タケルVSマンティコア
今回の主要人物
【宗教都市ゼロ】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。宗教都市ゼロ代表兼さくら神社神主。もふもふ同盟。
エスター(人間)孤児院出身の宗教都市ゼロ大将。もふもふ同盟。
タマ(九尾の狐)さくら神社に祀られている、アーティファクト「お稲荷様」の化身。武術に長け、料理上手。
くー(コロボックル)兄妹の兄。森の中を瞬時に移動が出来る。
さー(コロボックル)兄妹の妹。森の中を瞬時に移動が出来る。エスターに懐いて居る。
メルツ(人間)孤児院の生き残り。エスターの親友。もふもふ同盟。
バージル(人間)ジョザ村出身の鍛治職人。シナとクボの父。
メルツがオリハルコン包丁を使って料理をしながら、その凄さをエスターに話していた。
「力入れなくても、なんでもスパスパ切れちゃうのに、私たちの髪の毛すら切れない安全な包丁なんだよ!」
「そんな包丁があるものか。メルツ少し切らせて」
「いいよー!試してみて!」
「本当だ…ストンとなんでも切れるのに、指先を刃に当てても切れないどころか、押し当てられる痛さも感じない…」
「でしょ!くーさんがぽこぽこ出していた、オリハルコンだっけ?あれを材料にして、バージルさんが作ってくれたの。この街の各家庭の台所にはこの包丁と専用のまな板が配られたんだよ!」
「オリハルコンを包丁やまな板に…神話級の装備を作れる材料を…」
エスターは、バージルさんを訪ねて鍛治工房に居た。さーちゃん殿も一緒についてきている。
タマさんと練習している時の木製薙刀と、うさぎのぬいぐるみのタケルを手にし、
「私だとこの長さの薙刀なのだが、このうさきのぬいぐるみが同じように持てる長さの薙刀をオリハルコン包丁のように作っていただけないだろうか」
「ぬいぐるみの玩具にオリハルコンって、どう考えてもおかしいだろ?」
職人気質のバージルが言うのもうなずける。
「バージルさんは、【神社ディフェンス】はまだ未経験でしたな。私はこのぬいぐるみに憑依して、この神社に襲撃してくるモンスターを退治している。オリハルコン包丁を見て、是非私のモンスター退治の相棒を作っていただきたい」
最近は、バージルさんと一緒に鍛治工房に居るくーちゃんに、さーちゃんが、
「くー!私からもお願い!エスターの武器作ってあげて!」
と助け舟を出す。
くーちゃんは、いい顔をしないバージルさんに
「バージル!エスターの武器作ってあげよ!この街守るためだよ!」
「師匠がそう言うなら、請け負うしかないか…」
いつの間にかバージルは、くーちゃんの弟子になっていたようだ。
元の世界でも、有名な鍛治職人はくーちゃんの教えを受けたものが多かった事は、一部の鍛治職人仲間しか知らない話であり、くーちゃんが居なくなった元の世界では、小人の鍛治名人の話として、都市伝説のようになっていた。
オリハルコンは軽い素材のため、刃の部分だけでなく、長い柄もオリハルコンにし、エスターの希望で、少ない力でも切りつけやすい巴型の薙刀を作り上げた。もちろん最後には、くーちゃんの一打ちが入る。そうすることによって、薙刀全体が薄く白く光るようになった。
いよいよ、タケルとして完成したオリハルコン薙刀の切れ味を試す時が来た。【神社ディフェンス】である。
宗教国家ゼロとして独立してから、はじめての【神社ディフェンス】。そして、タス村出身者、ジョザ村出身者の小学生以上は参加可能とされた。自分の身に危険は無いので、モンスターの動きを子供の頃から近くで見るのもいいことだと、私も思う。強制参加にしなかったのは、さくら殿の優しさなのだろう。
エスターもタケルに憑依し、石階段の踊り場で待機した。ナビさんの開始の合図が聞こえた。
さくら殿の考えで、今回から【狛犬(空気砲)】を多く配置するとのことだった。殺傷能力はほとんどなく、空気の固まりがぶつかって、足元をすくったり、転ばしたりする目的らしい。
階段の下の方では、モンスターの断末魔の叫びが聞こえている、その断末魔の叫びも段々と近くになってきた。そろそろエスターの憑依するタケルの所までモンスターが迫ってくるかと言う時…
「緊急事態です!マンティコアが入り込みました。【神社ディフェンス】を閉じます!」
とナビさんの緊張した声が響く。【神社ディフェンス】を閉じても、追加のモンスターが入り込まないだけで、参道に入り込んだモンスターが消える事は無い。さくら神社の結界内なので、少しづつダメージで削られては行くだろうが…
タケルに憑依したエスターは、持ち場を離れ、石階段を降りて行く。狛犬の攻撃をすり抜けてきたゴブリンや、瀕死のダメージを受けつつも石階段を登ってくるサイクロプスやミノタウロスに向かって薙刀を振り下ろす。何かを切る感覚などなく、スーッとモンスターの体を一刀両断してしまう。
ついにマンティコアと対峙した。血のように赤い顔、ライオンの胴体にサソリの猛毒を持つ尾…
矢がハリネズミのように刺さっており、銛も刺さっているが、何食わぬ顔で威嚇してくる。
ぬいぐるみのタケルにはサソリの毒は効かないが、突破された時、最後の砦として構えているタマさん殿には厄介になるかもしれない。
エスターは、マンディコアの尾を切断するように薙刀で斬りつけた。鈍い音と共に、弾かれ…る事なく、サソリの尾がマンティコアから切り落とされた。はじめてマンティコアが死を感じた表情をした。矢や銛ではでは致命傷にはならなかったが、オリハルコン薙刀の前では、なすすべがなく、首も落とされた。
「エスターさん、かっこよかったよ!薙刀を振るうと白い光が残像のようになびいて、神秘的な雰囲気が漂っていたよ!はじめて見たマンティコアもさっくり退治しちゃうなんて…すごーい!」
「さくら殿、これは…私の力では無い…このオリハルコン薙刀が凄すぎるのだ。神話級の武器としか言いようが無い…。今までの武器だったら、今頃どうなっていたか…。素材を生み出したちーちゃん殿、作製してくれたバージルさん、くーちゃん殿、何より稽古をつけてくださったタマさん殿のおかげ…」
さくら殿が興奮して褒めていただいた。
エスターは、本当に自分がマンティコアを退治出来たことに信じられないで居た。
「これも、普段の稽古の賜物ぞえ!鍛えた技が無ければ、心が対峙する相手に向いていなければ、どんな武器を持っていても勝てないぞえ!」
「タマさん殿、ありがとうございます」
エスターは何かを超えた感覚があった。
【さくらが大戦に巻き込まれるまで、まで残り140日】
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次話はもふもふ同盟のお話です。