オリハルコンの包丁
今回の主要人物
【宗教都市ゼロ】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。宗教都市ゼロ代表兼さくら神社神主。もふもふ同盟。
タマ(九尾の狐)さくら神社に祀られている、アーティファクト「お稲荷様」の化身。武術に長け、料理上手。
くー(コロボックル)兄妹の兄。森の中を瞬時に移動が出来る
ちー(マインドラゴン)元ピーナッツ火山の主。さくらの眷属。普段は人代、犬化をしている。リス獣人達に崇められている存在。馬っころと強い絆で結ばれている。
イスト(リス獣人)代表。
バージル(人間)ジョザ村出身の鍛治職人。シナとクボの父。
シナ(人間)女の子。クボの姉。
クボ(人間)男の子。シナの弟。
ちーちゃんと二頭の馬が再会に喜んでいると、リス獣人達の朝の参拝時間になった。
境内に溢れんばかりの馬に驚いている。
(そりゃそうだよね)
さくらも外に出て、ここに来るまでの間にモンスターにやられたのであろう、傷のある馬を手水舎から流れる水路まで連れていき、水を飲ませた。ゆっくりとではあるが傷が塞がっていく。それを見た負傷している馬は、水路の水を飲み始めた。
馬の手当てをしていると、リス獣人代表のイストさんが声をかけてきた。
「さくらさん、おはようございます。すごい数の軍馬ですね。どうしたのですか?」
「先日、王都ゼフに戻した二頭の馬が、ここのことを自慢したようで、他の馬が憧れてしまい…ちーちゃんに会いたくて戻ってきた二頭についてきちゃったみたいなの…ちーちゃんだけでこれだけの数のお世話は難しいだろうから、どうしたものかと…」
「それなら、リス獣人達で面倒を見てもいいですよ!厩舎と餌と牧草、寝床のワラさえあれば大丈夫です!お馬さんはお利口さんなので、躾けさえきちんとすれば、手もかからないですし、走り回れる環境(街道)もあるので、理想の飼育場所ですよ。将来農業をやるなら、馬は貴重なパートナーになります」
「イストさん、お言葉に甘えても大丈夫?」
「もちろんです!」
さくらは、リス獣人エリアをさらに倍に広げて、牧草エリアも作り、大型の厩舎を設置した。厩舎の中に【スグクル宅配ボックス】も設置した。
宗教国家ゼロの独立をゼフ王国から認めてもらったので、もう何も隠す必要がなくなった。リス獣人達は街道まで出歩くことを許可し、ジョザ村の住居もリス獣人エリアから、タス村の住居エリアに移した。ここから恋が生まれるかもしれない。ハーフの命が生まれてくるのが楽しみだ。
リス獣人達に混ざって、バージル親子も朝の参拝に来ていた。
「さくら領主様おはようございます。すごい数の軍馬ですね!」
「バージルさん、おはようございます!えぇ…ゼフ王国にお返しした二頭の馬が、ちーちゃんに会いたくて戻ってきちゃって…友達まで連れてきちゃったみたいなんです。イストさん達が面倒を見てくれると言ってくれて安心したところでした。シナちゃんにクボ君、おはよう!この地に少しは慣れた?」
『さくら領主様、おはようございます!』
元気いっぱいに朝の挨拶をして、質問には大きく頭を縦に振って答えてくれた。
「さくら領主様、笑わないで聞いて下さい。あそこに見える石を積み上げた山…もしかしてオリハルコンじゃないですよね?」
「うん、そうだよ!ちーちゃんがそこの岩に座っていると、岩から盛り上がって出てきて邪魔なんだよ…」
「よろしければ、オリハルコンの加工させてもらえませんか?」
「いいけど、物騒な物はダメだよ…包丁作って見て!それ見て何を作るか決めるね!」
「オリハルコンで包丁…わかりました…あっ鍛治の施設が無い…」
さくらは居住スペースから少し離れた場所に【神社アプリ】内の【施設設置、撤去】を使って鍛治工房を建てた。防音対策済みである。
必要な材料をお取り寄せして、バージルさんに、包丁を一本作ってもらうことにした。
数日かけて完成した包丁を、さくらは手に取り、刃先の光の反射を見ているだけで、魂を引き寄せるような不思議な感覚があり、怪しく怖いと思った。感覚がした。これが妖刀の感覚なのだろうか…
さくらが手にしている包丁を、一緒に見ていたくーちゃんは…
「さくら、包丁貸して!」
と言ってさくらから包丁を受け取り、一瞬炉に入れ、どこから持ってきたのか、くーちゃん特性ハンマーで数回叩いて水に浸けて冷やした。すると、包丁は真っ白な色に変化して、少し優しい光を放つようになった。先程までの怪しく怖い感覚は感じなくなった。
「単なるオリハルコンの包丁が…魔力を帯びてる…」
とバージルさんは、くーちゃんの最後のひと叩きの効果に驚いていた。
包丁の刃を上にして、紙を落とすと、落ちた紙の勢いと重さだけで抵抗なく切れてしまった。
実際にタマさんに使ってもらったら、木のまな板まで切れてしまった。まな板もオリハルコン製にしないといけないようだ。軽い素材だからオリハルコン製まな板でもいいのかな?
タマさんは、続いて味噌汁に入れる具として豆腐を手に持ち、オリハルコンの包丁で切った。
さくらは、タマさんの手が切れちゃう!と思って止めようとしたが…
タマさんの手は無事だった。なぜ?
(そういえば…くーちゃんのスキルに【鍛冶の極意】ってあったんだったね。でもなんで手が切れないの?)
「タマさん、手大丈夫?」
「大丈夫ぞえ!まな板は切れてもうたが、手は平気ぞえ!少し力を入れて見たが、手は傷付かなかったぞえ!」
さくらも試しに自分の指先を恐る恐る、包丁の刃に当ててみるが、切れることはなかった。指だけじゃなく、髪の毛すら切れない。ご利益のある水で最後にくーちゃんが魔法を通したからなのか、氏子の体を絶対に傷つけない、なんでもスパスパ切れる包丁が完成した。これなら指を包丁で切る心配は無い。
氏子にはとっても便利な包丁なので、バージルさんに、包丁とまな板を各家庭分と公民館のお料理教室分の作成を依頼した。バージルさんは、鍛治仕事をしている時が一番いきいきしているように見えた。もちろん、最後はくーちゃんのひと叩きをしてもらう。
(何か引っかかるな…あっ!これで作った武器なら、氏子は傷つかないんじゃ…)
さくらは、何かが閃きそうで、閃めかず、モヤモヤしていた。
その頃、機動力が無くなった王都ゼフの軍はモンスターの襲撃に翻弄されていた。
【さくらが大戦に巻き込まれるまで、まで残り150日】
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次話は神社ディフェンスのお話です。