タマさんとちびちびやるのだろう。
おばあちゃんは、大根はもちろん、里芋やにんじんなどの根菜系と銀杏が好みだ。
「ご主人様!ロールキャベツってどれなのだ?」先程、さくらが好きな物として聞き逃していなかったちーちゃんが聞く。
さくらは、「うーん……ロールキャベツは……」としどろもどろになっていると、タマさんが、「これだえ!」と言ってちーちゃんの取り皿によそった。
「あっ!タマさん!ずるーい!私もロールキャベツ!」さくらが慌ててロールキャベツを要求する。
ケルン君やフィルちゃんだけでなく、エスターさんやメルツさんまで、自分の取り皿を持ってロールキャベツを盛ってもらっていた。
おでんでは邪道の部類に入るロールキャベツが、この日は一番人気だった。
タマさんの好きなネタが餅巾着なのは、言うまでも無いだろう。
「ご主人様!馬っころのユニコーン隊、いっぱいモンスター倒したって言ってたのだ!何かご褒美あげたいのだ!」ちーちゃんは、ゆで卵と格闘しながら、さくらに言う。
「普通の住民には罪無いからモンスター退治してくれてるなら、この島の守り神の様だもんね!何が良いのかな……」
「こっちの世界には無い馬鉄なんて良いんじゃねぇかぁ?それこそオリハルコンで作りゃ、足も早くなるし、馬蹴りだけでもかなりの威力UPになるだろ」日本酒をちびちびやりながら、大根を少しずつ摘んでいるシゲさんが妙案を言ってくれた!
「それだ!見本を【スグクル】で取り寄せて、バージルさんに依頼してみる!」早速さくらはスマホを操作し始めた。
卵の黄身がおでんのスープに溶かしてしまい残念そうにしていたちーちゃんだが、馬っころのご褒美を決めてもらえた様なので、「ご主人様、ありがとうなのだ!」と嬉しそうに答えた。
宗教都市ゼロには、皆んなを思いやる調和が有った。
【さくらが大戦に巻き込まれるまで、まで残り80日】
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次話はゼフ王国からの亡命者のお話です。